デジタル庁は、マイナンバーカードを使った行政手続きのオンライン化のほか、教育や医療などのデジタル化に向けて、各省庁にまたがるシステム整備を進める。新型コロナウイルスのワクチン接種証明のデジタル化も、システム構築はデジタル庁が担う。
事務方トップのデジタル監には、経営学者で一橋大学名誉教授の石倉洋子氏が就任。政府は当初、ITの専門家を起用する方針だったが実現しなかった。職員は約600人で、うち約200人は民間出身が占める。
デジタル庁の人事担当者からは「霞が関と民間で文化があまりに違うため、カオス(混沌)な状態からのスタート」との声も聞かれるが、今後の課題とは。テレビ朝日経済部の進優子記者が解説する。
Q.デジタル庁が発足したことで今後どのように生活への影響が出る?
例えば、健康保険証をデジタル化して、マイナンバーカードと連携させてスマホを持っていけば健康保険証になるとか、警察庁の運転免許証、オンライン診療など医療のデジタル化、教育のデジタル教科書など。そういったことを各省庁が進める際、これまでは各省庁が外部機関に発注して作っていたが、ITの知識に長けた専門家というのが省内にいなかった。ある種、発注先に丸投げとなってしまっていたものを、デジタル庁が監督して、コストも抑えながら効率的なシステムを作り、省庁で連携していくことを目指す。
ワクチンの接種証明書をデジタル化して、証明できるものを作るというところは年内にやっていくというのが喫緊の課題として挙げられると思う。経済活動が復調していく中で、人の移動がまた盛んに行われるようになった時に、ワクチン接種証明を紙ベースで見せるのではなくて、利便性の高いやり方で、スマホで見せるのかなどどういった形になるかは検討していると思うが、そこのシステム構築もデジタル庁が行っていく。
マイナンバーカードに関しては、今普及率が3人に1人にとどまっている。そこをどれだけ増やしているかも課題になってくる。
Q.デジタル監の石倉氏はITの専門家ではないが、期待される役割は?
1日の発足式で、本人は「私はデジタルの専門家でもないし、エンジニアでもない」ということをはっきりおっしゃっていた。専門分野ではないのはそのとおりだが、大臣の期待の声として、石倉氏は経営学やグローバル人材の登用、組織のマネジメントといったところは非常に専門性が高い。
デジタル庁という本当に新しい組織、これまでの霞が関にはない官民の連合体という組織を発足させる中で、文化の醸成ではないが、違う文化の人たちをどうミックスさせるとイノベーションが起きて、新しい発想が生まれていい政策が生まれるのか。そういったところをマネジメントしていくところについては、非常に期待感を持たれているのではないか。
デジタル庁にはCxOと呼ばれる専門家の方もたくさん入っている中で、現状は全員が男性。その中でいわゆる“わきまえない言動”でチームを引っ張っていくことが期待されているのではないか。大臣も「デジタル庁は脱・霞が関で、これまでの文化を否定することから始まる」と言っている。IT企業の考え方はトライアンドエラーで、失敗から学んで新しいサービスを作っていくような文化だと思う。一方で、霞が関というのは、根回しを重ねて失敗をしないで導いていく文化。ぜんぜん違うものをどう連合体として融合していくのかというところと、これまでの霞が関の固定化した考えを変えられる、新しい風を吹かせてくれるといったところが期待されていると思う。