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 安倍総理がきょう午後、第4次安倍政権の発足後、2度目となる内閣改造を行う。一方、"入閣"報道をめぐっては、ネット上には様々な意見が上がっていることについて、ジャーナリストの堀潤氏はどう見るのか。話を聞いた。


 
 就任打診の電話を受ける映像がおなじみですが、政治報道が「定型化」してしまっていますよね。ネット上で「韓国のチョ・グク法務大臣の時くらい、新閣僚について丁寧に報じられるのか?」「果たして速報に意味はあるのか」といった疑問が少なくないのも、政治報道が割に無批判で、検証の部分が少ないことへの違和感、不信感からだと思います。

 "誰それが入閣へ"と速報するのは決して悪いことばかりではないと思います。もちろん、政権側がそういうメディアの体質をうまく利用して観測気球に使うといったことは、アメリカを始めとする欧米でも基本的には変わりないと思いますし、官邸に太いパイプを有するという田崎史郎さんを擁する時事通信が「小泉進次郎氏の入閣は見送られる」という速報を打ってしまいましたが。

 ただ、悲しいのは速報に続く報道の内容です。本来であれば新閣僚の疑惑や過去の発言についても改めて検証し、問い直すべきですが、たとえば菅原一秀経産相については、"学生時代にダンスユニットを組んでいたSAMさんからもメッセージ"とか、キラキラした話が多い。NewsPicksのコメント欄を見ても「おめでとうございます!」と祝辞ばかり。

 内閣改造をめぐる報道でとりわけ象徴的なのは、「入閣へ」の速報をはじめ、小泉進次郎さんに関するものだろうと思います。滝川クリステルさんとの結婚と育休の問題、若さ、"ポスト安倍が近づくのか!?"、そういった話ばかりで、「環境大臣」というポストに注目したものはあまり見かけません。

 これからの環境大臣の仕事がどういうものか。環境問題はもちろん、SDGsなど、グローバルに対応していく上で重要な案件がたくさんあると僕は思っています。それだけではありません。昨日、退任間際に原田環境大臣が"所管を外れることだが"と言いつつ、福島第一原発に溜まっている汚染処理水の海洋放出に言及しました。確かに他国では海洋に放出している国もありますし、東電としても様々な処理方法の選択肢を検討し、メディアも入れて説明しようとしてきました。しかし今回の発言を受け、イギリスBBCを始め、海外メディアは汚染処理水のことを「Radioactive water」(放射能のある水)として報じています。世界的にはそういう印象になっているわけですよね。タンクを置いた福島第一原発の敷地もいっぱいになり、来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて海外からはますます注目を集めるでしょう。まさに関係者がどうすればいいのか、頭を悩ませている状況です。つまり、環境大臣は決して"軽量ポスト"などではないということです。

 当然、小泉さんはそれらを承知の上で環境大臣就任受けたんだと思います。それはある意味、総裁選で石破さんに一票を投じた小泉さんに対し、安倍政権が"踏み絵"を踏ませた、ということなのかもしれません。ここで間違えたら、大きな失点になってしまう。そういうポストを突きつけたわけですから。
 
 今年の3月11日、郡山駅のホームで小泉さんに遭遇しました。「やあ堀さん!」と言いながら手を上げながら歩いてきました。僕も福島には通っている方だと思いますが、それまでも行く先々で小泉さんの写真が飾ってあるのを目にしたり、"こないだ来てくれた"という話を聞いたりしてきました。復興大臣政務官として携わって以降、被災地の問題は彼のライフワークでもあるわけです。おそらく、どの自民党の議員より福島に通っているのではないでしょうか。そうやって地元との関係も築いてきた小泉さんが、原発問題という難しい舵取りを迫られる役職に就く。僕は別に小泉さんを推しているわけではありませんが、"進次郎は実績がないくせに"などと言う前に、彼のそういう部分について知っていますか?と言いたいですし、「環境大臣で入閣」という情報が入った瞬間、汚染処理水の話を真正面から取り上げ得るべきではないでしょうか。

 メディアは社会の"合わせ鏡"ですから、"ひでえ報道だな"と感じるということは、その分だけ社会もひどいということです。テレビ局の方やニュースサイト、ニュースアプリの方々と仕事をしていると、皆さん「やっぱり日韓問題のネタは数字が取れるんですよね~」とおっしゃる。それでも、読者や視聴者を信じて、なんとなく「本当かな」「大丈夫なのかな」と不安に思っている事はしっかり検証しましょう、ということではないでしょうか。(11日、談)
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■プロフィール

1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』(水曜レギュラー)などに出演中。

小泉進次郎氏が意気込み、報道に苦言も
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"総理を最も知る記者"が解説
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