米中の対立が新型コロナウイルスの感染の問題にも持ち込まれている。北海道大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏は、トランプ政権が感染拡大の対策に失敗すれば、国際社会でのアメリカのプレゼンスが低下、逆に中国が浮上する可能性があると指摘する。
 「中国がどこまで野心的になるかは分からないが、ある程度は感染拡大を抑え込んだという自信を持っていて、それを世界に対してアピールをしている。実際、イタリアやイランに対して様々な支援を始めていて、これをチャンスに影響力を獲得するという戦略に転換している。そして、中国は自分たちの権威主義的な政治スタイルがうまくいくのだ、アメリカのような民主主義の体制ではダメだということで、“体制の輸出”も進んでいく。実はアメリカ国内でも、“中国に学べ”というような報道が出てきている。アメリカですら、中国のやり方にすがろうとしているということだ。他方、アメリカは最初から“自国ファースト”で、トランプ大統領も“これは中国ウイルスだ”と言っている。つまり、ウイルスは外からやってくるものであって、それを排除すれば大丈夫だという発想に囚われていた。科学者がいかにちゃんとした提案をしていても、それらを政治家が把握しなければ間違った政策を取ってしまうことになる。アメリカが後手に回った最大の原因も、そこにあると思う」。