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 日本時間の12日午前10時過ぎ、歴史的な対面を果たした米朝首脳は13秒の固い握手を交わした。去年まで互いを「病んだ子犬」「老いぼれ」と罵り合った2人だが、トランプ大統領は「私たちは素晴らしい関係を築けると確信している」、金正恩委員長は「我々の足を引っ張る過去もあり、そのような慣行が時には我々の目・耳をふさいでいたが、我々はすべてを克服してここまで来た」とコメント。会談は敵対し合った過去を払拭し、互いに歩み寄るような言葉で始まった。

 会談を終えたワーキングランチの後、両首脳は予定にはなかった共同声明を発表。アメリカと北朝鮮は平和と繁栄のため新たな確認を構築すること、恒久的で安定した平和的な体制を朝鮮半島に築く努力を継続すること、完全な非核化に向けて板門店宣言を再確認し北朝鮮はこれに取り組むこと、を確認した。

 会談を終えたトランプ大統領は記者会見に臨み、「限られた時間の中で、力強い状況下でお互いを知ることができた。我々は新しい歴史を始め、両国の新たな章を書く用意がある。世界の歴史上でとても素晴らしい日、素晴らしい瞬間だ」と会談の成功に言及。一方、完全非核化については具体的な方法は語らず、「時間がなかった。たった1日だし、数時間集中的に議論したがプロセスはまだこれから始まる」と述べ、さらに非核化の実現には日本と韓国の支援が必要だとした。

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 共同声明に対して、アメリカのメディアには批判的な論調が目立ち、元米政府高官からも「北朝鮮に大幅に譲歩した」と批判する声があがる。トランプ大統領は会談後、シンガポールで米ABCのインタビューに応じ、金委員長を信頼できるのか?との問いに「1年後にあなたが私にインタビューをして、『私は首脳会談で間違いを犯した』と言うかもしれないね。私たちは高いレベルで(話し合いを)行っているんだ。たくさんのことが変わる可能性がある」と答え、物議を呼んでいる。

 トランプ大統領もギリギリのところで会談に臨んでいたのか。東京工業大学准教授の西田亮介氏は、このトランプ大統領の発言について「質問に対して理由は説明していない」と指摘しつつ、これまでとは間逆のアプローチを取って会談を実現させたことを評価する。

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 「大統領のリーダーシップによって、トップダウンで決めていくというスタイルを貫いている。これまでの交渉は、事務方が一通りお膳立てを行って最後にトップがある種の決済を行うようなものだった。これまでのアプローチとは間逆の方法を取っていて、元米政府高官の方からすると面白くないないという部分もあるのだと思う。彼らは金委員長に相当するような人たちと会談をセッティングすることはできなかったが、今回できてしまった」

 また会談の最中、トランプ大統領が専用車「ビースト」を金委員長に見せたり、作成したVTRを披露したりした場面については「こういった文化を持って国際政治に影響を与えるやり方を、軍事力の“ハードパワー”に対して“ソフトパワー”と呼んだりする。随所にアメリカ的な価値観を見せていたのかもしれない」と述べた。

 気にかかるのは、記者会見でトランプ大統領が述べた「(朝鮮半島)非核化の費用は日本と韓国が負担するだろう」「拉致問題への取り組みは進められるだろう」という発言。日本にもボールが回ってきたようにも思えるが、西田氏は「ボールが回ってきたのか、ジョーカーを引かされたのかは悩ましい」とし、「ボールだとこれから交渉を始めるということになるが、日本の手元には交渉するためのカードが何もない。北朝鮮側に日本と交渉したいと思えるような動機があるかというと、今はアメリカと交渉すれば日本は動いてくれるという状況にあると思う。直接やり取りしたいとはあまり思っていないのでは」と懸念を示した。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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