「大人に囲まれ、やらなきゃいけない空気に」「現場から走って逃げてしまった」ネットに“写真”が”半永久”に残る時代、撮影を後悔するグラビアアイドルを生まないためには
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 多くの雑誌が掲載する水着グラビア。しかし先月、ある少年誌の表紙が“過激ではないか”と物議を醸しているという。

 数多くのグラドルを取材してきたライターのとり氏は「グラビアの仕事をすることがチャンスに繋がるかもしれない一方、嫌な思いだけが残るかもしれない。特に10代の女の子の場合、その判断は難しい」と話す。

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 では、現役グラドル、元グラドルは、水着グラビアの仕事についてどのように考えているのだろうか。

・【映像】スタジオでの議論の様子

■「それはちょっと違うかな、下品だなと思うこともある」

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 「中学、高校時代、胸が大きいのがコンプレックスだったが、あるグラビアアイドルさんの写真集を見て、自分が隠していた部分が魅力的に見えたり、自信につながったりすることを知って、私もやりたいなと思った」と話すのは、現役グラビアアイドルの茜さやさんだ。

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 「個人差もあるが、普通の大きさの水着を着て、普通に海辺やホテルなどで綺麗に撮ってもらっているシンプルなグラビアが、私としては爽やかで普通のグラビアかなと思う。男性でも女性でも“美しさ”というものがあると思うが、最近ではどんな体型でも美しいんだという作品も出てきているので、素晴らしいと思う。私自身が表現したものを見ていただいて評価していただいていると思っているので、あまり“買われている”という感覚はない。

 ただ、いろいろな種類の仕事があるので、その中で嫌悪感を覚えたことは確かにある。私が考えるグラビアアイドルの枠を超えるような過激さ、あからさまな表現については、それはちょっと違うかな、下品だなと思うこともある。マネージャーさんも一緒になって“現場まできたんだからやるしかないよね”と責められ、大人に囲まれてやらなきゃいけない空気になってしまうことがあると聞いて、悲しい思いをしたこともある」。

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 一方、自身の写真が使われた広告が、“胸が大きい”という理由で炎上したこともある。

 「親御さんがお子さんに見せたくないという気持ちはわかる部分もあるが、私の場合、普通の服を着た写真だったのに性的なコメントや下ネタを投稿されたり、“胸を強調している女性を使う企業は使いたくない”という批判をされたりしてしまった。一番ひどかったのが、“胸を小さくする手術もあるじゃないか”というツイートだった。確かに胸が大きいことがコンプレックスだったが、手術を受けていない、そういう努力をしていないのに何を言っているんだと言われ、個性を潰そうとするのはどうなのか、怖いなと感じた」。

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 こうした経験を踏まえ、茜さんはグラビアアイドルたちが安心して働けるよう、仲間を作れる場所としてコンセプトカフェを経営する。「想像していた仕事ではなかったが、事務所に所属してしまうと拒否できないといった相談を受ける。ほぼ裸のような状態での撮影など、これはグラビアなのかというお仕事も結構あるようで、後で泣くことになってしまってかわいそうだなということも多い」。

■「その場で検索され、写真が残ってしまうんだなと後悔した」

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 一方、「かわいい顔、いいスタイルを売りにしているモデルさんがいるように、女性らしい体を武器にして稼ぐ人がいてもいいし、それがすごく美しいということも肯定する」と話す『アイドリング!!!』の元リーダーで、現在はボイストレーナーとして活躍している遠藤舞さんは、撮影中に現場から逃げた経験があるという。

 「私はスカウトしていただいたことがデビューのきっかけだったが、スカウトマンの方に最初に言われたのは、“この世界はグラビアをやらないと生き残っていけないから”みたいなことだった。学生時代から水着を着るのが嫌で、プールの授業にも出ないくらい肌の露出がダメだったが、まだ18歳でそんなに考える力もなかったので、それを鵜呑みにしてしまって、仕事だからやらなきゃいけないんだと思い込み、チャレンジしてみた。

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 しかし結論から言うと、メンタル的に受け付けなかった。“その節はご迷惑をおかけしました”という感じだが、ある撮影で、水着の上にすごく短い短パンみたいなのを履いた状態で後ろ向きになって足を開かされ、隙間から蜂蜜のようなものを垂らす様子を接写で1時間くらい撮影されたことがあった。しばらくは耐えていたが、その場で泣いてしまった。次の日にマネージャーさんに“ここからは私服を着たい”と相談したが、お仕事なのでそういうわけにもいかず、“展開”と言って、服の下に小さな水着を仕込んで少しずつ脱いでいく様を見せていく撮影をするのが嫌になり、走って逃げてしまった」。

 今も当時の作品がネット上に残る。「引退後、仕事関係の会食に呼ばれて行った時に、ご一緒させていただいた男性が私の名前をその場で検索した。上の方に出てきた水着の写真の私と目の前にいる私とを比べてニヤニヤされ、改めて写真が残ってしまうことを後悔した。やっぱり若い女の子が一人で現場に行って“やらなきゃいけない”という環境にはならないようにすべきだし、“今後これが残ったとしても大丈夫なんだろうか?”ということを考えてから撮影してもらうのが賢明なのではないか。

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 また、茜さんは“爽やか”とおっしゃったが、それがどれぐらいのラインなのかを、ちゃんと現場のみんなで話し合ってすり合わせておく必要があると思う。どこからが浮気なのか、という基準が人によって違うのと同じように、ボーダーラインも人それぞれだ。ただ、自分が撮影の時にちょっとでも“嫌だな”とか、“えっ?“と引いちゃうようなものは出さない方がいいというのが私の意見だ」。

■業界での基準づくりや18歳未満の仕事には規制を

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 前出のとり氏によると、業界にも変化が生じている面もあるという。「最近では色々な体型の方が出ているし、光や影も入れながら魅力的に見せる事が出来るようになってきている」。

 昨年10月に創刊された水着グラビア専門誌『STRiKE!』もその一つだといい、モデルのキャラクターに合ったシチュエーションで、写真にストーリー性を出すなど、性別関係なく楽しめるという。「表紙がかわいらしいし、女の子も気になる表紙なんじゃないか。中を見ても、楽しんでかわいく撮ってもらっているという印象を受けるし、自分も楽しくなれる」。

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 KADOKAWA社長の夏野剛氏は「奇跡のように美しい体型を持っている人がいて、そこに価値があると考える人がいて、お金が回っていることも事実。それが不公平だと言うのはおかしいと思うし、グラビアが良いか悪いかという議論も成立しないと思う。一方で、日本には水着グラビアよりも過激な漫画が溢れている。僕がいる出版業界は“自由派”ばかりだが、そういうことも含め、このネット時代にふさわしい基準を作り直さないといけないと感じている」とコメント。

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 元経産官僚の宇佐美典也氏は「昔は表紙が水着グラビアではなかった漫画雑誌でも、そういう写真が使われてきているのを見ると、ニーズはあるのだろう。実際、青少年にとって接点は青年誌、漫画雑誌だけになる。ただ、表紙に身体全体の写真を使うことは無いと思うし、基本的に未成年のものは良くないと思う。本来は親の同意があるべきところを、事実上一人で、半ば無理に作品にされて売り出されてしまうのは法と矛盾していると思う。来年には未成年=18未満に統一されるので、そのタイミングで見直した方がいいと思うし、政治家も議論すべきだと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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