MOSS VILLAGEこと神奈川・藤沢を拠点に活動するRHYME&B(DINARY DELTA FORCE)とSHEEF THE 3RD(BLAHRMY)が初のコラボアルバムをリリースした。タイトルは「D.O.B.B.」。日本のヒップホップシーンに新たな足跡を刻んだMOSS VILLAGEの現在が描かれている。「D.O.B.B.」とは? 彼らは今何を見ているのか? 2人の話を訊いた。

MCバトルで負けたモヤモヤを曲にした(SHEEF THE 3RD)  

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ーーRHYME&BさんはなぜRHYME BOYAから名義を変更したんですか? 

 RHYME&B:単純にもうボーヤとか名乗れる歳でもないっていう(笑)。 

 ーーRHYME&BさんとSHEEF THE 3RDさんが2人でアルバムを作ったのは、今回の『D.O.B.B.』が初めてですね。 

 RHYME&B:今年(2016年)の1月くらいにシーフ(SHEEF THE 3RD)が「ソロを作りたい」って話してくれて。そこからソロアルバムを出す前に、2人でミックステープみたいの出したいねって話になったんです。 

 SHEEF THE 3RD:その前にバトルの話があるでしょ。 

 RHYME&B:そうだ。年始にMCバトルがあって2人とも良いとこまで行ったんだけど優勝はできなくて。 

 SHEEF THE 3RD:俺らはそのバトルで自分たちがイケてないとは思わなかったのに負けちゃったんですよ。だから「なんで全然通用しないんだろう?」みたいなモヤモヤが残りましたね。

 RHYME&B:やっぱりバトルの瞬間だけでは表現しきれない俺らの言いたいことがあって。 

 SHEEF THE 3RD:バトルが終わってB(RHYME&B)と地元に帰ったんだけど、2人ともそのまま家に帰れるテンションじゃなかったからヤサでそのモヤモヤした思いを曲にしたんです。 

 RHYME&B:そうそう。その曲はビートのクリアランスの問題でこのアルバムには入れられなかったんですけど、2時間くらいですぐに作れた。こんな感じでできちゃうなら「アルバムもすぐ作れるんじゃない?」ってなって、ミックステープじゃなくアルバムを作ろうって話に発展したんです。

 NAGMATICが提案してくれた(RHYME&B)

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 RHYME&B:当初は、2000年初頭くらいにNEPTUNESとかJUST BLAZEがやってたアジアンテイストな中近東風サウンドでコンセプトアルバムを作ろうって話してて。それで俺らはアルバムのトラックを聴かせてもらいにナグ(NAGMATIC)の家に行ったら、一瞬で方向性が180度変わった(笑)。

 SHEEF THE 3RD:今回のアルバムに入ってるムーディな感じのトラックを聴かせてきたんです。

 RHYME&B:ナグは「最近はこういう感じの曲が無理なく作れるんだ。(2人のアルバムを)こういう感じでいくのはどう?」って提案してくれて。 

 SHEEF THE 3RD:それがガッツリハマったんですよ。俺がBと話す前にイメージしてたのがまさに今回のアルバムみたいなフィーリングで。今までのDLIPにはなかったちょっと聴きやすいというか、ユルくてムーディなサウンド。こういうのがやりかった。 

 RHYME&B:ダイナリ(DINARY DELTA FORCE)のハードな感じとか、BLAHRMYのドープな雰囲気とかじゃない、ユルくて気持ちいい感じ。ナグの家でトラックを聴いてからアルバムの匂いは一気に固まっていきました。

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SHEEF THE 3RD:ドブ。うんこみたいな、カスみたいな状態になってることですね。Bの弟のJUNYA FIREが言い出した言葉で。奴に「今何してんの?」って電話したら、「……DOBB(ドブ)だね」みたいな(笑)。そしたら、あいつらが自分たちのことを「DOBB DEEP」って呼び出したんですよ。 JUNYAはスケーターで、アイツはスケート。俺はラップ。コレが無きゃクソな特殊な集団って感じで、ドブみたいだけどそれはカッコいい。最低の環境に光が射すというか。 

 ーーアルバムジャケットもそういうイメージです。 

 SHEEF THE 3RD:そうですね、まさにドブに光が射すイメージ。地元のライターのBams.に描いてもらいました。で、JUNYAたちは「DOBB DEEP」のTシャツを作ったりしてて、その動きを見て俺は藤沢っぽいなって思ったんです。俺らの新しいスラングっていうか。ちょうどアルバムを作ってる時に「DOBB DEEP」のムーブメントがあったから、「今回はドブでいこうか」って。 

 ーーリリックからは「DOBB DEEP」な藤沢から、ヒップホップで上がっていこうという思いを感じました。 

 SHEEF THE 3RD:ドプから音楽で上がっていこうっていうのはすごく意識したけど、「ヒップホップで」とか「地元」って部分は俺はそれほど考えなかったな。「D.O.B.B.」は俺の超リアルっていうか、自然体が特に出たアルバムです。Bはどう? 

 RHYME&B:俺は半々くらいかな。抜けてるのもあるしムキになってる曲もあるよ。このアルバムは緊張と緩和が自然と交錯した。自分自身もドブの真ん中にいて、もっと良い状況に持って行こうっていうせめぎ合いがいろんな曲に散りばめられてますね。

上がっていきたい(RHYME&B) 

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 RHYME&B:予期せぬハプニングがちょいちょい顔出して来るって感じですかね。 

 SHEEF THE 3RD : 『DEADLINE』がまさにそのことを歌った曲です。曲作ってる時にまぁ色々ありまして。Bが曲の中で言ってる電話の感じとか超わかるって感じ。 

 RHYME&B:俺らの周りでは滅多に起きない事なんで、『DEADLINE』はそのギリギリ感が出ちゃっていると思います。 

 SHEEF THE 3RD : あの曲で歌ってるように「これ以上出せない被害者」みたいな気持ちになってくる。 

 RHYME&B:だけど最終的には「全部プラスに変えて行く」って気持ちが込められてます。テーマこそ全曲違うけど。 

 SHEEF THE 3RD:そっちのほうが大きい。ナチュラルに色々変えていきたい


LoveとHateが交錯してる

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ーー『TAKE ME OUTSIDE feat. MILES WORD』はどういうテーマで書いた曲ですか? 

 SHEEF THE 3RD:俺はラップして、ライブして、音楽すればいろんなところに行けるっていう気持ちで歌いました。 

RHYME&B:今の藤沢は2人にとって居心地が悪くて『TAKE ME OUTSIDE』って気分なのかって、僕はこの曲を聴いて思ったんです。 

 SHEEF THE 3RD:俺はそういう思いで歌詞を書いたわけではないけど、藤沢にいづらいなっていう思いはありました。今回作ってる最中にも、「藤沢イケてねえな」って思うことが結構あったし。そういう思いが無意識に出てたのかも。 

ーー2人は藤沢を上げていこうっていうより、DLIP Records.として自分たちのスタイルを極めていこうという意識が強いんですか? 

RHYME&B:いやそこは連動してる。だけど、長く地元でやってるが故に良い面も悪い面も見えてきちゃった。アルバム2曲目の『BIGVILLAGE STAGE.2』ではそういうことを歌っています。仲間の逮捕をきっかけに藤沢にまつわる良い事と悪い事が浮き彫りになった。 

SHEEF THE 3RD:アルバム出したらいろんな人が寄ってきて、俺らはすごい友達が増えてような気になってた。でも現実はそんなことなかったっぽいなっていう。もしかしたらただ俺らが浮かれただけなのかもしれない。現実ですね、「そういうことだよね」っていうか。 

RHYME&B:俺らは藤沢をディスってるわけじゃなく、“MOSS VILLAGE”は今第2面に突入したって言うだけですね。プラスでもマイナスでもなくLoveとHateが交差したSTAGE.2に今は居るってだけです。 

SHEEF THE 3RD:俺はむしろ全然プラスだと思ってるよ。 ーー進むべき道にいるということですね。では最後に第2面に突入した“MOSS VILLAGE”で2人は今後どんなふうに活動していこうと思ってますか? 

SHEEF THE 3RD : いろんなイケてる人達に会いたい。各地のイケてる人達と遊んでると「このノリ、藤沢に持って帰りたいな」って感じることがあるんです。自分がイケてるヤツになれれば、藤沢もイケてる街になる一番の道だと思う。藤沢はホームだから、やっぱりイケてる街でいてくれたらアガります。 

RHYME&B:同感ですね、気の合う奴等ともっと面白い事企んで藤沢から発信し続けたいです。 

インタビュー・テキスト:宮崎敬太 

PHOTO:小原弘樹

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TITLE:D.O.B.B 

 LABEL:DLIP Records. 発売中 

 【TRACK LIST】 

 1. INTO THE DOBB 

 2. BIGVILLAGE STAGE.2 

 3. DOBB LIGHTS 

 4. サンパールFEBRUARY 

 5. La La La (feat. JAMBO LACQUER) 

 6. 80's 

 7. TAKE ME OUTSIDE (feat. MILES WORD) 

 8. LIFE 

 9. MUSIQUAL MASSAGE 

 10. DEADLINE (feat. 祀SP) 

 11. HIP HOP BI***  

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