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 森友学園をめぐる文書改ざん問題で揺れる財務省に新たなスキャンダルが加わった。12日発売の週刊新潮が、財務省担当の女性記者に事務方トップの福田淳一事務次官がセクハラ発言を繰り返していたことを報じたのだ。さらに同誌は、女性記者が録音した会話の音声データをネットにアップした。

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 福田次官は”セクハラ発言”について明確に否定。翌13日、麻生財務大臣は「事実とするならば、セクハラという点ではアウト」とコメントしたものの、「今の段階で考えているわけではない」と、直ちには処分しない考えを示した。一方、社民党の福島瑞穂副党首は「財務省の事務方のトップがこんな下品なことを言って、力を使って女性の記者に迫っていると思うと本当にひどい」と憤った。13日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、政治家や霞が関を巡る取材の問題点について議論した。

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 朝日新聞記者、AERA編集長の経験を持つ浜田敬子・BUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長は「こんな露骨なセクハラは聞いたことがない。今の時代、民間企業なら一発で辞めないといけない。職場で冗談だったとしてもダメ。しかも2人きりという状況。情報を持っているという点で取引先とのような力関係があるパワハラでもある」と話す。

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 「森友問題もどんどんリークが出てきているが、国会や記者会見で全部喋るかといったら、そうはならない。そうすると、やはり夜に役所の人を回ったり、地検の捜査幹部を回ったりしないと、真相は分からないまま。それは日本だけではなくて、例えばアメリカでも情報を取る時には夜に携帯電話で幹部に連絡したりする。表で話さないようなことを取っていかないと、真相には迫れない」と話した。

■特ダネを取るために、こんなことも…

 「男性は危険も感じないし、飲みにも行ける。自分だけが情報を取れるかもしれない、断れば情報が回ってこないと思うと、女性記者は頑張ってしまい、呼び出されたら夜でも行く。この女性記者も眠い所を起こされ、でも男性の先輩と一緒に行くと会えないと思って、一人で行ったんだと思う」。

 浜田氏は自身の記者時代を振り返り、「情報を取りたかったので、夜に県議にアポイントをとると、指定された料亭の部屋には県議1人しかいなかった。二人きりだとは思わなかった。"送っていくから""いやいいです"という押し問答をした。相手は怒らせてはいけない情報源なので、仕方なく送ってもらうことにしたが、自宅がバレるのは嫌なので、家から離れたところで降りようとした。すると手を握られた。"明日早いので""バレたら大変ですよ"とやんわりとかわした。多くの女性記者がそういう経験をしている。単身赴任の官僚の官舎に夜回りで行かなければいけないこともあった。"自分は一人暮らしだし、疑われるから人目のあるところで"と言ってくれる人もいるし、携帯で情報をくれる人もいる。でも、そこまで仲良くなるためにも苦労する」と話す。

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 取材対象から情報を得たいジャーナリストとのせめぎ合い。番組が取材したところ、女性記者の中には、カラオケで昭和アイドルの歌を要求される、飲み会では下ネタを聞かされる、さらには「ホテルで勉強会をしよう」と誘われる、最終的には露骨な"誘い"に発展するケースもなどもあるという。

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それだけではない。女性記者だけではなく、男性記者の中にも、女性政治家から深夜に「悩みがある」と電話がかかってきたケース、元日に新年の挨拶を求められるケースもあるという。

・合コンを組まされる

・週末ゴルフコンペのお誘い

・知人の独身女性を紹介させられる

・女子アナと飲みたいと言われる

といった要求、コンサートのチケットを頼まれる、会食名目で領収書を切らされるといった事例もあるという。

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 浜田氏は「とくに大物政治家の番記者になった男性記者は忠誠を誓うという意味で、家に通い詰める中で引っ越しを手伝ったり、庭の草むしりをしたりすることもある」と話す。

■報道機関に問題はなかったのか?

 視聴者からは、女性記者が自社ではなく週刊誌に録音を渡したことへの違和感を表明する意見や、記者教育に問題はなかったのかを問う意見が寄せられた。

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 浜田氏は「情報を取れなければ記者としてダメという烙印を押されてしまうし、実力でネタを取ったとしても"女を武器にした"と社内で言われることもある。私が新人記者の頃にも、女性記者の方が情報を取りやすいから行ってこいと言われたことがあるし、女好きだという噂がある人に各社がこぞって女性記者をつけた、という話も聞いたことがある。私たちもやはり情報が欲しいという野心があった。もちろん性被害があれば届けたかもしれないが、会話だけなら酒の席の下ネタに付き合うということで飲み込んでいた。しかし、時代の変化がある」と指摘。「去年からアメリカで『#MeToo』という運動が起きてきている。メディアで働いている女性たちも勉強会やっているが、私たちの世代が"そこまでして情報は欲しくない。やめてください。訴えますよ"と言わなかったから、後輩たちがこういう目に遭っているのではないかという反省がある。きちんと会社に相談し、会社も相手を訴えるなどの対応を取っていれば、今のように女性記者が甘くみられることもなかっただろうと思う」とコメント。

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 元経産省キャリアでコンサルタントの宇佐美典也氏は、「福田次官の言動はおかしいし、やめるべきだと思う」としながらも、「役所には記者会見もあるし、取材を申し込めば対応する。裏で情報を取ろうとしているという意味では、お互いに"魚心あれば水心"だし、それが世の中的に推奨されているとも思わない。基本的には法律違反の行動だ。また、社員を守る義務は一義的に会社にあるから、新聞社が財務省に申し入れるが筋だと思う。こういうことが起こる背景には、マスコミの体質にも問題があるのでは」と指摘。記者と官僚が二人きりで飲みにいくことやリークによって報道と権力が相互に牽制しあう関係、情報公開制度や記者クラブ制度にも問題があるとの見方を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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