もしジャスティン・ビーバーのヒット曲「What Do You Mean」が1985年にリリースされていたら?ネット上でリミックスされた音源が話題になっている。

「What Do You Mean」といえば軽快なハウス寄りのダウンスサウンドで昨年売れに売れたナンバーだが、1985年verという勝手リミックスでは、どこか懐かしい青春バラードに大変貌。ショボい打ち込みドラムにいかにもデジタルなピアノ音だが「元の曲がこれだったのでは?」という位の完成度で一気にネット上で話題になり、数週間後にアップされた「Love Yourself "VHS" Version」もアーバンなブラック・コンテンポラリー風に魔改造されているが、これもオールドファンにはたまらないアレンジだ。

この「85年のジャスティン」はTRONICBOXというユニットの作品。メディア「noisey」に答えたインタビューによるとカナダ・サスカチュワン州に住む、ジェリー・シェンというソフトウェア開発者/ゲーマーのプロジェクトとのこと。音楽経験は高校のジャズバンドや、大学でサックスをかじっていただけというミュージシャン畑とは無縁で、つい3ヶ月前にOMI というアーティストの曲をポルカ調にアレンジしたのがネット上でスマッシュ・ヒットし気を良くし、アリアナ・グランデの「One Last Time」の85年大ヴァージョンからこの80sシリーズがスタートした。

ちなみに彼のアレンジした「What Do You Mean」の後半で聴ける「いかにも80s」なサックスも自ら吹いているそうだが、そもそもこのアレンジ「マイケル・ボルトン(80年代後半?90年代初頭に大ヒットしたアーティスト)のパワーバラードを意識した」そうで、演奏は、ジェフ・ローバー、チャック・ローブ、デイヴ・グルーシン、ヴィニー・カリウタといったR&Bのバックで弾いていたフュージョン系のミュージシャンをイメージしたというから大変な才能である。

彼自身は80年代より後に生まれた世代だが、ゲームに親しんできたこともありヤマハのシンセサイザーDX7の音色やゲーム・ミュージックやR&Bなど自身の時代の音楽と、ジャズコードへの造詣など複合要素がこの「80年代風サウンド」を完成させたと分析。ネット系コミュニティーから生まれたヴェイパーウェイヴのムーブメントのように、若者の中で静かに盛り上がるレトロカルチャーへの憧れも根底にあるようだ。ジェリー・シェン自体は、エリック・マリエンサル、グレッグ・ベイルやケニーGといったスムース・ジャズが好みと明かしているから面白い。

ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のテーマやザラ・ラーソン「Never Forget You」なども、昔なつかしいキラキラしたギター・ポップやシンセサイザー風味でネット上にアップされるなど、現代のヒットナンバーを昔風にリミックスした「80年代回顧」的なネタは数多くみられる。

これならEDMや今風のリズムについてこれないオジサンやオバサンたちも「あれ?意外といい曲じゃないの」とすんなり受け入れることも出来るから、現代のアーティストにとっても幅広い層に知ってもらえる切っ掛けとなりそう。

90年代に突入したあたりから急に色褪せて「古臭い音」とダサさの象徴のように言われた80sサウンドだが、意外な形でリバイバルブームが一気に来ても今や誰も驚かないだろう。

ARTIST SPECIAL:ジャスティン・ビーバー | AbemaTV
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ジャスティン・ビーバー特集
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