26歳にして40人以上の”父親”に…女性の悩みを救いたいと、結婚後も精子提供ボランティアを続ける男性
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 自身のセクシャリティ、年齢的な事情など、様々な理由から「選択的シングルマザー」を選ぶ女性が増えているという。しかし子どもは女性1人だけでできるものではない。日本の病院の場合、精子提供による妊娠が可能なのは配偶者の同意があり、かつ妊娠できる方法がそれしかない場合のみ。つまり、結婚している必要がある。そのため、海外の精子バンクを利用し、妊娠・出産した選択的シングルマザーもいる。

 そんな中、ボランティアで精子提供を行っています」「筋肉質、二重、学力運動◎」「無償で精子提供いたします」として、SNSを通じた精子提供のボランティアを行う男性たちがいる。その一人が、匿名を条件にAbemaTV『AbemaPrime』の取材に応じた。

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 私たちの前に現れたのは、スーツを着た、スラッとした若い男性・和人さん(仮名・26)。「現在までに、何人くらいに提供を?」と尋ねると、「頻度としては月に10人くらいの方に行うが、いま妊娠されている人も含めて、40数人の子どもがいる」。つまり、26歳にして、遺伝上はすでに40人以上の父親ということだ。実生活では既婚で、1児の父でもある和人さん。「金銭的なやり取りが生じてしまうと法律違反だと思う。妻にも明かしているし、その家族にも説明してきた。友人にも説明してきた」。

 精子提供のボランティアを始めたのは、社会人になってすぐの22歳の頃。仕事が激務で「土日なし、残業150時間以上みたいな。このままだと死ぬのではないか、生命が脅かされているのではないか、そんな時に活力というか、漠然と何かを残さなきゃな、という気持ちが強まってきた」。加えて、学生時代には生徒会長などを務めた経験があっため、ボランティア活動自体が自然だったことも背中を押したという。「月に1、2人と続けていったら、こういう感じになった。最初は利己的な感情でスタートした所があるが、実際に面談をして、困っていること、渇望に接すると、社会的意義が大きいという認識になった。出産したいというのは女性のごく自然な願いであり、叶えていくべきことだと思う。その助力をするということ。しかも比較的負担の少ない形でお力添えできる。選択的シングルマザーだけでなく、無精子症や女性同士のカップルなど、色々な方々が困っている状況がある。そこに対して肉体的負担の少ない中でお力添えをすることで、その人たちの人生が大きく変わることにやりがいを感じている」。

 提供の流れについて、和人さんは次のように説明する。「私の場合、ホームページとブログ・SNSを駆使して、ご連絡があった方と面談をして、"お願いします"ということであれば協力する。メールでやりとりする中で、お会いする所までいかないということもある。また、基本的には"シリンジ法"で、精採した精子をシリンジと容器をセットにして、紙袋に包んでお渡しする」。その後、女性が自身で精子を体内に入れるのだ。ちなみに、精子提供ボランティアの中には"タイミング法"といって、排卵予定日に合わせて性交渉を行う形で精子を提供する男性もいるという。

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 依頼者に対し、自主的に性病検査の結果まで開示、「継続的な関係を望まれている方とはメールでのやり取りや、場合によっては子どもと一緒にファミレスなどで話をすることもある。今はもう近所のおじいちゃんみたいな気持ちになっている。仲睦まじくいて、幸せで良かったねと」と話す和人さんだが、あくまでも偽名を貫き通す。「やはり自己防衛というところが一番大きな理由だ。法的に守られていない部分もないとは言えないので、個人を特定され、攻撃とは言わないまでも、養育費の請求などのリスクはある。僕自身がリスクをもたらすような人間になってはいけないというのは大前提だし、それなりの覚悟を持って、安易な気持ちでは始めないでほしい」。

 実際、依頼者には「匿名でのやり取りが多いため、父親が分からないことも」「性病や遺伝的病気など、安全性に欠ける」「(タイミング法の場合)トラブルにつながる可能性」、提供者には「将来的に養育費など支払いが発生する可能性」といいったリスクは避けられない。慶應大学病院産婦人科の田中守教授は医療機関での扱いについて「精子ドナーは、HIVなど検査ですぐ判別できないものもあり、病院では半年間保存したものを使用している(今検査した結果を見ても病気・遺伝的な問題が隠れていることも)。複数に提供した場合、近親間の交配になってしまう可能性も(病院では1ドナーにつき10人までに限定)」と説明する。

 海外の精子バンクを利用し、選択的シングルマザーとして生きる道を選んだ漫画家の漫画家の華京院レイさんは、ネットで精子提供についてのやりとりが行われている現状に苦言を呈する。「日本の法整備がなっていないという証拠だと思う。そういう人がいなくても済むように、日本でも精子バンクという業態を認めたり、別の方法が提供することができるようになればいいのではないか」。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「リスクは確かにそのとおりだが、SNSで知り合うのはもはや普通のことで、例えば性病を持っているかどうか、遺伝子がどうかといったことは誰も知らない。そう考えれば、どこで会おうが、精子提供だろうが、恋愛だろうが変わらないし、法的にきちんと対応することが大事だ。今はまだ和人さんみたいな人が少人数でやっているので善意で成立していると思うが、これが普及すれば、認知の問題などが絶対に出てくる。例えば子どもが和人さんに精子をもらったことを調べあげて、認知を求めてくる可能性はゼロではない。そうなればボランティアは成り立たない。求めている人がいる以上、そうしたことを踏まえた法整備をするべきだ」と指摘。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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