きのう投開票が行われた都議選は、都民ファーストの会が選挙前の46議席から15議席減らし、最も多い33議席を獲得した自民党が僅差で第1党に返り咲いた。一方、選挙協力を結ぶ公明党の議席と合わせても過半数には届かなかった。
・【映像】政治部記者に聞く 選挙戦最終日に応援 小池知事の"戦略"
テレビ朝日政治部の小池直子記者は、今回の結果について、自民党にとっては4年前の23議席から10議席増やしたものの、事前の調査では“倍増は堅い”とみられていただけに、結果としては“惨敗”と言える。また、小池都知事が終盤で見せた入院という“捨て身の行動”が大きく影響しているとも受け止められている。ただ都民ファも議席を大きく減らしているので、結果的に“勝利宣言”ができる政党はひとつもなく、“勝者なしの選挙”だったと言える。ただ、自民党は大いに反省をしている」と話す。
「事前の調査で躍進が伝えられていただけに、当初から自民党内に“楽勝ムード”があったことは否めず、緩んだ選挙戦になったことも事実だ。ある党幹部は“やはり新型コロナウイルスの感染拡大に加え、菅総理肝いりのワクチンの供給に陰りが見えたことも大きな影響を及ぼした”と指摘していて、政府の対応への国民の厳しい目が自民の候補者たちに向かったと考えられる。
一方、小池都知事は自民党の二階幹事長と自民党本部で度々会談をしてきた。内容は新型コロナ対策を巡る金銭的支援や後押しを自民党にお願いしたいということが中心だったが、当然、都議会議員選挙に話題も及んだようだ。
当時は都民ファの劣勢と自民の躍進、さらに自公で過半数に達するとの情勢も伝えられており、これまでも自民、公明、都民ファの3党に協力をしてもらって都政運営をしてきた都知事としては自公を的に回すと政策が実現できない。そこで選挙後も関係をつなぎとめるようと方針を切り替え、二階幹事長に“自民党の候補者と写真を撮りますよ”という約束をしたという。
これに都民ファの候補者たちは大反対。そこで“写真は撮っても握手はしない”とか、“グータッチまでだ”などと様々な条件を出した。それでも公明から“自分たちは都民ファとの関係を断っているのに、自民が都知事と写真を撮るのはおかしいじゃないか”との反対に遭い、結局この話は頓挫した」。
投開票直前の2日、登庁しての会見を開き「倒れても本望だ」と述べた小池都知事。実はこの時も自公への配慮を忘れていなかったという。
「都民ファの公約の中には“オリンピック無観客開催”が盛り込まれていたが、小池都知事は自民党幹部に対し“自分の考えとは違う”ということも事前に説明していたし、会見でも“改革を応援したい”、それはすなわち都民ファを意識した発言ではあるものの、明確には述べなかったところからも、自公に対する配慮が大きく見え隠れしていた。さらに投開票日の前日の土曜日、都民ファの候補者の応援には入ったものの、“挨拶回り”、“サポートしていますよ”という姿勢を見せただけで、マイクを持って話すことはしなかった。もちろん体調面が理由だったという見方もあるが、これが有権者に効果を及ぼしたのかどうかは疑問だ。
写真の件について自民党内には“都知事が裏切った”と批判する人もいるが、実際には都知事からの打診を党側が断ったというのが正確だし、むしろ党幹部からは“パンフレットでもビラでも、小池百合子推薦と書いておけばよかったじゃなないか、そうすれば都民ファと区別がつかなくなって、ここまでの大敗は無かったのに”と嘆く声も出ているくらいだ。中には“いち地方選挙であって、国政に直ちに直結するものではない”と釈明している党幹部もいるが、政府への批判票が都民ファへの受け皿になったと言わざるを得ず、大きな不安を残す結果となった。
党内からは“菅総理のままで衆院選が戦えるのか”という厳しい危機感も聞こえてくるが、コロナ禍の中、就任からわずか1年で総裁選を行い、総理を変えている場合かという慎重な意見、“だったらせめて党幹部を刷新するべきだ”との意見も出始めていて、今後は批判の矛先が“二階幹事長おろし”へと繋がる可能性も出てきている」。(ABEMA NEWS)