9年前、当時中学1年生だった佐藤和威さん(22)が同級生からいじめを受け、PTSD=心的外傷後ストレス障害=を発症したなどとして元同級生とその保護者、さらに対応を怠ったとして市を相手取り、約1億2000万円の賠償請求を求めた裁判。
・【映像】見過ごした学校は?加害者の親は?被害者と考える「いじめ」の責任と境界線
市側は過去、少年が受けていた被害は「犯罪に等しい」と会見で認めていた。しかし2年前の一審判決で佐賀地裁は元同級生8人に対し合わせて約400万円の支払いを命じられた一方、保護者と市への請求を棄却。そして今月12日の二審判決でも福岡高裁は保護者と市への請求は退けた上、一審では認められたPTSDの発症についても認められないとの判断を示した。
当時の映像には、佐藤さんがエアガンで撃たれている様子が収められている。13日の『ABEMA Prime』に生出演した佐藤さんは「佐藤さんは「顔面に殺虫剤をかけられたり、カッターや包丁を首元まで近づけて脅されたり、技術の授業中に目の前でのこぎりを振り回されたりした。善悪のわからない子どもを育てたということに保護者にも責任があると思う。また、プロレス技などをかけられることもあったが、担任の先生などは見て見ぬ振りだった。
だから今回の判決には驚いたし、すごく落胆した。世の中を信じていいのかと気持ちが揺らいでいる。当時、プロレス技などをかけられていたが、担任の先生だったりは見て見ぬ振りだった。そういう、何があったのかということについては僕や家族の言ったことが認められ、加害者や学校が嘘をついているということが認められたので、そこについては良かったと思う」と語る。
原告側代理人を務める渡部吉泰弁護士は「和威くんが言ったように、一審とは違って学校内でも継続的ないじめがあり、殴る、蹴る、エアガンを撃つなどし、複数の傷を負ったといった、加害行為のかなりの部分を認定してはいる。ただ、本件の事案そのものは“いじめ防止対策推進法”の施行前ということもあり、学校の責任の部分においてはかなりハイレベルな義務論を展開している。
例えば、首ロックされているのを複数回目撃しているが、必ずしもそれは苦痛を感じる程度ではなかったとか、給食をとっているシーンでも注意しているではないかとか、こちらが法廷で喋ったことが全て否定され、担任は和威くんが苦痛を感じるような行為を見ている状況を現認していない、だからいじめそのものを認識していないから、防止義務がなく責任も負わないという論理になっている。
警察も捜査をし、主たるメンバーは児童相談所の方に送致されて処分を受けるというほどの事件だった。しかし捜査結果を開示してくれと児相に言っても、“少年のプライバシーに関わるから”と明かされず、裁判の立証上、限界が出てきてしまった。そこは私としてもかなり不満が残っている。
また、法的には小学校までは責任無能力という考え方だが、中学生になると独立した法的責任を負うということになるので、違法行為について親に責任を負わせるためには子どもがいじめをしないよう監督しなかったということを被害者側が立証しなければならない。その意味では、教師の過失同様、あまり子どもにちょっかいを出さないのが正解のようになってしまう部分がある」。
また、PTSDについて佐藤さんは「今も僕も日常生活で色々と支障をきたしているのは事実。正直、PTSDじゃなかったらどんなにいいかと思うくらいなので、(今回の判断は)おかしいと思う」と訴える。
渡部弁護士も「家族に相談できたのではないか、という意見もあるが、当時お母さんは重病で入院中だ。お父さんは仕事で忙しく、妹さんは小さかった。そういう中で、加害者側からは“バラすと家族全員殺すぞ”ということも言われていた。そういう恐怖の中でトラウマが重なり、身動きできない状態に追い詰められていった。
和威君の症状で特徴的なのが、重度の解離症状だ。いまだにフラッシュバックが起きて、それから回避するために、自分が自分でなくなっていく。そして、その間の記憶が飛んでしまう。それがほぼ毎日で、夜中もうなされて寝られない。今回、私は主治医の意見書と診断書に加え、トラウマに関する権威の先生2人を探して国際的にも認められた検査をしてもらい、間違いなく重度のPTSDだという意見書も出してもらった。にも関わらず、なぜ控訴審がこうなったかが分からない。判決を読んでも理由がなく、PTSDを発症するにあたる出来事がないと言っているだけだ。常識に反するようなことを言って否定しているので、到底受け入れがたい。私は和威君を通して、PTSDの重度の子どもがどれだけ苦しむのかということを裁判所にわかってほしいと手を尽くしたつもりだが、残念でならない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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