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 映画『孤狼の血』(2018)の衝撃から3年、さらにリミッターを破壊した続編『孤狼の血 LEVEL2』が8月20日(金)より公開される。メガホンをとったのは前作に引き続き、白石和彌監督。オリジナルストーリーで、鬱屈した社会に新たな熱狂を届ける。

 主演は、前作で新米エリート刑事・日岡秀一を演じた松坂桃李。殉職したマル暴刑事・大上章吾(役所広司)の“血”を受け継ぎダーティに進化を遂げた日岡が、出所あけの上林組組長・上林成浩(鈴木亮平)と対峙していく。

 今回ABEMATIMESは、前作から続投する滝藤賢一中村獅童インタビューを実施。それぞれ広島県警本部の管理官・嵯峨大輔、安芸新聞の記者・高坂隆文として、立場と目的は違えど日岡を追い詰めていくキャラクターを演じた2人に、『孤狼の血』シリーズへの想い、そしてその独特な現場について語ってもらった。

物語の舞台・広島で感じた『孤狼の血』への期待

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――前作は大ヒットとなりシリーズ化されることとなりましたが、当時ここまでの反響は想定していましたか?

滝藤:前作での広島での撮影のとき、びっくりするくらいギャラリーの方がたくさんいたんです。車からメイクに入る建物の数メートルの間にレッドカーペットみたいな感じで。

(中村に)なんであんなに情報が洩れるの?ってくらいいましたよね。

中村:僕のときもいました。前作では2シーンくらいしか出ていなかったんですけど、表に出てたら人だかりでした。

滝藤:あんな経験はあれが初めてだったので、公開前から注目度の高い作品なんだなと感じました。

――地元の方からの期待の大きさも感じていたんですね。

滝藤:あの頃はコロナの前だったというのもありましたしね。今回はコロナがあったので、歩いていても県民の方にすらほとんど会いませんでしたけど。

――それでは少し寂しさも感じましたか?

滝藤:そんなにキャーキャー言われたいタイプではないですよ(笑)。でも、はい。とっても寂しかったです(笑)。

現場に導入されたリスペクトトレーニング

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――『LEVEL2』では出番も増えて悪人感も増していましたが、出演が決まったときはどのようなお気持ちでしたか?

中村:白石組は『日本で一番悪い奴ら』、『孤狼の血』と今回で3作目で、前作のときに白石監督から「うまくいくとパート2作る予定なので」と聞いていたので、そのときに「絶対に僕も出させてくださいね」と伝えていました。

今の時代、昭和っぽい匂いのする作品が減ってきている中で、こういった大作を作っていただけるというのはありがたいです。白石監督の作品が持つ、今の時代に切り込んでいくという作風は我々役者が惹かれて、人気がある理由ですね。時代に挑戦していく姿勢というのを感じるから役者として参加したい人が多いのだと思います。僕自身もそうです。

――前作と『LEVEL2』、現場で変わったことはありましたか?

滝藤:「リスペクトトレーニング」をした組は今回が初めてでした。

中村:俺、それ(リスペクトトレーニング)撮影後にインタビューか何か読んで知ったよ。

滝藤:ずいぶん後じゃないですか!

中村:すごく静かな現場だなと思ってたよ(笑)。

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――リスペクトトレーニングとは実際にどんなことをされるんですか?

滝藤:あっ、(今回は)僕も参加できなかったんです。でも、そのすぐ後、別現場に入るときにやりました。「こういうことを言ってしまうとパワハラ・セクハラ・〇〇ハラスメントになってしまうよ」というのを教わりました。「あだ名で呼ぶのはよくないのか?」とか、参加者が質問したりして。

前作のときから白石監督の現場は、俳優(のセリフ)以外では怒鳴り声とかが響くような現場ではなかったんですけど。そういうことをケアしている現場は初めて参加したのでとてもいいなと思いました。

中村:結構忙しいときの連ドラ撮影とかだと、やはり現場も切羽詰まっているのでスタッフさんも声を荒げがちなんです。

ただ昔の東映だと、結構大きな声は聞こえていましたね。太秦では、すごいスピードで撮らないと間に合わないくらい時代劇ラッシュの時代があって、僕はそれに参加させていただいた最後の世代だと思うんです。当時はまだ “中村獅童”なんて世の中に出る前だったので、僕なんかは「おい!」「アホー!」「どけー!」とか言われてましたよ(笑)。そう扱われて「いつか絶対見返そう」と心の中で誓っていました。でも、それで次に僕が(役者として)大きくなって戻ってきたときに、職人さんたちが「お帰り~!」って迎え入れてくれる感じが好きなんです。自分がそういうとこで育ってきたからこそ、今の感覚と違うだろうし、それが当たり前だと思わない方がいいと勉強になります。

自分も若い人たちにそういう言い方はしないでおこうと思います。男同士だったら過去には普通に言っていたことも、彼らにとっては違和感を感じていたかもしれない。「今日終わったら飲み行こうよ!」とかも、断りにくいかもしれないし、あまり言わない方がいいのかな、とか。

滝藤:それも寂しいですよね。愛情とハラスメントの違いが難しい!

中村:そうですよね。ただ無駄に怒鳴り合っているとかは一番よくないですから。ターゲットを見つけてその人を集中的に怒るとか。そういうのが恒例になっている現場が過去にはありましたけど、そういうのは不愉快ですよね。

役者たちが暴れ狂う『孤狼の血』の現場

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――『孤狼の血』の現場は他の現場と違って独特な空気があるとおっしゃる俳優さんが多いのですが、いかがですか? 

滝藤:圧倒的な熱量の差でしょうね。みんな暴れまくっていますからね(笑)。本当はもっとクールにやりたかったんですけど、周りに影響受けてしまいました。ビルの上から獅童さんのシーンを見ていたんですけど、暴れ狂ってましたね(笑)。ああいう芝居を見ると自分も引っ張られてしまいます。

中村:そのシーンは覚えています!滝藤さんとは現場でまだお話ししてなかったんですが、芝居終わるたびに「ヤー」って僕もオラついて滝藤さんにアピールしちゃって(笑)。自分でも何のアピールかわからないんだけど「やってるぞ~!」みたいな(笑)。

滝藤:獅童さんはどんだけ怒鳴っても全く声が枯れてなくて驚きました。

中村:白石監督の現場って、俳優がまずはやって、監督が「それいいですね、その方向性でいきましょう」というような感じでどんどん拾って、いいところを引っ張っていってくれるんです。なのでこちらもやりがいがある。なので、まずは思い切ってうるさいくらいやる!それをやらないと、引き出すものがない。特に白石監督はそういうタイプだと思います。

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――村上虹郎さんが「殴り合いにいく戦場のような現場だ」とおっしゃっていたのですが、そういうところからきているんですね。

中村:作風もありますしね。男臭くて昭和のギラギラした感じ。だから役者もギラギラしてる方がいいんですよ。

――そういう作品だと演じていても楽しいですよね。

滝藤:最後の鈴木(亮平)さんを蹴るシーンは痺れました。鈴木さんが「本気で蹴ってくださいよ~痛くもなんともありませんから」ってぎらついた目でおっしゃるんです。いやいや俺の足が痛いから…って(笑)。思い切って蹴りましたけど、一回鼻っ面に当たったときは血の気が引きました。「全然平気です」って言ってましたけど。アドレナリン出まくっておかしくなってる(笑)。それくらい熱量がすごかったです。後からテレビの番組で共演したときに「本気で蹴られて痛かった」って言われましたけど(笑)。

「絶対に死にたくない!」『孤狼の血』シリーズ化への想い

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――改めて『孤狼の血』シリーズはお二人にとってどんな作品ですか?

滝藤:僕は続いて欲しいですね。どんどんシリーズ化して、また何年後かに今度こそ日岡に仕返ししたいです(笑)。

――お二人が出てくると日岡に何か起こるんじゃないかと毎回緊張感が走ってます。

中村:本当ですか?ならいいんですけど…実は今回、まだ観てないんですよ。いつも映画は切符を買って映画館で観るようにしているんです。初号試写に行けるときは行くんですけど、行けないときは公開後に観ています。多分言ったら映像とか送ってもらえるんでしょうけど、家で観るのが好きではなくて。大きいスクリーンで観たいし、お客さんの反応が観たいんです。普段舞台でやっているので、すぐ反応が返ってくるので。それが気になってしまって、自分の作品は2回くらい観に行きます。自分が集中する用のと、お客さんの反応をチェックする用にと。

――今回のお客さんの反応も気になりますね。

滝藤:今の若い子には一周して新鮮に感じるでしょうね。こっちもこんだけ注目されると何か特別な思いが湧いてきますよね!(笑)

中村:ですね。こういった泥臭いタッチの作品はなくなってきているので、これからも白石監督には撮り続けて欲しいですね!

――3作目のお二人にも期待してます!

中村:3作目あったらいいですね。でも東映は『仁義』もあるし、シリーズ化得意ですよね?(笑)

滝藤:(出演し続けれるように)嵯峨で絶対に死にたくないです!

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中村獅童

ヘアメイク:masato at B.I.G.S.(marr)

スタイリスト: Tetsuro Nagase (UM)

取材・文:堤茜子

写真:You Ishii

(c)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

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