東京都では新型コロナウイルスの一日の感染者が3日連続で過去最多を更新し、全国では初めて1万人を超えるなど、感染拡大が顕著となっている。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は30日、緊急事態宣言の対象に埼玉・千葉・神奈川の首都圏3県と大阪を加え、まん延防止等重点措置を北海道、石川、京都、兵庫、福岡に適用することを決定した。期間はどちらとも来月2日から31日までで、すでに緊急事態宣言が発出されている東京、沖縄の22日までの期間も延長される。
菅総理は、人流が減っていることやワクチン接種が進んだことによる重症者の減少を強調しているが、この状況を政府内はどのように受け止めているのか。テレビ朝日政治部・与党担当の相沢祐樹記者が伝える。
Q.首都圏3県と大阪への緊急事態宣言発出は前々から検討されていた?
首都圏3県への緊急事態宣言発出などについては、官邸は当初、慎重な姿勢だった。飲食店のお酒の提供停止の徹底など、まず自治体できることが先だとのスタンスだったが、方針の変更を迫られたのは28日の午後。3県の感染者数がそれぞれ過去最多を更新したことで、政府としても自治体や世論の風向きを重く受け止める必要が出てきた。
与党の幹部は、緊急事態宣言発出の際に国会などでの対応もあることから、政府からいち早く情報が入ってくる。取材した与党幹部も政府同様、28日の午前までは「今週中に首都圏3県への緊急事態宣言発出などはない」と断言していた。ところが、感染者が各地で過去最多を更新すると、宣言発出について否定をしなくなったどころか、対応に向けて肩を温め始めた印象を持った。まさに急転直下の方針転換だったのだと思う。
Q.菅総理の「人流は減っている」というコメント対する世論の反発は強いが、与党内では緊急事態宣言の効果についてどんな声が上がっている?
与党内でも「効果は薄い」という見方が大勢を占めている。街を歩けばお店が夜遅くまで開いているし、お酒も出している。そういった光景を与党議員も目の当たりにしていて、緊急事態宣言を出している東京については、「これ以上どうしようもない。『しっかり守ってください』と呼びかけるしかないが、みんな聞く耳を持たないだろう」と諦め気味に話す自民党の議員もいる。
Q.より強い策を打ち出すという可能性はある?
個人の権利を強く制限するような政策を打ち出せば、感染者数を減らすことはできるかもしれないが、西村大臣の酒類提供の停止要請を巡っては世論の強い反発もあり、中々強い措置を打ち出せないのが現状だと思う。政府には夜の街の見回りをさらに強化すべきなどといった考えがあるようだが、目新しい策はないようで手詰まり感も感じる。
Q.菅総理は五輪中止論についてきっぱりと否定しているが、五輪と感染者数の関係性について与党内ではどんな声が上がっている?
楽観的な見方を示す自民党の重鎮議員もいる。この議員は「オリンピックが終われば雰囲気はガラッと変わる。みんな色々文句言うけど、テレビ見てるんだからさ」と話している。この雰囲気というのは、コロナ対応を巡って低迷する菅内閣の支持率が、オリンピック後に好転するのではという意味で使っている。また、与党幹部からは、日本のメダルラッシュを受け、「オリンピックがなかったら報道は菅総理の悪口ばかりになるのでよかった」と安堵の声も聞こえてくる。
一方で、選挙に勝てるかどうかに神経を尖らせる自民党の若手議員は、厳しい見方を示している。平時なら金メダルラッシュの勢いそのままに選挙で圧勝、となるかもしれないが、「そんなことにはならないだろう」とため息を漏らしている。新規感染者が急増する中、メダルラッシュと内閣支持率、衆院選は切り離して考えている様子だった。