「ちょっとお母さんにも申し訳ないと思うんですけど、人工哺育に切り替えるという判断をしました。結構難しいんですよ。やっぱりしないほうがいいので」
6月下旬、大分市の水族館「うみたまご」で、メスのトドの赤ちゃんが誕生した。ミルクを貰う赤ちゃんだが、生まれてからお母さんのおっぱいを飲んでくれず、飼育員は一日中つきっきりだ。
大人はオスで1トン、メスで300キロにもなるトド。神経質で攻撃的な性格もあり、こうした人口哺育は前例がない。しかし、水族館は「守れる命は守ろう」と大きな決断をしたのだ。
「まず1つは母獣から赤ちゃんを取り上げるというのが、大型でお母さんも(赤ちゃんを)守ろうとするので、お互い危険が伴うというところ。人工のミルクとなると、最初おなかに合わなくて下痢になってしまったりというのがあるので、そういったところがかなり難しかったですね」(飼育員の澤田達雄さん)
どんなミルクがいいのか。試行錯誤の末、たどり着いたのは、アシカなどほかの海の哺乳類向けのミルクではなく、犬用の粉ミルクだった。
7月、今度は呼吸ができない状態の赤ちゃんが生まれた。実は去年、この水族館は逆子で生まれたトドの死産を経験した。赤ちゃんの口に差し込まれている管は、「守れる命を守る」と誓った水族館が、トドの死骸から作ったものだ。赤ちゃんは一命を取り留めた。
「今回、『トドでうみたまごが初めて』って言いますけど、それが日本全国の水族館のスタッフ一人ひとりの、汗と涙の結晶ではないですけど、苦労した思い、命を大事にしていこうという思いが、今回の(人工哺育)につながっただろうなという風には思っています」(同)
(『ABEMA Morning』より)