パッと輝く笑顔が印象的なアンミカさん 。ホームパーティーでは、ピーターさんから青山テルマさん、フワちゃんまで、交友関係の幅の広さも際立つが、面倒見のいい“姐御”肌の一方で、意外に“グダグダ”な一面も……?ちょっとヌケ感のあるやわらかい芯の強さは、まさしく新・姐御。その包容力の源泉は、「自然体」にありました。
■「聞く力」に大切な3つの要素
5人きょうだいの真ん中のアンミカさん。世話好きな側面は、年子の兄姉妹弟に挟まれた「真ん中っ子」で育った影響が大きいと自己分析する。
「妹弟が大好きで、元々誰かのお世話をするのが苦ではないんです。でも姉がしっかり者で、私は“妹キャラ”な部分も。ホームパーティーでも詰めが甘かったり、意外とグダグダ……。誰か仕切れる人がいたら、任せちゃったりします。適材適所の人がやるのがいちばんハッピーかな、って。でも、うんと甘えられるかというと、そうではない。甘え下手な姉御肌、なんです」
その場の状況を読み、「適材適所」を判断するバランス感覚もまた環境から磨かれたものだろう。一方で、幼少期、外ではコミュニケーションが苦手。克服したきっかけは、「笑顔」と「褒められた」体験だった。
「5歳の頃、階段からの転落事故で顔に後遺症が残りました。変形した唇や真っ黒になった歯茎が怖がられて、笑えなくなったんです。早い段階で、異常に周囲の空気に敏感になった子供でした。コンプレックスを克服できたのは、母の『本当の美人とは、一緒にいて気持ちがよく、場が明るくなるような人』という教えがあったから。」
「ポイントは4つで、姿勢をよくする、笑顔でいる、相手の目を見て話す、そして会話術でした。聞く側には『頷き』『共感』『質問』という3つの要素が大切だと、母は教えてくれました。 姿勢よく笑顔で、人の話を聞くようにしていると、大人が褒めてくれるようになりました。すると自信がついてきて、気がついたら活発になっていました」
■上手な「サンドバッグ」になる
ところが、小学校で韓国について習うと、急に友達が離れたことがあった。「お母さんが遊んじゃダメって言った」という理不尽な理由だった。
「そのことを訴えると、母は『韓国の素晴らしい部分を知らないからよ』とあっけらかん。お友達家族を招待する食事会を開いてくれました。プルコギのような韓国料理はまだ珍しかったこともあって、大盛況に終わりました。その時、母が『怒り』や『悲しみ』の感情を露わにしたら、私もモヤモヤの原因は怒りや悲しみなんだって思ったはず。でも母は、『寄り添い』と『理解』で応対しました。こちらが被害者意識をもつと、心の中にまた別の加害者というモンスターを作ってしまい、巡り巡って自分が疲弊する。悲しいことがあった時の“心の建て替え方”を、母の背中から学びました」
その後実家が経営する2店舗のラーメン店が相次いで火事にあい、母はガンが発覚する。どん底にいた時、教会の神父に言われた「神様は、その人が乗り越えられない壁はお与えにならない」という言葉は、アンミカの信条だ。
「ハプニングは、それを乗り越えるための知恵と工夫を身につけるための練習。さらに知恵と工夫は幸せになるための道具であり、自分の“引き出し”になるのだから、と。壁を見ないフリをしていると、どんどん壁は高くなっていく。何か起こった時、人やものごとのせいにする癖がつくと、成長できなくなる。神父さまの言葉に支えられました」
人のせいにしない生き方は、相手を尊重するという姿勢にも繋がる。交友関係では「娘ぐらい」の世代とも仲がいいが、属性によって意識や態度を変えることは「一切ない」という。
「私のホームパーティーは、いろんな年代の方がいらっしゃるので、相手によって態度を変えていたらおかしいですよね!(笑)誰が相手でも自然体です。ただ、心地いい空間作りのため、会話の流れには注意を払います。例えば悪口のような話になりかけたら、話の腰を折らないように注意しながら、ネガティブなまま着地しないようにする。吐き出すことで楽になるなら、吐き出してくれていいけど、乗っかることはせず、ただ『聞く』。上手なサンドバッグになって、流れを変えるみたいなところは、気にかけています」
■「支配欲を捨てる」ということ
人との距離感を掴む術は、やはりきょうだいの中で学んだ。5人はとっても仲が良かったが、成長と共に2:3のグループのようなものができ、日々相手との関係性や距離を意識する練習になった。
「相手を傷つけると自己嫌悪で自分も傷つくし、意見を次々に変える日和見でも嫌われる。適度な距離をとりつつ、一人ひとりに誠心誠意を尽くして接するのが、自分なりの処世術でした。ただし、信頼関係がある上で言うべきだと思ったことは、はっきり言います。はっきり言うことに怖さはありません。だって、ベースにあるのは『愛情』で、『感情』ではないから。感情が先走ると、相手を思い通りにコントロールしたいという支配欲、自分勝手な批判になってしまって、相手にも響かない。でも愛情があれば、きちんと意見を交換し合うことができますよね」
■苦手な人からは「笑顔ムーンウォーク」で立ち去る
社交的な印象が目立つが、「苦手」な人はいないのかというと、「そんなこともない」という。
「一度だけ、苦手な人がいました。何が本音かわからなくて、最終的に私が不思議なことを言われてしまって。その時はショックでしたが、笑顔のままムーンウォークで立ち去った(笑)後ろを向いて去ったら『逃げた』って思われるので、前を向いて。私、引き際も笑顔で別れたいと思っているんです」
■「ママ友」の呪縛 「形にとらわれなくていい」
人を嫌いになったこともあるが、そう思う自分がしんどくて、「嫌いになるのをやめた」。そもそも、他人は育った環境から考え方まで、何もかも違うもの。「人は思い通りにならない」と考えると、楽になった。
「相性もあるし、苦手な人がいるのは仕方ない。でも、場所を変えたり、時を経ると親友になることもある。だからジタバタしなくていい。例えば子供を生んだ/生んでいない、結婚した/していないとかで、疎遠になるっていうことがあるでしょ?『親友だと思っていたけど、ママ友の方が仲いいんだ』とかね。そういうの、全然気にしなくていいと思う。新しい人間関係を作っていいし、逆に一人の時間を深めてもいい。人に依存しなくていいの。自分を大事にしてこそ、人とのエネルギー交換の余裕ができるものだから。人間関係で大切にしているのは、“心地よさ”。歴史でも濃さでもなく、ましてや連絡の頻度でもありません。お互いがそれぞれのいいタイミングで会えて、心地よければいい。形にとらわれなくていいと思っています」
■幸せになりたかったら、今を充実させること
人間関係に悩む人に一言声をかけるとしたら、「無理せずに」だという。
「今この瞬間を感謝して楽しめるように過ごしていけば、人間関係にも未来が開けると思います。『現在』って、英語で“present”。過去を憂えて、未来を心配して、現在がおろそかになっているのでは、未来にいいプレゼントをもっていけない。幸せになりたかったら、今を充実させることが大切だと思います」
「世の中というのは理不尽だし、不公平。でも、自分が努力していくことで、自分だけの宝物が作れた」というアンミカ。宝物とは、今ここに生きている人たちとの繋がりに集約される。母から教えられ、自身が大切に築いてきた自然体の「心地よさ」に、人は惹き寄せられるのだろう。
<取材・文=吉河未布/編集=Ameba編集部/撮影=オカダマコト>