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 「君に届け」「ユリゴコロ」の熊澤尚人が監督を務める「おもいで写眞」が、1月29日に全国公開された。熊澤監督のオリジナルストーリーで、東京で夢に破れた主人公・音更結子が祖母の死をきっかけに帰郷。お年寄りと写真撮影を通じ触れあうことで人生に希望を見いだす、心温まる人間ドラマだ。

 同作で主演を務めるのが深川麻衣。2016年6月に乃木坂46を卒業後、2018年2月に初主演映画「パンとバスと2度目のハツコイ(以下:パンバス)」でスクリーンデビューを果たした。その後も連続テレビ小説「まんぷく」(NHK)など数々の話題作に出演。満を辞して臨んだ2度目の映画主演、深川に胸の内を聞いた。

自分の意思を伝えることが出来るようになった

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 「おもいで写眞」は深川が所属する芸能プロダクション・テンカラットの設立25周年を記念して企画された作品。脇を固めるのは高良健吾香里奈井浦新、古谷一行、吉行和子といった豪華役者だ。それゆえ、撮影前は独特の緊張感に襲われていたという。

「事務所の記念となる作品で主演を務めさせていただけたのは、すごくうれしかったです。一方で責任感というか、必ずいい作品にしなくてはいけないとプレッシャーも感じていました。撮影前はどうしても不安になってしまうんですけど、そればかり考えるとどんどん沼にハマってしまうタイプなので、緊張から自分を遠ざけるように意識しながら、目の前の撮影に集中しました」

 初主演作「パンバス」の撮影からおよそ2年が経過した。今回の現場で何か自分自身の変化を感じたことはあったのだろうか。

あの頃と比べると『私はこう思います』と自分の意思を監督に伝えることが出来るようになりました。『パンバス』は初めての映画撮影でしたし、どうしても受け身になってしまって…けれど、今回は主演として自分が立たせていただくことに責任を持つというか、最後まで“いい作品にしよう”と試行錯誤していました」

 撮影中、深川は共演する高良と香里奈の人柄に触れ、刺激を受けたという。「香里奈さんは周りの状況がよく見えている方。そっとドリンクを差し出してくれたり、人への気遣いが本当に素晴らしかったです。高良さんは私の撮影中の“内側の焦り”に気づいて、ホッと和むような言葉を掛けてくれました。私もいつかあんな風に後輩を包み込んであげられるようになれたらって思います」。

怒りの感情を出すのが難しかった

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 結子と深川は同い年で共に29歳。結子との共通点について、深川は「境遇が似ている」と語る。

「私は静岡から、結子は富山からですけど、田舎から夢を追いかけて東京に出てきました。結子は東京での仕事が思うようにいかなかったり、おばあちゃんが亡くなったことがきっかけで帰郷するんですけど、上京する過程に親近感を覚えました。それと私も結子ほどではないのですが、頑固なところがあったりするので(笑)、そういうところが似ていると思います」

 確かに結子は勝気で融通が利かない性格。演じる上で苦労した点について聞くと「怒りの感情をどこまで出すのかがすごく難しかった」と振り返る。

「特に足の悪い老人の柏葉(雅俊)さんを車で置き去りにするシーン。いくら柏葉さんの過去が結子の嫌な過去とリンクしてしまって、激昂したとしても、足の悪い人を置き去りにするほどの怒りはなかなか自分の中から出てくるものじゃないので…そこは1番悩んだシーンでした」

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 映画ではそんな結子がお年寄りの“おもいで写真”を撮る仕事を始め、さまざまな人と出会いながら成長していくさまが描かれる。深川自身が“おもいで写真”を撮影するなら、どこで撮るのだろうか?

「私の地元は静岡・磐田市で、実家は田んぼに囲まれています。天気がいい日に辺りを見渡すと稲がさらさら~と揺れていたり。そんな風景が昔から大好きなので、今だったらその田んぼをバックに撮りたいですね。それが変に背伸びもしていない、自分らしい写真なのかなって」

 最近は新型コロナウイルスの影響もあり、帰郷出来ていないという。未だ収束する気配も見えずこのご時世でなかなか難しい部分はあるが「いつか仕事で帰れたらうれしいです」と前を向く。

「郷土愛はすごくあります。振り返ってみると、静岡関係のお仕事はそんなにやれているわけではないので、もしお仕事で帰れたりしたら、両親に対しても親孝行になるのかなって思います」と微笑んだ。

どんな現場でも楽しむことを忘れずにいたい

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 撮影したのは一昨年の6月頃。タイトなスケジュールの中、梅雨の天候ともに戦いつつ、無事クランクアップを迎えた。ロケは全て富山で行ったが、深川は「とにかく地元の方があたたかく迎えてくださった」と振り返る。

「ある日、撮影をしていると隣の家のお婆ちゃんが縁側に出てきて『冷やしトマト食べる?』と差し入れしてくださったんです。そういうささやかな地元の方の優しさがうれしかったですね。最後の写真展のシーンにはそのお隣のおばあちゃんの写真も飾ってあるんです。富山の方の全面協力があってこそ完成した映画だと思います」

 忙しいスケジュールの中、オフの時間には地元の料理も楽しんだ。「富山の食べ物はどれも美味しかったです。撮影が早く終わった日に、回転寿司に行ったんですけど、そのクオリティの高さにびっくりしました。食が活力に変わっていたと思います」と笑った。

 事前にカメラの練習も行った。「写真を撮るのは昔から好きで普段はスマホかフィルムカメラで撮影しています。でも、一眼レフは使った事がなかったので、カメラマンの方に道具一式をお借りして、公園で練習していました」。

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 深川にとっても数々の思い出が詰まった大切な作品となった。「観てくれた人が大切な人や場所について改めて考えるきっかけになったら幸せです」と力を込める。

「年齢によっても作品の感じ方は変わってくると思うんですけど、例えば結子みたいに忙しくて、家族と連絡が取れていないとしたら、『久しぶりに電話でもしてみようかな』とアクションを起こしてくれたらうれしいですね」

 3月に30歳の誕生日を迎える。深川が芸能の仕事を始めたのが20歳で、芸能生活も10周年。節目の年を「思い出に残るような大切な1年にしていきたい」と意気込む。

「変わらずお仕事に一生懸命取り組みつつ、どんな現場でも楽しむことを忘れずにいたいですね。これまで共演して“素敵だな”と思った俳優さんはどこか自然体で、カメラの前でも“その人らしさ”が滲み出るような方。私もそんな風に思ってもらえるような女優になりたいです」

 もうすぐ乃木坂46を卒業して丸5年が経つ。当時から自然体な姿が魅力だった深川が、今後も着実に、女優の階段を上っていく。

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取材・テキスト:中山洋平

写真:藤木裕之

スタイリスト:原未来 / MIKU HARA

ヘアメイク:山下景子 / KEIKO YAMASHITA

『おもいで写眞』

1月29日(金)全国公開

出演:深川麻衣、高良健吾、香里奈、井浦新、古谷一行、吉行和子

監督:熊澤尚人

脚本:熊澤尚人 まなべゆきこ

原作:『おもいで写眞』熊澤尚人(幻冬舎文庫)

主題歌:安田レイ「amber」(ソニー・ミュージックレーベルズ)

製作プロダクション:スタジオブルー

配給:イオンエンターテイメント

(C)「おもいで写眞」製作委員会

公式サイト:http://omoide-movie.com

乃木坂46時間TV アベマ独占放送「はなれてたって、ぼくらはいっしょ!」
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