インターネットテレビ局「AbemaTV」では、テレビ朝日系列の人気刑事ドラマが多数配信されている。AbemaTIMES編集部では、刑事ドラマの魅力や正しい見方を学ぶべく長年の刑事ドラマを見続けてきたご意見番、「男の墓場プロダクション」局長・杉作J太郎氏にお話を伺うことにした。(全4回)
編集部(以下:編):局長、お疲れ様でございます!「AbemaTV」では、人気刑事ドラマが・・・
杉作J太郎(以下:J):幾多の刑事が戦い、命を落としました場所が、この新宿ですから。
だから、ここ成田三樹夫のシマにお呼びしたんですよ。
まず、今の犯人と昔の犯人で大きく違うのが、昔の犯人は必ず「ダイナマイト」を所持してます。
編:な、なるほど…今じゃありえないですね!何故なんですか?
J:『新幹線大爆破』もダイナマイト持ってるじゃないですか。高度成長期でゼネコンやらが建物をどんどん作れでダイナマイトが日常必需品だったんじゃないでしょうね。とりあえず爆破して街を作ってって時代でしたからね。
80年代も相変わらず爆弾魔が幅を利かせるんですよね。
で、その爆弾魔を大事にしたのは石原軍団なんですよ!
編:(笑)。石原軍団自体が捜査といいつつ爆破しまくってましたもんね!
J:そうです。
石原軍団、西部警察には映画『黒部の太陽』で培った技術と経験がありますから(笑)爆破だったら石原軍団は日本で一番でしょうね。誰も敵わないと思いますよ。
あと、『西部警察』の第2シリーズのオープニングでしたかね。もの凄いスピードでパトカーとかが飛んでくるのがあるじゃないですか。あんな恐ろしいオープニングって多分世界のテレビでもないと思いますよ。
スピードが速いでしょう?飛んできて爆発する!って思ったら、全然違う画に逃げるでしょう?あの妹が子供抱き上げたりして。そしたらまた来て爆発して、逃げて(笑)。あのオープニングは怖かった。あれは海外の人も見てると思いますよ。ちょっとスピードが出過ぎてますよ。
編:『西部警察』は第1話から凄かったです!
J:『無防備都市』ですね。しかも、20時から。良いタイトルですよね。
この時、戦車みたいな装甲車を犯人が強奪して都内を走りだすんですけど、犯人がどこに向かうか?ってことですよね。滅多な所いったら撮影も大変だし、どこに行くんだと思ったら、「犯人はテレビ朝日に向かっている」って(笑)。そりゃ簡単すぎるだろ!って。テレビ朝日の中にはNHKのようなスタジオがないんですね。時代劇のちょんまげを付けた人とかがが逃げてましたよ。
編:『西部警察』はサブタイトルもハードコアですよね。やたら「絶命」が連発されてます。
J:グッと入ってきますよね。「殉職」じゃない。
人の命が途絶えることを、今はあんまり「絶命」とは言わないですもんね。
編:西部警察PART2「決戦・地獄の要塞-名古屋篇-」というタイトルも(笑)。
J:スゴイですねえ(笑)。そんなの今じゃありえないですよね。
そういえば、「マシンX」が主人公の回とかもありましたよね。『西部警察』は海外の刑事シリーズに近いかもしれないですね。プラモデルも出てるんで。『太陽にほえろ!』だって、プラモデルは出てないですから。その車が壊れた時があったんですよ。みんなが泣いてましたよ!
編:「マシンX」に時限爆弾がかけられたときですよね。車は仲間だと。
J:柴俊夫とか舘ひろしが号泣してましたよ。泣く前に直せばいいと思うんですけど(笑)。
編:爆発した後、敬礼を皆で・・・
J:そう、マシンにも人格がある。素晴らしいですよね。
マシンの偽物も出てきたこともあるんですよ。偽物の「マシンX」。 長塚京三が作ったんですよ。
編:悪いですね!ニセウルトラセブン的な感じですね
J:そして、悪い事ばっかりするんですよ。すごいスピードで逃げ切れるワケですし。最後どうなったと思います?さすが西部警察ですよ。
本物のマシンXと富士スピードウェイで競争するんですよ。タイマン勝負するんです!そして長塚が負けるんです。すごいドラマだと思いますよ、『西部警察』って。ちょっとスゴイんですよね。
「少年ジャンプ」的なモノも入ってるんですよ。「熱血」とか。ちょっとロマンチックな夢もあるんですよ。だいたい主人公の団長の妹が、少年漫画家でしたからね。「アニキ、警察行っていい?」とか言うんですよ。ネタ探しに。そんなことあるワケないでしょ!(笑)。
編:しかも毎週あんな凶悪事件が起こってるのに(笑)。
J:大門明子(古手川祐子)が漫画のネタ探しをアニキに頼むんですよ。
そして行きつけのスナック、バーがありまして。朝比奈さんっていう謎のおじさんがいましたね。
編:情報屋みたいな人ですよね。
J:バーのカウンターの中の引き出しに謎の電話があるんですよね。
明子ちゃんが「漫画のネタ探しに密売組織に潜入したい」って言ったら、小暮課長(石原裕次郎)が「じゃあ比奈さんに言ったら何とかなるかもしれないな」って言って。
「比奈さんそういうのあるか?」って言ったら、「ちょっとお待ちください」って言って。そんなことあんのか!って(笑)。ちょっとドラえもんみたいな人でしたよ。テレビ朝日ならではですね。
編:寺尾聡さんも凄かったですよね。
J:とにかく銃を撃ちまくってました。
軽々しくバンバン犯人を殺してましたね(笑)。
あれで「ルビーの指輪」とかの後ですから凄いですよ。
編:(笑)!「西部警察」っていうと、やはり大門団長ですね。
J:まず警察に「団長」っていう役職はないですからね。勝手に軍団を率いてるだけなんですから。小暮課長の下の下なので、ひょっとしたらヒラ社員かもしれないんですよ。
ヒラ社員でショットガンをぶっ放してたって事ですよ。
編:あんなヒラ社員は嫌ですね!西部警察も「軍団」、特捜最前線は「特命課」。範囲がよく分からないですよね。
J:そうなんですよ。多分それは暴力団犯罪も扱うからだと思いますよ。暴力団犯罪は4課担当のはずですから。で、そこも見るし何でもやるから「何課」って言ってないんじゃないですかね。今は分かりませんが昔はそうだと思いますね。
だから、一番最初に倉本聰さんがやった『大都会』は、リアルにやったんですよね。あれは『マル暴』なんで4課なんですよ。もしかしたら4課っていうのがそういうものだったのかもしれません。
普通、警察官というのは、地方公務員ですから全国的な規模の転勤はないはずなんですよ。国家公務員じゃないから。ところが「マル暴」のデカだけはもしかしたらあるかもしれないんですよ。
何故かというと、『刑事物語』の武田鉄矢、あの人も全国まわるでしょう?本来ありえないんですよ。刑事が全国転勤になるということは。だから、もしかしたら、あれも暴力団犯罪だったでしょう?もしかしたらあの片山刑事っていうのも、もしかしたら4課だったのかもしれませんよね。でも武田鉄矢が4課の刑事ってのはちょっとイメージがちょっと(笑)
編:ちょっとポップな感じですね(笑)
J:でも、武田鉄矢さんは男の中の男ですよ。高倉健さんともずっとお仕事されてるじゃないですか。で、今度『セーラー服と機関銃 卒業』。あれの特報の見ました?体中にダイナマイトしばりつけて!!21世紀にやる人いたんだ!?ってビックリしましたよ(笑)。
武田鉄矢さんは本当に信頼できるなって改めて思いましたね。我々にとって本当によき先輩だと思いますよ。武田鉄矢は裏切らない。武田鉄矢さんは僕たちを絶対裏切らないですよ。
だってブルース・リー、ジャッキー・チェンのモノマネしたかと思ったら、今度は爆弾でしょう?
編:しかも、この時代に(笑)
J:この穏やかな落ち着いた時代に。あれ下手したらテレビ放送時に全カットですよ(笑)。
編:橋本環奈ちゃんとかびっくりしたでしょうね。
J:ダイナマイト巻き付けるのを見てきてない世代ですからね。怖かったでしょうねえ。
編:『西部警察』最終回の原田芳雄も悪かったですよね。
J:悪かったですね。あの大門が死んじゃうんですもんね。
武田鉄矢の番組にまで乗り込むんですよ。『鉄矢のびっくり外報部』に乗り込んでね。武田鉄矢も「いや、ちょっと待って下さいよ!」とか言って、武田鉄矢もあそこで暴れれれば良かったのに。本当は強いんですから(笑)。無念だったろうなあって、スケジュールの都合なのか、これ以上はできなかったっていう。「ちょっとやめてください」なんていってね。
編:鉄矢は本来は強いですからね(笑)。大門の殉職は団員たちが演技じゃなく本当に泣いたってエピソードを聞いたのですが。
J:石原裕次郎さんも泣いてましたよね。あの時、最後ね。あれはいい最終回でしたね。原田芳雄の犯人グループが良かったですよ。
最終回に相応しいワルでしたよ。原田芳雄、小林稔侍、倉田保昭ってメンバーでしたからね。
編:大門軍団か特殊部隊じゃきゃ戦えないですね(笑)。
J:倉田保昭と武田鉄矢は同じとこにいたんですけどね。だから、「お願いします」って感じで、もう1回(笑)。あそこで武田鉄矢やるわけにはいかなかったのかな~って思ってね。2人の戦いやってほしかったですね。
あの時の原田芳雄の犯人も、当時の犯人はよくやってましたけど、オープンリールの録音機で音楽聴いてたんですよね。オーディオセットが豪華なんですよ。だからお金のかかるオーディオを持っている奴はまず犯人なんですよ。で、大抵クラシック聴いてるんですよ。
豪華なオーディオセットでクラシックを聴いてると犯人。
編:当時の犯人グループはクラシック流しがちでしたね!
J:ロックな犯人も中にはいましたけど、こと重大犯に関してはクラシックでしたね。
西部警察は小樽に「西部警察ワールド」というテーマパークがあったんですよ。すばらしかったです。