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現在『ましろのおと』を月刊少年マガジンにて、連載中のマンガ家・羅川真里茂さん。彼女の存在を一躍世に知らしめた代表作『赤ちゃんと僕』のTVアニメ版が、AbemaTVのなつかしアニメチャンネルで放送中。TVアニメは1996年に放送をスタートし、全35話を放送した。

主人公、榎木拓也(えのき・たくや)は小学5年生。彼のお母さんが亡くなったことで彼の日常に、「赤ちゃん」である弟の実(みのる)の存在が大きくのしかかる。ソフトウェア会社の課長職を務めるパパを助けるため、実の世話を拓也がみることになる。かわいいはずの弟なのに憎らしくなったり、心を救われたりと一喜一憂する拓也の心情を中心に、リアルな人間ドラマが描かれている。

「リアルな人間ドラマ」といっても、ただ重苦しい話がつづられているわけではない。コミカルに進むストーリーの中では、日常にあるようなリアルな問題を取り上げており、それが視聴者と拓也の心をシンクロしやすくしているのだ。拓也が苦しいとこちらも苦しくなり、涙を流せばつられて泣いてしまう。ここからはそんな本作の真骨頂を味わえるようなおすすめのエピソードを2つご紹介する。

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母がいない「お兄ちゃんと弟」の関係性がリアル

拓也と実の置かれた現状がわかる第1話。仕事で忙しい父に代わって、学校終わりから拓也が世話をしているのに、実は泣いてばかりいる。赤ちゃん特有の甲高い声は近所にまで響き渡り、ご近所のおばちゃんから「拓也くんがしっかり面倒見てれば、こんなに泣かないわよ」と言われ、拓也は打ちのめされてしまう。若いママさんは泣き止まない赤ちゃんに悩んだ経験があるだろうが、それが小学生の拓也にふりかかったのだ。だが、ある事件の直後、必死に自分にしがみつく実を見て、拓也は実がさみしくて泣いていたと気づく。母のいない状態がつらくて自分の心に向き合ってばかりの拓也に、赤ちゃんの実はさみしかったのだ。第1話は「赤ちゃんと僕」という榎木家の現状をみごとに教えてくれるエピソードだ。

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「お兄ちゃんなんだから」を禁止したくなる! お兄ちゃんも子どもだ!

第4話の実は、お絵描きが好きになり何にでも落書きしようとする。拓也がアルバム整理中に見つけた、赤ちゃんの拓也とママの写真。なんとその写真に実が落書きしてしまうのだ! 怒りを抑えられず、思わず実の頬を叩いてしまう拓也。時間を置き頭が冷えて、実に対する怒りも収まっていく。だが、頭ではわかっていても、ママとの思い出が大切なだけに、実を簡単に許したくないのだ。お兄ちゃんとして普段しっかり面倒をみていても、拓也もやっぱり子どもだとわかるエピソードだ。『赤ちゃんと僕』では、榎木家だけではなく拓也の同級生の兄弟も登場し、しばしば「お兄ちゃんだから」、「お姉ちゃんだから」という問題がふりかかる。マンガやアニメによってあらためてその問題が描かれると、うかつにその言葉が言えなくなるようなリアルさが、この作品にはあるのだ。

リアルタイムで『赤ちゃんと僕』を見た世代は、大人になったことで新しい視点で楽しめる作品だ。お子さんがいるなら、家族をコミカルかつリアルに描いた『赤ちゃんと僕』を、ぜひいっしょに鑑賞してほしい。エピソードを語り合うことで、家族としての新しい会話が生まれるきっかけになるかもしれない。

■放送スケジュール

『赤ちゃんと僕』

月~金 6時30分/18時30分~ なつかしアニメチャンネルにて放送中

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(C) 羅川真里茂/白泉社・ぴえろ

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