内閣改造の一方で…「日本版NSC」局長が内調トップに交代の“深い意味”
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(5枚)

 11日、第4次安倍再改造内閣が発足した。安倍総理は「今回の内閣はまさに“安定と挑戦”の内閣」とし、19人中17人が入れ替わる大幅な改造となった。

 野党からは「お友達側近重用内閣」「お友達総ざらい内閣」との批判も上がるが、今回の人事にはどのような意図があるのか。東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信氏は“派閥”から見えてくるものがあると話す。

 「今回初入閣した13人のうち、小泉氏を除く12人はそれなりの年齢で当選回数もあるいわゆる“入閣待機組”と言われていた人たち。派閥がそれぞれ事前に推薦を出すが、それに従って安倍総理が入閣させた。“在庫一掃”ということが前回の内閣改造の時にも言われたが、今回も同じようなところは多分にある。派閥構成は、基本的には前回とあまり変わっていないが、石破派からの入閣がいなくなり、ポスト安倍の1人と見られている岸田氏の岸田派が1人減った。近い派閥、そして自民党内のベテラン議員に配慮した地固めといえる。しかし、今回は小泉氏を入閣させることで新しいイメージを打ち出すことに成功した」

内閣改造の一方で…「日本版NSC」局長が内調トップに交代の“深い意味”
拡大する

 安倍総理が目指す憲法改正の実現に向けて、今回の人事はどのように動いたのか。「改憲に向けたメンバーに、安倍総理が自分に近い人を積極的に当てたかというと、そうではない。岸田氏がこれまでの政調会長に加えて自民党の憲法改正推進本部長を兼任することになり、リベラル派の宏池会の代表である岸田氏を前面に立てた形。しかし、ポスト安倍の有力候補をみられている岸田氏にとっては厳しい状況。宏池会OBの中には明確に護憲を訴える人もいて、岸田氏は安倍総理から禅譲を受けるためには派閥内に軋轢を生むし、派閥のことを考えると禅譲が難しくなるからだ」と佐藤氏。

 また、経済産業大臣から自民党の参議院幹事長に就任した世耕弘成氏について、「参議院幹事長は政策形成において重要な役職というわけではないが、憲法改正を見据えれば参議院を取りまとめることは重要。憲法改正の可能性をしっかり残しておこうと考えているのでは」との見方を示した。

内閣改造の一方で…「日本版NSC」局長が内調トップに交代の“深い意味”
拡大する

 では、今回の人事でポスト安倍に近づいた人物はいるのか。佐藤氏は、安倍総理が会見で「10年目の私よりも政治的技術において年季が入っている」と期待を寄せた小泉氏については、「同時に自分自身と重ね合わせて『10年たった頃は小泉純一郎首相に官房副長官から幹事長に任命されたころだった』と話もしていて、まだまだ重いポストを付ける必要があると暗に示しているように思える。安倍総理としても、小泉氏自身としても、もう少しキャリアを積み上げることが想定されているのでは」と説明する。

 ポスト安倍として注目される岸田文雄政調会長については、「幹事長という楽観的な見方もあったが、やはり据え置きということで、もう1回どれくらい頑張れるかということ」と指摘。

内閣改造の一方で…「日本版NSC」局長が内調トップに交代の“深い意味”
拡大する

 さらに、外務大臣から防衛大臣にスライドした河野太郎氏、外務大臣になった茂木敏充氏については、「引き続き入閣だが、防衛大臣というのは基本的には総理候補がなるポストではない。他方、茂木氏はもともと経済産業大臣など経済系の閣僚ポストや、党内でも政調会長を歴任していて、今回外務となると、十分過ぎるキャリアを備えたことになる」との見方を示した。

 一方、厚生労働大臣に返り咲いた加藤勝信氏の位置づけはやや異なるとし、「厚労大臣や一億総活躍といったポストを歴任している加藤氏はポスト安倍の一人だが、キャリアを積ませるというより、すでに経験のある社会保障分野に再び充てられた。ポスト安倍を育てるというよりは、本気で社会保障に取り組むという姿勢の表れだろう。野党は何をやりたいのかわからないと批判しているが、加藤氏の人事を見ると社会保障に重点を置いているように見える」とした。

内閣改造の一方で…「日本版NSC」局長が内調トップに交代の“深い意味”
拡大する

 そうした中、日本版NSC(国家安全保障会議)とも言われる、外交や安全保障に関する政策・国家戦略の司令塔機関でも人事が動いた。傘下の国家安全保障局で、2014年の設立から初代局長を務めてきた谷内正太郎下外務事務次官が、13日付で警察庁出身の北村滋内閣情報官に交代することが発表された。

 佐藤氏は「(日本版NSCは)外交政策の司令塔で、とりわけ外務省と防衛省が中心になりながら動かす。その中で、発足からトップを努め続けてきた谷内氏は、もともと2005年から08年に外務次官を務めていた大物で、だれも替わることができないと言われていたぐらい。そこに外務省ではなく、日本版CIAとも呼ばれる内閣情報調査室のトップを充てるという人事が行われることになった。とりわけ谷内氏以下の外務省が注力してきた北方領土をめぐる日露交渉が事実上失敗に終わるなかで、アメリカやロシアといった大国との外交から、より北朝鮮や韓国への焦点のシフトがあるように思われる。下の方の人事に見えるかもしれないが、こういったところに外交方針の移り変わりのようなものが透けて見える」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

【映像】今回は“ポスト安倍いっぱい内閣”?

今回は“ポスト安倍いっぱい内閣”?
今回は“ポスト安倍いっぱい内閣”?
小泉進次郎氏起用の狙いは
SNSで「報道して」「助けて」
SNSで「報道して」「助けて」
停電続く千葉県鋸南町を緊急取材
柴山大臣Twitterに再び批判
柴山大臣Twitterに再び批判
「昼食時の政治話“適切でしょうか”」
この記事の写真をみる(5枚)