「今は非常事態。各国は撤退を急ぐべき」 自衛隊の安全、中国やアルカイダとの関係は タリバン報道官を日本初単独取材
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 イスラム主義勢力「タリバン」の報道官が、アフガニスタンの実権を掌握して以降、初めて日本メディアの単独取材に応じた。現地に向かった自衛隊の安全や日本政府との交渉、女性の権利、中国との意外な関係を語った。

【映像】タリバン報道官を日本で初単独取材

■自衛隊の輸送機の安全は「何の問題もありません」

Q.日本に対する印象は?

ムハンマド・ナイーム報道官(以下同):神の名において、日本国民の皆さんにあいさつを送ります。日本は重要な国であり、世界の発展にも重要な役割を果たしている国だと私たちは考えます。工場も多くあり、いい思想を持っています。かつては問題も抱えていましたが、現在では先進国の一つに数えられています。

私たちは以前から日本と関係を持っています。覚えていると思いますが、私たちの最初の代表団が2012年か13年に日本を訪問しました。私たちと日本はすでに関係があり、将来にわたってこの関係を強化していきたいと思っています。様々な分野において日本の協力を望んでいます。関係の発展と拡大を願っています。

つまり日本は重要な国であり、日本との交流や結びつきを将来に渡って拡大したいのです。

Q.現在、日本政府との接触はありますか? どこで誰と接触していますか?

はい、接触しています。日本政府とは日本大使館や「特別委員会」を通じて交流しています。ヨーロッパ各国との交流もありますが、日本との間にも関係はあります。

申し上げたようにこの交流や関係を拡大し、強化したいと思っています。そして将来日本にはアフガニスタンで建設的な役割を果たしてほしいです。これまでも日本はアフガニスタンの復興や国民への援助に重要な役割を果たしてきました。この援助の継続と拡大を期待しています。

ご存じのようにアフガニスタンでは、40年以上前から戦争が続いていました。そして今好機が訪れたのです。戦争が終わり占領も終わりました。この二つが問題だったのです。今や私たちは安全を享受できるようになりました。日本などにはアフガニスタン国民が苦難を乗り越え、問題を解決する手助けをしていただきたいのです。

Q.(日本と接触したのは)ドーハの日本大使館ですか?

ドーハとカブールです。

Q.カブールの日本大使館は退避したのでは?

ドーハとカブールで連絡があります。

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Q.自衛隊の輸送機と乗員乗客の安全は保証できますか?

はい、私たちの方には何の問題もありません。2020年2月に外国の軍隊を代表するアメリカと合意が締結されました。それ以降、外国の軍隊に協力しています。外国の軍隊の撤退もそれぞれの国民の退避についても、私たちにとっては何の問題もありません。

我が軍はカブール空港の外の安全を確保しています。私たちには何の問題もありません。各国の国民の退避や帰国のための機会を与えています。

■「今は非常事態なのです。各国は撤退を急ぐべきです」

Q.米軍は撤退期限の延長を検討していますが

撤退期限の延長は想定していません。外国の軍隊が駐留し続けることは、彼らのためにも私たちのためにもならないからです。外国の軍隊はできるだけ早く撤退した方がよいのです。米軍と外国の軍隊が決めた撤退期限は8月31日です。彼らが居続けることは想定していません。連絡を取り合っている各国も「我々は自国民を期限までに退去させるべく急ぎ努力をしている」と言っています。

Q.8月末までに撤退が完了せず、米軍の駐留が継続した場合、どうなるのですか?

申し上げた通りそれは想定していません。アメリカやイギリス、日本などの国々には十分な能力があるからです。様々な手段で全力を尽くさなければなりません。撤退を終わらせなければなりません。

連絡を取っている各国も「可及的速やかに撤退作業を終わらせたい」と言っています。彼らがそれを望んでいて、私たちもそれを望んでいるのです。彼らには十分な能力があるのですから、全力を尽くさなければなりません。

飛行機もあるしスタッフもいる。お金もあります。飛行機2~3機を派遣することができるのなら、4機でも5機でも追加すればいいのではないですか。能力も手段もないというのであれば話は別です。問題もないのになぜ全力を尽くさないのですか。全力を尽くして撤退を急ぐべきです。それが彼らのためでありアフガニスタン国民のためでもあるのです。

状況は以前とは大きく変化しました。今は新しい状況になったのです。今は非常事態なのです。各国は撤退を急ぐべきです。問題が起きる可能性があります。既に起きている問題もあります。各国は急がなければなりません。問題を終わらせなければならないのです。

空港内の安全は外国の軍隊の管理下にあります。タリバンは空港の外にいます。状況が変わったことは明らかです。カブール市内も以前とは違います。根本的な変化が起きています。イスラム首長国(タリバン)は事態を収拾しつつあるとはいえ、大きな変化が起きているのです。小さな部分的な変化ではないのです。

Q.撤退期限が過ぎれば自衛隊の安全も保証されないということですか?

日本の軍隊が居続けることを私たちは想定していません。日本の軍隊の数は少ないです。米軍や英軍などのように多数いるわけではありません。どうして長く居続けなければならないのでしょうか。その必要性が分かりません。

今非常にたくさんの人々がカブール空港周辺に集まっています。彼らの中に誰かが紛れ込んでいるかもしれません。残念なことにアメリカやアメリカに協力する勢力は大きな間違いを犯しました。人々に対して(退避を)広く発表をしたからです。今や人々が各州から集まっています。アメリカや日本などにビザもパスポートもなしで行けると思っています。これは大きな問題です。

期限までに終わらせるべきです。時間は守るべきです。日本の部隊と国民は少ししかいません。ですから可能です。

Q.将来について、日本はインフラ投資や農業技術で支援を行ってきたが、今後日本からどのような支援を期待しますか?

日本には支援の継続を期待します。これまでの支援には感謝しています。日本とアフガニスタンの間には歴史的にも関係があることはよく知られています。これまでの支援に感謝していますし、その継続と拡大を望んでいます。それがアフガン国民と日本国民の関係を強化することになり、さらなる発展につながるからです。

■女性の権利は「守られている」「もちろんアフガン社会の信条にのっとって」

Q.女性の権利について、タリバンと海外では認識に開きがあります。その違いをどのように埋めますか?

この違いはイスラム首長国(タリバン)だけのことではなくて、他の国々にもあります。すべての社会、たとえば日本社会にも伝統や習慣、信条があります。日本人に対して我々アフガン人が信じている信条を押しつけることはできません。アフガン人が信じている価値観を押しつけることもできません。

日本人が信じていることをアメリカ人に押しつけることはできません。どの社会にもどの国の人にも独自の文化があります。それぞれの文化を尊重しないということは、世界全体が一つの文化の中で暮らすということになります。それは自然に反することです。私たちは多文化を理解します。それは必要なことで自然なことなのです。

Q.アフガニスタンでは女性の権利はすでに守られているとおっしゃっているのですか?

もちろんです。イスラム教では女性には権利があります。教育の権利、労働の権利、所有権などです。ただしアフガニスタンの人の信条、アフガン社会の価値観にのっとってです。

いまアフガニスタンではヘラート州やクンドゥーズ州などで、女性が学校に行って勉強しています。カブールでは女性がテレビ局で働いています。もちろん他の国の社会の信条にのっとってではなく、アフガン社会の信条にのっとってです。

Q.タリバンは各国政府や機関、メディアで働く人(現地人)の安全を保証すると言っています。しかし現場では殺害や脅迫が起きています。ダブルスタンダードなのでは?

いいえ実際にはそうではありません。アフガニスタンは非常時の状況にあります。特にカブール市内がそうです。カブールは人口密度の高い都市で、人口は600万~700万人です。

今大きな変化があり新しい体制ができました。こんなことが起きれば、先進国や西側諸国でも非常事態宣言が半年ほど出るでしょう。しかし私たちは非常事態宣言を1時間たりとも出していないのです。

かつてカブールでは治安も安全もありませんでした。イスラム首長国(タリバン)が来るまでは、カブールの状況はひどいものでした。日没の祈りの後人々は外出することもできませんでした。日中でもたった20ドルの携帯電話のために殺人が起きました。個人の財産も生命も保証されていなかったのです。

状況は大いに改善しました。いまだならず者の残党がいて、人々に危害を加えたり金を盗んだりしています。ならず者の多くは捕まえました。今後も人々に危害を加えさせないようにします。事件がいくつか起きていますが、それは私たちではありません。現在の状況を利用して人々に危害を加える連中のしわざです。

■中国は「私たちの隣国。近隣諸国というのは強い結びつきがあるもの」

Q.中国のことについてお聞きします。タリバンは先月中国に代表団を派遣しました。中国政府をどのように見ていますか?

中国は私たちの隣国です。近隣諸国というのは強い結びつきがあるものです。どの国であっても隣国との結びつきなしに生きていくことはできません。隣国との交流、結びつき、関係の強化は、世界のあらゆる国において自然なことです。私たちは隣国や地域諸国、世界の国々との良好な関係を望んでいます。そうした関係が将来にわたって発展していくことを望んでいます。

Q.中国政府のウイグル族に対する行為をどう思いますか?ウイグル族はあなたと同じイスラム教徒です

どの国にも公正であるよう勧めることが私たちの政策です。どの国の政府も自国民に対して良い扱いをするように勧めています。なぜなら自国民に対して良い扱いをすることが、政府のためにも国民のためにもなるからです。

しかし私たちは他国の内政に干渉しません。他国が私たちの内政に干渉することも許しません。それが私たちの政策です。

かつての預言者の時代とは状況が変わりました。預言者の時代には一つの国家しかありませんでした。それは単一のイスラム国家でした。現在は50ヶ国以上のイスラム諸国があります。どの国にも国境があり権利があります。

私たちはいかなる場所のいかなる不正や侵略にも反対の声を上げてきました。不正はあってはならないことです。地上のどこでも起きてほしくないことです。しかし他国への内政干渉はまた別の話です。

Q.タリバンがアフガニスタン国内でウイグル族の活動を取り締まる可能性はありますか?

そのような活動をする人たちはアフガニスタンにはいません。私たちには何度も表明してきた立場があります。いかなる個人や集団にもアフガニスタン領を利用して、他国への攻撃を行うことは許しません。

アメリカと合意した通りこれが私たちの立場です。同じように他国にも私たちの内政に干渉しないよう求めます。内政干渉は許しません。これが私たちの政策であり私たちの立場です。

■アルカイダとのつながりは。再び戦闘は起こる?

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Q.アルカイダとのつながりはあるのですか?

アルカイダは旧ソ連の占領の時代にやってきました。西側諸国が彼らを支援してアフガニスタンに連れてきたのです。

地下からトンネルをくぐって来たのでもなく、海から船に乗って来たわけでもありません。彼らは空から飛行機に乗って来たのです。飛行機はどこから来たのでしょうか、どこから離陸してどこに着陸したのでしょうか。

旧ソ連による占領が終わった後、アフガニスタンで内戦が起こりました。内戦を終わらせるために、イスラム首長国(タリバン)が登場したのです。

そして2001年に(米軍による)占領が始まったとき、アルカイダはアフガニスタンから出て行きました。特にアラブの春が始まったとき、アルカイダは自国に帰っていきました。だからアルカイダはアフガニスタンにはいません。いないのですから私たちとは関係はありません。関係がないので、いる必要がないのです。

Q.アフガニスタンにはタジク族、ウズベク族、ハザラ族などの抵抗運動があるが、話し合いが決裂したら再び戦闘が起こるのか?

彼らは今私たちと共闘しています。アフガニスタンのことをご存じですか? 北部地域のバダフシャン、タカール、クンドゥーズ、バルフ、ジョウズジャーン、ファーリヤーブ、バードギース。これらの州ではタジク族やウズベク族と共闘しています。彼らと共に「戦争の首長」たちに対峙しています。団結してイスラム首長国(タリバン)の側に立ってくれています。

各州の解放は北部から始まりました。ジョウズジャーン、クンドゥーズなどの地域から始まったのです。我々は彼らとの間にいかなる問題もありません。

ここは我々の祖国であり我々は団結しています。彼らはイスラム首長国(タリバン)の側についています。彼らは民衆に根ざすものであり、しかもその民衆はすべての宗派の民衆です。

元から問題はないにもかかわらず、残念なことに大げさな噂が出回っています。これは今に始まったことではありません。昔からこういったうわさ話が流されてきました。

アフガン北部の6、7州は最初から、イスラム首長国(タリバン)とともに立ち上がっています。それは今でも変わりません

Q.最後に2つだけ質問をさせてください。.20年以上前にタリバンは国際社会から孤立していました。その教訓からタリバンは何を学びどのように変わったのですか?

人間の人生には様々な経験があります。生きている限り毎日が新たな経験です。この20年間私たちだけでなく世界も、変化と無縁ではいられませんでした。人間の変化は自然なことです。環境や状況への順応のために変化するのは普通です。

我々は軍事的にも政治的にも教育的にも文化的にも、すべての面で経験を積んできました。しかし基本的で普遍的なことにおいては変わっていません。

Q.個人的な質問をさせてください、あなたの年齢と学歴を教えてください

私は1974年生まれです。バルダネカ高校で勉強しその後アラビア語とイスラム科学で修士号、アラビア語で博士号を取りました。

Q.事態が収束したらカブールでお会いしたいです。

歓迎します。

Q.ビザがいるのですが…

…(微笑む)

ABEMANEWSより)

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