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 2018年は佐藤健year!今年春のインタビューで、20代最後の年の目標は「働く」、「20代の自分を刻んでおきたい」と語っていた佐藤健(29)。その宣言通り、映像作品に立て続けに出演。テレビドラマでも『半分、青い。』『義母と娘のブルース』に同時期に出演し不器用な優男とナルシストなダメ男、真逆の役柄を熱演、改めて演技力の高さを世間に知らしめた。しかし9月でどちらも最終回を迎え“佐藤健ロス”に苦しむ人も続出……が、そんなファンに朗報! 10月に佐藤健がスクリーンに帰ってくる!

 今回、佐藤が主演を務めるのは映画『億男』(10月19日公開)。共演者に高橋一生黒木華池田エライザ沢尻エリカ北村一輝、藤原達也と豪華な顔ぶれが揃い、そのことでも注目を集める同作だが、メガホンを取ったのはなんと大友啓史監督!『龍馬伝』『るろうに剣心』シリーズで佐藤の役者としてのうま味を知り尽くした大友監督が、約4年半ぶりのタッグで佐藤を抜擢したのは3000万円の借金を抱え、宝くじの配当金3億円を学生時代の親友に持ち逃げされてしまう男・一男役。イケメンっぷりを封印した“ダサい”男・一男を佐藤はどのように演じたのか、豪華俳優との共演、立川志らくから指導を受けたという落語シーン、久々の大友組の感想などじっくりと話を聞いてきた。

一男は「ダサおもしろい人」

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ーー最初に脚本を読んだとき、どのように感じましたか?

演じる前提なので、一男ってどういう人なんだろうというのを考えながら読みました。一男のキャラクターをどこに設定して演じるのが一番この映画にとっていいのか、そこがミソ、課題だなと思っていたので。

ーーその課題については、大友監督と話し合いましたか?

はい。大友監督の現場は決定稿がポーンときてクランクインするということはほぼないんです。最初に台本をいただいてから、(大友監督と)「もっとここはこうした方がいい」とか一男のキャラも含めて話し合って、どんどん台本をブラッシュアップして、やっとクランクインするという感じでした。

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ーークランクインの頃には一男のキャラクターを掴み切って?

今回はちょっと特殊で、今年の1月にモロッコに行ってクランクインしてから2か月半くらい空いて東京パートの撮影が始まりました。なので、(最初は)「まずはモロッコで雰囲気つかもうよ!」という感じでした。そこで僕だったら一男、一生さんだったら九十九、大友監督だったら映画の全体のトーンだとかを探りに行っていたという感じです。

ーー結果、一男はどのような人物だと捉えましたか?

ダサおもしろい人になったらいいなと思って演じました。一男はいわゆる“普通の人”の役なので、振り幅があるというか、どういう人にもできたんです。もっと暗い人にもできたし、もっとうざい人にもできた。でも、今回はお金がテーマの作品で、“欲”を描く。そうするとどうしても薄汚い印象になるので、それをどこか滑稽さのあるコメディのシーンにできたらいいなと思ったんです。欲に支配されている一男がどうしようもないなって笑えるシーンになったらいいなと。だから(一男は)普段だったら抑えがちなところも、あえて感情的にしてみたり。“感情的=滑稽”だったりするので。そういう風に、だらしない、どうしようもないと思いながらちょっとウケると思ってもらえればなと思いました。

楽しみにしていた大友監督との再タッグ「まさかこういうテーマでやるとは」

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ーー大友監督とは『るろうに剣心』以来の再タッグ。楽しみにしていたファンも多いと思います。

僕自身も楽しみにしていました。大友監督とは絶対他にもやりたいと思っていて、「『るろうに剣心』やっちゃったから次何やろう」ってお互いに話していたんです。(『るろうに剣心』が)終わってからもちょくちょく会う機会があったので。でも、まさかこういうテーマでやるとは思っていなかったので僕としては驚きました。“『億男』で大友監督”というのは意外でしたけど、こうやって声をかけていただけたことは嬉しいし、いろんな縁があってのことなので、普通に楽しもうと思って参加させていただきました。

ーー大友監督と会っていたというのはご飯を食べに行ったり?

『るろうに剣心』での映画祭もあったし、実は何度かお会いしていたんです。普通にご飯を食べに行ったこともあります。

ーー大友組の現場に戻ってきたな、というような感じはありましたか?

懐かしいなというのは思いました。大友組みたいな規模感の現場はそうないので。

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ーーモロッコのシーンはあまりにも壮大すぎて一瞬CGかなと思いました。モロッコでの撮影期間はどれくらいだったんですか?

モロッコでの撮影は実質4日間くらいでした。

ーータイトですね!では、モロッコの街はあまり楽しめず?

ゆっくりはできなかったです。ただ現場の中で観光名所はまわったみたいな感じはあります。一男と九十九が旅行しているというところを撮っていたので、僕たちもモロッコは初めてだし、本当に観光しているところを撮ってもらいました。きっと休みで訪れていたとしても動き方は変わってないかと思います。

高橋一生の演技に痺れる「シンプルに九十九を見ているだけだった」

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ーー今回は佐藤さんの“受け”の演技を堪能できる作品。個性的なキャラクターがたくさん登場しますが、彼らと対峙する上で気をつけられた点はありますか?

あまりないです。僕自身、「今日は北村さんの日だ」みたいな感じで(共演を)楽しみにしていました。それで「お~こう来たか」ってお芝居を堪能し、「今日は藤原さんの日だ。楽しみ!」ってなる繰り返しでした。何が出てくるかは僕も現場に行くまでわからないので、特に構えていくことはなく楽しんでやっていました。言うなれば僕が最初のお客さんと言いますか、そんな感じでした。

ーーお気に入りのシーンは?

原作を読んだときから競馬のシーンが面白いなと思っていて、そのシーンが実写でできたっていうのが嬉しかったです。「それがお金の正体!」という北村さん演じる百瀬のセリフがあるんですけど、なるほどって思いました。北村さんもだいぶ楽しんで演じられていました。毎回芝居も同じじゃなくて、いろいろ試されていたので、それも楽しかったです。

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ーーモロッコで九十九から「起業したい」と打ち明けられたときの一男の反応がかなりリアルでした。一男と九十九は“昔からの親友”といった雰囲気がばっちり出ていましたが、高橋一生さんはどんな方でしたか?

一生さんとはモロッコで初めましてで、僕は初めてモロッコで九十九を目撃したんですけど、そこでまず痺れたし、こういうキャラクターの成立のさせ方があるのかとびっくりしました。久しぶりにシンプルにうまい人に会ったと思いました。モロッコの一男の“受け”の演技がいいと言ってくれるのも、完全に一生さんのおかげです。僕自身はどうしようということはなくて、シンプルに九十九を見ているだけだったので。

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ーー『バクマン。』で悔し涙を流すシーンがアドリブだったと以前話題になりましたよね。今回も娘のバレエを見て涙するシーンがあり素晴らしかったです。今回もアドリブですか?

台本には書いてなかったです。

ーーでは自然に?

実はあのシーンに“感情的クライマックス”を設定していたんです。脚本を読んだときに、どこにクライマックスを持っていくべきかということを話し合っていて、感情的ピークはあそこにあるべきだと。だからこそ、あのシーンに入る回想がめちゃくちゃ大事だという話をしていました。あそこで万左子(黒木華)が本心をポツリポツリと話し出すんですけど、最初はそれを一個前のカフェのシーンで全部言うことになっていたんです。でも、やっぱりあのバレエのシーンで言い出した方がいいんじゃないかとか、そういうようなところから話し合っていました。結果、(一男の)全部の“気づき”をあのシーンに集中することができて、芝居もやりやすかったです。

立川志らくの落語指導にテンションアップ「これは佐藤健として教わっておこう」

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ーー劇中では落語のシーンもあり、その指導は立川志らくさん。そこまでも豪華なキャスティングなのかと驚きました。志らくさんの落語指導はいかがでしたか?

そもそも僕は落語家さんにリスペクトがあって、まさか自分ができるなんて、と思っていました。でも今回、落研(のシーン)でちょっとやらなければいけない。でも九十九は落語の天才だから一生さんはマスターしないといけないけど、僕は言ってしまえば、(九十九のような設定はないので)そんなに必要ない。逆にこの映画の中で一男の落語が上手すぎると邪魔になるなーと思っていたので、僕は3秒くらいそれっぽい瞬間が切り取れたら十分だなと思っていたんですけど……でも、指導が立川志らくさんと聞いて、「まじか」と思って(笑)。僕は映画のために練習する必要はないのですが、志らく師匠に直々に教わる機会なんて一生ないのだから、これは佐藤健として教わっておきたいと思いました。正直エゴです。一旦一男は置いといて、佐藤が落語を勉強するという。それで、がっつり8分くらいのセリフを覚えて志らく師匠に会いに行って、シンプルにただ見せました。(志らく師匠が)結構褒めてくださったので、さらに調子に乗り、さらに練習して、ただただ自分のために練習して(笑)。とってもいい機会でした。

ーー志らく師匠は厳しかったですか?

全然。とても穏やかな方でした。けど、むやみやたらに褒めるんじゃなくて、「ここが足りない」とか的確に言ってくださいました。自分に何が足りていないのかとか、普通の喋り方と落語の喋り方の違いは何なのかとか、実際にやって見せてくださったので、わかりやすかったです。

『半分、青い。』とかぶった撮影期間 役の切り替えは?

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ーー『億男』の撮影期間は『半分、青い。』とかぶっていましたよね。以前、会見で「映画撮っている最中に鈴愛が結婚してた」って言っていたのは『億男』のことですか?

そうですね。これのために鈴愛は涼ちゃんと……。って、それは嘘だけど(笑)。鈴愛が涼ちゃんと結婚することは最初から決まっていたんですけど、これがあって僕は5週か6週くらいスケジュールを渡せなかったです。

ーー『半分、青い。』の律と一男は真逆の役。5週空くと律に戻るのは難しかったのでは?

律に戻るのはそんなに苦労しなかったんですけど、どちらかというと律から一男にいくまでが大変でした。本当に期間が空いてなかったので、直前まで「高校生に見えない!どうしよう!」って、必死に若作りをしていた男が、次は8歳の娘がいるパパに見えないといけないから、てんやわんやでした(笑)。

ーーどちらもばっちり見えていました! 『半分、青い。』『義母と娘のブルース』『億男』と子役と共演する作品が続いています。『半分、青い。』のかんちゃんがにゃんこスターのものまねをするのを見て、佐藤さんが爆笑する動画がバズっていましたが、お子さんの相手もお得意なのでしょうか?

上手かどうかはわからないです。ただ僕の持論なんですけど、“子どもが得意”っていうのはよくわからなくて。子どもだって人間なんだから、普通に友達でも合う合わないがあるように、子どもでも合う合わないっていうのはあるんですよ。僕はかんちゃんとすごく相性が合った。だから、子どもが好きというか、俺はかんちゃんが好き。でも、最近は子役ちゃんが可愛いなーと思うようになってきました。『ぎぼむす』の“チビみゆき”とかもとんでもなく可愛いし、今回の“まどか”、娘ちゃんもめっちゃ可愛かったし。みんなとってもいい子でした。

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ーー大人と変わらないように向き合う、その姿勢が子どもに伝わっているんでしょうね。素敵です。最後に、『億男』をどういう方に観てもらいたいですか?

一男は一般的な生活をされている、“世間”というものを投影できる役割だと思っています。観ている方が一男に感情移入して、一男を通してお金を考える、お金を通して人間を考える。そういう時間をこの映画で過ごしてもらいたい。特別な人ではなく世間の皆様にこの映画を見てほしいなと思います。

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ストーリー

 兄が3,000万円の借金を残して失踪して以来、図書館司書の一男(佐藤健)は、夜もパン工場で働きながら借金を返済している。妻・万左子(黒木華)は度重なる借金の返済に苦心し窮屈に生きることしか選んでいない一男に愛想を尽かし、離婚届を残して娘・まどかと一緒に家を出てしまうのだった。そんな踏んだり蹴ったりの一男だったが、突然宝くじが当たる。当選金額3億円!これで借金を返せるだけでなく、家族の絆を修復することができるはず。だがネットを見ると、宝くじの高額当選者たちはみな悲惨な人生を送っているという記事ばかり……。怖くなった一男は、大学時代の親友であり、起業して億万長者となった九十九(高橋一生)にアドバイスを求めることにする。久しぶりの再会と九十九プロデュースの豪遊に浮かれて酔いつぶれた一男が翌朝目を覚ますと、3億円と共に九十九は姿を消していた――。

 3億円と親友のゆくえを求めて、一男のお金と幸せをめぐる冒険が始まった。九十九の家のパーティで出会った“あきら”(池田エライザ)と名乗る女性を頼りに、かつて九十九と起業した仲間=“億男”と呼ばれる億万長者たちに九十九の手掛かりを探る。ギャンブル好きの実業家:百瀬(北村一輝)、マネーセミナーの教祖:千住(藤原竜也)、10億円を隠し持つ主婦:十和子(沢尻エリカ)……。クセ者ぞろいの億男たちを渡り歩く“地獄めぐり”に翻弄される一男。お金、友情、そして家族。すべてを失った男が最後にたどり着くのは?お金とは何か?幸せはどこかー。

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映画『億男』は10月19日(金)全国東宝系にてロードショー

(c)2018映画「億男」製作委員会

写真:You Ishii

テキスト:堤茜子

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映画『億男』公式サイト
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映画『億男』公式サイト
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