政府は4度目の緊急事態宣言を、対象地域を拡大するかたちで小刻みに期間を延長してきた。テレビ朝日政治部の土田沙織記者は、今回の12日間の延長には、今後の政治スケジュールを巡って、ある憶測が飛び交っていると指摘する。
「政府関係者によると『今必要なのは医療体制を構築するということで、そのためには3週間ぐらい必要だ』という考えから官邸主導で12日までの延長を判断したとしている。ただ、この背景には、いろいろな憶測も飛び交っている。これから秋に向けて大きな政治日程が控えていて、衆院解散や総裁選との日程との関連だという見方もある」
菅総理は来月いっぱいで自民党総裁としての任期を迎えるため、来週26日に自民党総裁選の日程を決めることになっている。現状では、来月17日告示、29日投開票の日程で、検討が進められている。
「政府与党の幹部は、『人出の増加につながるので、緊急事態宣言が出ている間に解散は打てないだろう』と口を揃える。なので、まず来月12日に宣言の解除を目指し、そこから17日の告示前までの空白の4日間、この間に総理自らの手で解散に踏み切るための選択肢を残した格好だ。しかし、政府高官も『そもそも9月12日に(宣言を)解除できるかわからない』と話すなど、ここから短期間で収束まで持っていけるかは見通せない。現実的には、9月中旬のタイミングでの解散はかなり厳しく、菅総理が描いてきた解散戦略というのは行き詰まりつつある」
菅総理は他の候補と争わない無投票での再選を目指したいとシナリオを描いていた。しかし、感染拡大を抑制できず、内閣支持率も低迷する中で、自民党内からはさまざまな声が聞こえてきているという。
「内閣支持率も3割を切るなど、危険水域に足を突っ込んでいると言われている状況で、党内には、『菅総理の下で衆院選を迎えることになれば、自民党は大きく議席を減らすことになる』と危機感を持っている議員もいる。また、中堅・若手議員を中心に、『菅総理では衆院選は戦えない』『とにかく顔を変えるべきだ』と強い不満を口にする人も出てきている」
菅総理の再選となるのか、あるいは新たな総裁の誕生となるのか。
「菅総理はコロナ対策で苦戦を強いられており、党の幹部を中心に、『この困難な状況下で、ほか誰に変わったとしても難しいのではないか』『菅総理から顔を変える必要はないのではないか』という声もある。一方で、徐々に出馬に意欲を示す議員も出てきている。26日に正式に総裁選の日程が決まる予定となっていて、党内の駆け引きはこれからさらに激しくなっていく」