「人間の頭は自分で完全に支配できない」ベテラン将棋棋士が提言、思考が止まる「空白の時間」との付き合い方
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 何手も先を読む究極の頭脳戦・将棋。長時間に渡り集中力を持続し、深く考えることで1局を終えた時には数キロ痩せるほどの体力を使うとも言われている。若い棋士であれば、その長時間対局にも“全集中”で乗り切れるだろうが、年齢を重ねてくるとそうもいかない。「人間の頭は不思議で、自分で完全に支配はできない。頭からお尻まで集中はできないんですよ」と語るのは、ベテラン棋士・中川大輔八段(52)。不意に思考が止まってしまう「空白の時間」とも、付き合いながら戦っているという。

【動画】棋士に訪れる「空白の時間」(8時間23分ごろ~)

 中川八段が、この「空白の時間」について語ったのは11月7日に行われた竜王戦七番勝負第3局1日目のこと。聞き手の千葉涼子女流四段(40)とともに、白熱のタイトル戦を見守っていた。挑戦者の羽生善治九段(50)が熟考している様子を見ながら、2人で語り始めたのは、思考が止まる時間帯のことだった。

 千葉女流四段が「少し休みやリラックスというか、ぼーっとする時間がないとですよね」と語りかけると、中川八段は「年齢が来ると、空白の時間が出るんです。読み筋を忘れちゃう。これが1分将棋とか急所の局面で来ると、とんでもないことになるんです」と答えた。「若い時にはなくても、年齢が行くと出てくる。この空白の時間を、自分で来ないようにしないといけないんです」とも続けた。

 考える、集中するには体力がいる。加齢が進み衰えれば、それは持続せず途切れる。それが「空白の時間」だ。将棋においては時間をゆっくり使えたり、さほど選択肢がなかったりする局面ならまだしも、1手のミスで大きく形勢が左右する難解な局面、そして勝負が決する最終盤にこの時間が来ては、いくらリードをしていても全てが台無しになる。否が応でもやってくるのであれば、せめてそのタイミングをコントロールできれば…。そういう考え方だ。

 中川八段は「私は何回も経験しています。来ちゃうものはしょうがないから、できるだけ押さえつけてコントロールするんです。緊張の時間が長くなるから来る。だから緊張を解いてリラックスしないといけないんです」と、オンとオフの切り替えを提案。「若い時は(初手の)7六歩を突く時から、(詰めの)頭に金を乗せるまでずっと集中できた。相手より考えられて無敵だと思ったけど、今は全然続かない。ベテランになると空白の時間だらけになる」と苦笑いしながら語り続けた。

 集中できる時間とできない時間。このコントロールは将棋に限った話ではないだけに、話を聞いていた視聴者からは、ためになるといったコメントが多数寄せられ「プロでも空白の時間ってあるんだ」「年を取ると不都合が出てくる」など、様々な感想も出ていた。

ABEMA/将棋チャンネルより)

ベテラン棋士を襲う「空白の時間」とは
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棋士が語るマニアック解説
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