7月から放送中のTVアニメ「かげきしょうじょ!!」。未婚女性のみで構成され華やかな舞台で世代を超えた人々を魅了する「紅華歌劇団」の人材を育成する「紅華歌劇音楽学校」に入学した、第100期生の歌劇少女たちが織りなすスポ根ストーリーだ。
天真爛漫な性格で178cmの高身長を誇る渡辺さらさ役の千本木彩花、何事にも無関心な元国民的アイドル・奈良田 愛役の花守ゆみり、頼れる委員長でありつつも紅華オタクな一面を持つ杉本紗和役の上坂すみれにインタビューを実施。
舞台ものである「かげきしょうじょ!!」の魅力や、役者として切磋琢磨していくそれぞれのキャラクターを演じるうえで意識したポイントなどを伺った。
「10のことを考えていても、言葉として1のことしか出せない部分がある」
――はじめて原作コミックスを読まれたときの印象からお聞かせください。
千本木:女の子たちがいっぱい出てくる作品なので、いわゆる少女マンガっぽいお話なのかなと思っていたのですが、想像していたよりもすごくアツい物語だと思いました。夢に向かって頑張りながらも葛藤している姿が、登場人物みんな素敵に描かれているので「この続きはどうなるの!?」と、あっという間に刊行されていた巻を読み切ってしまって。
花守:私もオーディションのときに資料としてマンガの一部を目にしたのですが、その日のうちに電子書籍で全部買ってお風呂で読んでしまいました。絵のタッチが繊細なのに、みんなの気持ちの揺らぎや情熱の描かれ方がスポーツマンガかと思えるくらいの熱量があって、本当にスポ根なんだなと感じましたね。
登場人物それぞれにさまざまな過去があって、そこからもう一度夢を目指す姿が本当に美しくて、そこに深い魅力を感じました。
上坂:たしかに絵柄が繊細なタッチなので、読み始める前と後でガラっと印象が変わりましたね。少女たちの夢はもちろん、それと同じくらい挫折や失敗や悩みという青春の辛いところもしっかり描かれていて、みんなで励まし合いながら切磋琢磨して強くなっていく過程がすごく美しかったです。読んでいて、すごく勇気がもらえる作品だと思います。
――登場人物たちの自分なりの役作りが印象的な作品ですが、そんな「役作りをする役」を演じるという上で意識されたところはどんなところでしょうか?
千本木:さらさは天真爛漫で明るくて、みんなのことを巻き込んでいくタイプの主人公なのですが、演じる上で気をつけたことは突っ走りすぎないことですかね。さらさの根底には幼い頃の挫折があって、その上で「オスカル様になる!」という今持っている自分の夢に向かってがんばっているんです。同じように夢に向かっている100期生のみんなのこともすごく尊重しているので、そのことを忘れないよう肝に置いて演じていました。
――さらさは特に目立ちますし、インパクトがあるキャラですからね。
千本木:声の演技が付くとマンガで読む印象から変わってくることもあるので、周りが見えないキャラになってしまい、視聴されている方が共感できない……とならないように意識していました。でも、そこを最も重要視していたということではなく、ほかのキャストさんとの掛け合いや周りの空気感を大切にして、素直に感じて素直に出していくことが大事かなと思っていましたね。
――花守さんの演じられた愛は、ぱっと見は無表情に見えても、けっこう感情が豊かなキャラですよね。
花守:内に秘めた部分に感情を持っていますね。彼女は家庭環境によるトラウマがあり、いつの間にか傷つかないように仮面を着けっぱなしにしてしまっている子なんです。さらさや歌劇と出会ったことで、少しずつ心がざわめいて周りの人たちの言葉を胸に響かせていき、立ち直って夢を新しく見つけて歩んでいくところが魅力的だと、原作を読ませていただいたときから感じていました。
最初はすごく考えながら演じさせていただいたのですが、「かげきしょうじょ!!」という作品はさらさが主人公であるものの、愛ちゃんの目線で物語が進んでいくんです。彼女の心の中の揺れも時間の経過も同じく彼女の頭の中のこととして進んでいくので、モノローグの部分とストーリーテラーとしての部分で、なるべくテンションを分けて演じるように心がけました。
――確かに、視聴者には愛の感情や考えていることはダイレクトに伝わりますね。
花守:さらさへの想いや歌劇へ向き合う気持ちが大きくなればなるほど、心の中の感情は大暴れしていってモノローグも長くなるんですが、その末に出る言葉は落ち着いて見えるんですよね。彼女は10のことを考えていても、言葉として1のことしか出せない部分があるので。だからこそ、その見えるギャップを大切にしようと気をつけていました。
「なんて素晴らしい概念なんだろう!ぜひとも手にしてみたい!」
――上坂さんは、そんなさらさや愛たちをまとめる委員長である紗和を演じていますが、いかがでしょうか?
上坂:杉本さんは見た目の第一印象こそ真面目な委員長だと思えるんですが、それだけではないんですよ! 言わなくちゃいけないことはピシッと言う一面もありますが、どんなところにいようとも紅華オタク魂を発揮して、誰よりもはしゃいでいるシーンがけっこうあるんです。
はじめのうちはみんなを結束させるためにも委員長としてまとめていく気概を見せていますが、お衣装や小道具を目の当たりにすると表情も絵のタッチも変わって「誰!?」って思えるくらいになってしまって(笑)。
――見た目の温度差があるキャラかもしれないですね(笑)。
上坂:実は一番のギャグキャラなのではないかと私は思っています(笑)。委員長モードと紅華大好きモードでギャップが出るといいなと思って、パキッと演じ分けていますね。100期生のまとめ役をしながらもライバルの多い男役を目指している杉本さんは、心から紅華に入りたくて入学してきた子なんです。
なので、誰よりも学生生活をエンジョイしていると思いますし、やっぱりさらさや愛がわりと自由奔放なので……
千本木:寝坊ばっかりしてすみません!
花守:起こしてこなくてごめんなさい!
上坂:そんな子たちも、杉本さんに任せておけばしっかりさばけるんじゃないかっていう「どんと来い!」感が出るように、お芝居を組み立てていきました!
――今のお話にもありましたが、みなさんがもし「紅華歌劇音楽学校」に入学したら、男役と娘役のどちらを志望されますか?
千本木:私は元々持っていた歌劇のイメージは「男役がカッコいいな」というものだったので、男役に憧れますね。すごく難しい道なので、なりたいって言うのもおこがましいくらいなんですが、男役に挑戦してみたいです!
花守:身長のことを考えないで、どちらかを選ぶとするなら……。ステージの中心でスターとして輝く男役が素敵だなと思うと同時に、その星をどう輝かせようかという娘役の考え方にも感動したんです。
理想的な身長差になるように、ずっと屈みながらお芝居をされた娘役の方がいらっしゃると知って、男役の方の素敵な額縁になるためのお芝居にすごく美しさを感じたので、どちらか1つを選ぶのは難しいですね。……本当に選ばないとダメですか?
千本木:本当になるわけじゃないから!(笑)
花守:どっちも素敵なので欲張ってしまいますが、たまに男役から娘役に転身する人もいると聞くので、男役をやった後にそのときの目線を活かして、どういう風に動いたらより魅力的になるのかを考えられる娘役になりたいですね!
上坂:すごい、プランがもう決まってる!
――完全に歌劇団の人ですね! 上坂さんはいかがですか?
上坂:私は男役がいいです! この令和という世の中でスターと呼ばれる人は数少ないですし、なったらさぞ大変でしょうけれど、「なんて素晴らしい概念なんだろう!ぜひとも手にしてみたい!」という情熱です(笑)。
――たしかにスターという肩書きも珍しくなりましたよね。
上坂:トップスターであるという肩書きの持つ重みももちろんありますけれど、いい響きだなぁって思います!
――最後に、視聴者へのメッセージをお願いいたします。
千本木:部活や受験で夢に向かって頑張っている若い方が見たらすごく刺さる作品だと思いますし、自分が何をしたらいいのかわからなくて迷っている方にも指標になってくれるような作品です。
自分のちょっとした好きを追求していけばいいのかもしれないと気づかせてくれて、これから頑張っていこうというパワーにもなると思いますので、ぜひさまざまな方に見ていただきたいです。
花守:今の情勢的に、なかなか生のお芝居に触れる機会も少なくなっていると思うんです。若い方はもちろん社会に出られた方にとっても、舞台に向き合う若い女の子たちの目線で進んでいく「かげきしょうじょ!!」という物語を通じで、お芝居を見たいという気持ちを皆さんに持っていただけたら、いち役者として嬉しいなと思っています。
最近だと劇場のお芝居も配信という形でスマホでも見られるようになってきているので、そういうお芝居に触れる1つのきっかけになれば幸いです。
上坂:登場人物たちそれぞれが違った悩みと夢へのアプローチを持っているので、見た人によって共感できるポイントが変わってくると思うんです。なので、見た人同士でお話をするのがすごく楽しい作品だと思いますし、原作もとっても熱のこもった作品なので、気になった方はぜひ原作も読んでいただきたいですね。
花守さんがおっしゃっていたようにお芝居って素敵だなってことをすごく感じるエピソードがたくさんあるので、さらさたちを見た後にはちょっと高らかな気持ちになって歌い出したくなるんじゃないかなと思います。見るのも楽しいし、お芝居や歌をやってみたいという自分の表現の欲望に向き合える作品になっていますので、ぜひ最後まで見守ってください。
TVアニメ「かげきしょうじょ!!」概要
【CAST】
渡辺さらさ:千本木彩花
奈良田 愛:花守ゆみり
杉本紗和:上坂すみれ
星野 薫:大地 葉
山田彩子:佐々木李子
沢田千夏:松田利冴
沢田千秋:松田颯水
野島 聖:花澤香菜
中山リサ:小松未可子
竹井朋美:寺崎裕香
安道 守:諏訪部順一
奈良田太一:野島健児
里美 星:七海ひろき
白川暁也:高梨謙吾
白川煌三郎:子安武人
【STAFF】
原作:「かげきしょうじょ!!」 斉木久美子(白泉社『メロディ』連載)
監督:米田和弘
シリーズ構成:森下 直
キャラクターデザイン:岸田隆宏
サブキャラクターデザイン:飯田恵理子、高田 晃、牧 孝雄
プロップデザイン:古賀美裕紀
総作画監督:今岡 大、高田 晃、福永智子、牧 孝雄
美術設定/美術監督:谷川広倫
色彩設計:坂上康治
撮影監督:浅黄康裕
編集:今井大介
音響監督:長崎行男
音楽:斉藤恒芳
音楽制作:キングレコード
制作:PINE JAM
※高田 晃の「高」は、正式にははしごだかの字
【公式HP】https://kageki-anime.com/
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(C)斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会
取材・写真・テキスト/miraitone.inc