鳴き声が聞こえてくると夏の訪れを感じる、日本でも定番の虫「セミ」。しかしアメリカでは、あるセミが日常生活に影響を与えるほど大発生したという。
現地の状況について、ANNワシントン支局の小島佑樹記者が伝える。
Q.どんなセミが大量発生した?
首都ワシントン含め、アメリカの東海岸を中心に大発生したのは、“17年ゼミ”と呼ばれるもの。赤い目が特徴で、日本でよく見かけるセミよりも小ぶり。
なぜ17年ゼミと言われているかというと、17年間土の中で木の根から樹液を吸って成長して、一気に羽化するため。なので、今年大発生したものは2004年生まれになる。子孫を残すためと言われているが、謎の多いセミ。数は数十億から数兆匹とも言われている。
Q.日常生活にも影響?
それだけの数になると鳴き声がうるさい。実際に街を歩いていても、木に複数止まっているのが当たり前で、“鳴き声の合唱”のような状態。ワシントン市内のミシュランで星を獲得しているレストランが、セミの鳴き声がうるさく、お客さんが食事を純粋に楽しめないという理由で一時的に営業をやめたほど。また、車を運転中に窓からセミが車内に入ってきてパニックになり、結果的に事故に繋がってしまったこともあった。
ただ、その数は1週間ほど前を境に一気に減ってきて、今ではほとんど見かけなくなった。
Q.市民の反応は?
さすがアメリカというか、こんな状況ですらプラスに変えてやろう、楽しんでやろうという人たちがいる。
例えば、ワシントン近郊に住んでいる写真家が撮った写真で、ワシントン・ポストに掲載されたのは、本物のセミを人に見立てた写真を撮ってみたというシリーズ。ワクチンの接種会場でソーシャルディスタンスをとって並んでいるものなど、時代も捉えている。
また、ワシントン近郊に住む女性が制作したのが、セミをデザインしたお皿。5年ほど前に定年退職して、趣味でお茶碗やお皿を作っている方だが、今年のこの大発生を受けてセミを取り入れ、1枚約2000円で販売したところ、準備した55枚が完売した。追加の要望があって、さらに作っているそうだ。
実はこの女性、17年前のセミの大量発生を覚えていたそう。今年大量発生すると聞いた時に、「この17年でまだ幼かった息子は成人を迎え、自分も会社を退職するなど人生が大きく変化した」と実感したそうで、それを形に残さないともったいないということから、自分の趣味と融合させたということだ。
さらに、ワシントン支局が入るビルで買ってみたのが、セミの形をしたクッキー。中にはセミが入っているわけではないが、赤い目など特徴はよく捉えている。中身は普通の、アメリカっぽい甘いクッキー。シェフに話を聞いたら、「17年の時を経て誕生したセミのお祝いだ」と話していた。1枚360円ほどで、大大的に宣伝したわけではないが200枚以上売れたという。
こうした一見ネガティブなものをチャンスと捉え、楽しもうという姿勢は勉強になる。また17年後にはどんな商品が生まれているのかという視点で見ると、ネガティブな視点になりすぎずいいかもしれない。
(ABEMA NEWSより)