ABEMAMIX出演の合間に、HIPHOPライター MINORI がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
―Authorityさんは今の拠点は東京だと思うんですが、青森県が出身ですよね。青森のヒップホップシーンってどんな感じですか?
Authority:自分は地元であんまり活動をしてなかったので、すごく若い子とかまでは全員把握できてないですけど、ずっと昔からやってるフッドスターの先輩はいて。
やっぱり地元を盛り上げてくれてます。
【映像】Authority ABEMAMIXライブパフォーマンス
―YENTOWNの方もいらっしゃいますよね。
Authority:そうですね。JNKMNさんは同じ青森で地域も近くて。地元にいた時は全然知り合いじゃなかったんですけど、結構いろんな人を繋げてくれたり、東京に出てきてから何かと気にかけてくれました。
―もともとラップを始めたきっかけは何だったんですか?
Authority:地元の友達がカラオケで歌ったりしてて、よく聴いていたのがSEEDAさんの“花と雨”だったんです。
その時はヒップホップとかラップってよく分からなくて、普通にいい曲だと思って聴いてました。でも、当時ちょうど高校ラップ選手権とかが盛り上がってる時期で。
たしかその中で誰かもSEEDAさんの“花と雨”の話を出してて、「“花と雨”ってヒップポップなんだ」みたいな。
自分と同じような境遇のやつが、テレビの中でめちゃくちゃカマしてるから気になってラップを始めました。
―地元ではどうやってスキルを磨いていったんですか?
Authority:俺がラップを始めたときは地元に今ほどラッパーがいなくて。特に田舎なんで、人と違うことしてるみたいな感じで見られるのを嫌がる奴が多いから。それで、とりあえず友達に無理やりやらせたりしてたんですけど、そいつらは遊びでやってるだけだからだんだん飽きてきちゃって。
そこからは一人で黙々と練習したり、移動中にビートをかけながらラップしたりしてました。
―東京に出てきて、最初に出た大きい大会はなんだったんでしょうか?
Authority:東京では2016年にUMBに出ました。めっちゃ人いるじゃんと思って結構テンパっちゃって、謎かけをしちゃったり(笑)。
―でも2018年からは一気に優勝されてましたよね。
Authority:そうですね。2018年のUMBで、もう今年駄目だったらラップやめようと思って。
そしたら結構跳ねたから、もうちょい頑張ってみようと。
―実際にバトルされているときって、どんなことを考えてその場に立っていらっしゃるんですか?
Authority:俳優さんとかも、現場に入ったらスイッチが入るじゃないですか。そういうのノリだと思うんですよ。別に普段から争いごととか好きじゃないから。ステージに立ってるときはやっぱり相手がいるから、相手が言ったことに対して瞬発力で考えたことを言ってるみたいな感じだと思います。
―なるほど。Authorityさんのラップは、ただディスるってよりも、相手に対するリスペクトが強いように思えて。自分の中で何かこだわりみたいなものってあるんでしょうか?
Authority:MCバトルはフリースタイルのセッションの延長なんですよ。それにお客さんをつけて勝敗を決めるのがMCバトル。俺が仕掛けたのに対して相手が上回ってきて、俺がさらにそれを上回ってみたいなのが8小節3本とかでできると、徐々にお互いのポテンシャルが引き出されてくるじゃないすか。
馬鹿にされた方がポテンシャルが出る人もいるだろうけど、俺はディスられてもあんまり気にしないから。
だから変にディスんなくてもいいかなって思います。
畳み掛け合いの中で相手のポテンシャルもマックスに出せたら一番です。
―バトルと平行して、2020年から音源を出されていますが。
Authority:そうですね。だんだん作っているものを形にして、みんなのリアクションを見たくなってきて。2020年は地元で音楽を制作してたんですけど、東京にいる時と比べると成長が遅く感じて。やっぱり東京は環境が整ってるし、人材も豊富だから。地元は超好きだけど、音楽やるのにはやっぱり向いてないと思って。
本気でやるんだったら東京に出てこようと思って引越して、今年からって感じです。
―これからの活動の、バトルと音源制作のバランスはどうしていきたいですか?
Authority:バトルは正直、切りがいいところで一旦抜けると思うんですよ。MCバトルというカテゴリーの中で、これ以上自分の進化はあんまりないと思うから。自分で2019年とかの自分のバトル見たりすることがあるんですけど、めっちゃ強いと思うんですよ。
でもその頃のラップは今はできなくて。その頃はバトルに勝たないとっていう気持ちでやってるから、今のマインドとは全然違くて。
だったら今は曲の方がハマるから、曲で魅せたいと思います。
―5月にリリースされたアルバム『EMRAL』は、どんな思いでつくられたんですか?
Authority:『EMRAL』には いろんなジャンルの曲を入れて、通して聴いたら1個はこれ好きだったな、みたいな。ハマる曲があればいいな、という感じで作りました。
とりあえずSEEDAさんとの曲が決まった段階で、俺は5月5日が誕生日なんですけど、自分のラッパーキャリアへの誕生日プレゼントっていう意味を込めて、誕生石のエメラルドをアルバムのモチーフにしました。
―SEEDAさんとの共演のキッカケはなんだったんですか?
Authority:ニート東京の撮影のときにアポを取って話をしました。そのときにやっぱり自分がラップを始めるきっかけになった人だったので結構熱い話をしちゃったんですけど、快く手を貸してくれて。
―実際にレコーディングはどうやって進めていったんですか?
Authority:東京に来たばっかりで全然ツテがなかったんですけど、自分が使ってるところに一緒に入っていいよっていう感じで、SEEDAさんがスタジオを用意してくれました。アポを取って会ったときはホテルの一室だったから、SEEDAさんって思ったよりも人間なんだな、と正直思ったんです。
でもブースに入ったらやっぱりSEEDAさんで。結構それで食らっちゃって。
いや、そうっすよね、あのSEEDAさんですもんね、って。
―もちろんSEEDAさんとの曲は大きいと思うんですが、他にも思い入れのある曲はありますか?
Authority:“I Think”っていう曲です。俺より先に上京した友達が覚醒剤に手を出しちゃって、ちょっとおかしくなった状態で電話してきて。やめなよって言っても全然話になんなくて、じゃあそのまま曲にしようと思って、そいつらへのメッセージとして作ったのがこの曲です。
リリース後にそいつらがアルバムをチェックして、その曲が自分らに対して言ってることだっていうのが分かって、それから結構考えてるらしくて。
そいつら以外にも同じ境遇のやつはいっぱいいるから、自分が重なったら考えて欲しいなって思います。
―アルバムではメロウな音に乗っていたり、オートチューンを使っていたりと、バトルのときとは少し違う印象を受けましたが、普段と違った魅せ方は意識されましたか?
Authority:バトルでできることを曲でやってもあんまり意味がないと思う部分もあるし。俺はバトルMCと呼ばれる人たちの可能性になりたいと思ってるので。バトルにバンバン出てる人の曲はあまんまり聴かない人も多いと思うけど、あいつはぶち壊したよな、の一発目になりたいです。
―特に日本はバトルを熱心に見てる人と音源を追ってる人の層もちょっと違いますよね。
Authority:そうですね。やっぱりバトルを見てる人は俺のこと知ってるから、そこからヒップホップに入ってきてほしいです。バトルをディグる力があるんだったら絶対曲も掘れるから、自分のディグ力をそこだけで消化しないで欲しい。
せっかくMCバトルを知ったんだったら、もっと全体的なカルチャーとして知った方が絶対おもろいし。
―確かにそうですね。ちなみに、今気になっている、一緒に曲を作ってみたいラッパーやビートメーカーっていらっしゃいますか?
Authority:やっぱり今一番気になってるのはKMさんです。元々ラップを始めて数年の頃、KMさんの音楽が好きで、KMさん名義のアルバムとかすごい聴いてたから。今は遠い存在の人って感じですけど、すごい好きですね。
―最後に、これからチャレンジしていきたいことや、未来像みたいなものがあったら教えて下さい。
Authority:音楽的には国外の人が聴いてもアガれるような曲を作れるところまでいきたいです。
クラシックを残すには俺はまだ若いと思うんですよ。それはもっといろんな経験をしてからでもいいと思ってて。
とりあえず今の目標は、国外の人が聴いても、なんかこいつ何言ってるか分からないけどかっこいいなっていう曲ができればいいかな。俺らが洋楽聴いてる感覚と同じじゃないですかね。