西野七瀬が髪をブリーチ、大胆なプリンヘアーでスナックのママ役に初挑戦。警察とやくざの攻防戦を過激に描いた映画『孤狼の血』(2018)の続編『孤狼の血 LEVEL2』(8月20日より公開)で新境地を開拓する。
マル暴刑事・日岡秀一(松坂桃李)と出所あけの上林組組長・上林成浩(鈴木亮平)との戦いを描く本作で、西野は「スタンド 華」のママ・近田真緒役を好演。真緒は日岡と親密な間柄でありながら、弟の“チンタ”こと幸太(村上虹郎)が日岡によってスパイとして上林組に送り込まれてしまい、不安を大きくしていくという複雑な心情を抱えるキャラクターだ。彼女の持つパブリックイメージとは真逆とも言えるこの役に、西野はどのように挑んだのか。話を聞いてきた。
「嬉しいんですけど不思議でした」ママ役抜擢に驚き
ーー出演が決まったときはどのようなお気持ちでしたか?
西野:すごくびっくりしたのと嬉しかったです。前作はプライベートで友人と観に行っていたので、なんで私なんだろうと思いました(笑)。嬉しいんですけど不思議でした。いまだになぜ選ばれたのかわからない。イメージと違う役、今までにない作品だったので、周囲にも驚かれました。今日の先行上映会で、親も観るみたいです。親はどういう感想を持つのか楽しみです。
ーーそれは気になりますね!映画館で前作を観られたとのことですが、もともとハードボイルドな作品や、任侠物がお好きだったんですか?
西野:普段はほとんど観ないです。ただ『孤狼』は、そのときたまたま観ようとなって。開始してすぐにちょっとだけ後悔しました(笑)。うーっ…となりました。ただ、ハードなシーンはもちろんあるんですけど、全然手加減しない感じがかっこいい映画だなと心に残っていました。
ーーそんな作品の続編に出演するというのは、やはりプレッシャーを感じましたか?
西野:はい。前作は女性のキャストが少なくて、今回も少ない。自分には(前作でママ役を演じた)真木よう子さんのような貫禄はないし、どうしようと思ったのですが、全然違う役柄でもあったので、違うものとして自分なりに取り組もうと頑張りました。
ーー役作りの中で意識したことはありましたか?
西野:白石(和彌)監督ともお話しして“芯が強い女性”というのを大事にしました。スナックのママは演じたこともないし、スナックにも行ったことなかったので、イメージですけど、凛とした強さや、面倒見の良さというのも真緒の要素としてあると思い、そういったところを意識して演じました。
ーー面倒見の良さは西野さんにも通じますか?
西野:ないです(笑)。私は末っ子で普段は面倒を見られる側なんです(笑)。長女でしっかりした感じではないので、そこをどうやって埋めようかなって考えていました。
広島弁&ママ的仕草に奮闘「ライターが固くて両手で火をつけちゃう」
ーー今まで演じられてきた役の中でも難しかったですか?
西野:はい。役柄もそうですし、方言も難しかったです。「またきてください」っていうセリフがあったんですが、それがどうしても関西弁のイントネーションになってしまう。今も正解のイントネーションが思い出せないんですけど(笑)。当日になって増えたセリフで、自分的にはより難しかったです。考えれば考えるほど、違うイントネーションになってしまう。
私は大阪の人間なのですが、広島弁と関西弁は相性がよくないらしくて。関東の方の方が広島弁が入りやすいそうで、もともと関西弁が入ってしまっていると混じってしまうみたいです。
ーー松坂さんの広島弁はやはり馴染んでいましたか?
西野:松坂さんは「はぶてんなや」って広島弁をアドリブで入れていました。これは前作で役所広司さんが、真木さんの息子さん役の子に言っていたセリフだったそうで、それを使いたかったみたいです。意味は「怒るなよ~」みたいな感じだそうです。
ーーそんな繋がりがあるのも面白いですね!スナックのママ的な仕草も慣れるまで難しそうです。
西野:タバコのもち方も難しかったです。これも今はできないかもしれない。指がピーンとしちゃう。初心者丸出しで(笑)。ライター自体も子供が使えないようにレバーが重くなっているんですけど、それが全然扱えなくて、固くて両手で火をつけちゃう(笑)。子供同然でした。火をつけるのも、プルプルしてなかなか定まらなくて。現場で教えてもらったんですが、慣れるまで大変でした。
弟役・村上虹郎のシーンでは思わず涙「苦しかったです」
ーー村上虹郎さんが以前インタビューでみんなが自由にやってるカオスな現場だとおっしゃ言っていましたが、いかがでしたか?
西野: すごく印象に残っているのが、スナックのシーンで斎藤 工さんがアドリブで氷を急に食べ始めたときがあって。ガリガリッガリガリッて、笑いそうになってそれが直視できなかったです(笑)。音だけ聞いていました。面白かったです。
ーー村上さんとはどのように姉弟の空気感を作っていきましたか?
西野:虹郎くんは常に「姉ちゃん」って呼んでくれて、自然と姉と弟の関係性が作れていきました。虹郎くんは本当にチンタの役にぴったりで、撮影が進んでいくにつれて可愛らしく感じました。なので、試写で観たときもチンタとのシーンがグッときて泣いてしまいました。苦しかったです。
ーー映画の中でも真緒がチンタのことで感情が昂るシーンがありますね。いかがでしたか?
西野:難しかったです。現実では経験したことないような、想像できない衝撃だったので。真緒はそれまで強い感じを見せていた中で、本音が溢れてくるシーンだったと思います。
ーー本作はご自身にとってどんな作品になりましたか?
西野:この作品に参加できて、すごく光栄なことですし、そのときの自分が出せる精一杯をちゃんと出せた作品になったと思います。お話をいただけて本当に嬉しい作品でした。この役や現場で学んだ頃を、またどこかで活かせるように精進したいです。
ヘアメイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリスト:市野沢祐大(TEN10)
ブチェラッティ/セルジオ ロッシ
取材・文:堤茜子
写真:You Ishii
(c)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会