ネットの誹謗中傷、責任はどこにある?リツイートの問題点は? 津田大介氏と橋下徹氏が議論
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 死亡したプロレスラーの木村花さんの問題、複数の女性との不倫が報じられたアンジャッシュ渡部建さんに対する投稿など、ネットの誹謗中傷の問題が後を絶たない。

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 6月27日のABEMANewsBAR橋下』では、「あいちトリエンナーレが大炎上した時にはTwitterのアプリを立ち上げると5分に2、300個くらい、1日に数万件の罵倒が来るような状況で、コミュニケーションツールとしてはまともに使えない状況だった」と振り返るジャーナリストの津田大介氏と、「コロナに感染しているかもしれないということで休んでいる時、時間があったから見てみた。あれは精神衛生上良くないね。“金輪際見るか、ボケ!”と書いて、もう見ないようにしている」と話す橋下徹氏が議論した。

■誹謗中傷、責任はどこにある?

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津田:一件一件を見れば批判もあるし、名誉毀損や侮辱にあたるものもある。しかし、それが数万という単位で来るとなると対応することができない。もちろん書き込んでいるひとりひとりに責任があるが、匿名での嫌がらせや誹謗中傷がこれまでも社会問題になっていて、それが法的にも救済されない状況を放置してきた政治の責任とも言える。

木村花さんの問題に関しては、この番組の三浦瑠麗さんが出演した回で橋下さんがフジテレビやNetflixなど、リアリティーショーを制作した側の責任もすごく大きいと仰っていたのが印象的だった。橋下さんみたいにコミュニケーションツールとして自分のペースで使える人はいいが、全部真正面から抱え込んでしまうような人の場合、メンタルを傷つけられてしまう。つまり、タレントが現実に炎上すること自体が話題になる、マーケティングになるという番組作りをしておきながら、木村さんに対するフォロー、あるいは守るということができなかったということだ。

加えて言えば、有名になりたい、SNSのフォロワーを増やしたいということでテラスハウスに出演するひとも多い。だから、それぞれの責任を切り分けて解決していかないと難しいと思う。

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橋下:全て我慢しろ、自己責任、と言うつもりはないが、こういう仕事をやれば、当然みんなから色々なことを言われる。関心の対象になるというのは、それだけのしんどさがあるということだ。僕が30歳くらいでテレビに出始めた頃はSNSが無かったので、誹謗中傷も見えなかった。そこから徐々にSNSが出てきて、言われることにも慣れてきて、今の50歳の僕がある。でも、木村花さんはあの年齢でいきなり誹謗中傷の中にボーンと放り込まれてしまった。それは耐えられないと思う。やっぱり周りが「こういう大変な世界だよ、それでもやりますか?」と丁寧に説明してあげなかったことは問題だと思う。

津田:かつては2ちゃんねるなど、あくまでもアングラな匿名掲示板でボロクソに書かれているだけで、タレントさん本人も見なければ気にならなかったし、今回のようなことにはならなかった。その頃の感覚のままの人たちがTwitterやInstagramにやってきて、本人のコメント欄に直接書き込んでしまう。これが一番大きな変化だと思う。

■「名誉毀損の慰謝料の相場が低すぎる」

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橋下:そうは言っても、表現の自由は大切だ。よく「匿名は卑怯だ」と言うが、権力のチェックや不正を暴いたりする時には匿名での表現も重要だから、それは守らないといけない。そして、何が誹謗中傷か、というラインを引くのは大変だ。だからこそ、この問題で「すぐに規制だ」というのは気をつけなければいけない。

ただ、プロバイダーの情報を開示しやすくするのは賛成。名誉毀損の裁判をやろうとすると、まず相手方の住所を特定するのが大変。プロバイダーとだいたい2往復くらいやって、弁護士費用も含めて3、40万円はかかる。そして、そこからが本裁判だから。何でもかんでも開示するとなるのは問題だけれど、情報開示の仕組みは今のままではダメだ。しっかり作って欲しい。

津田:僕も橋下さんとほとんど同じ意見だ。もう一つ問題なのは、TwitterやFacebookは海外のサービスなので、英語に文書を翻訳してIPアドレスを出してもらい、その上で接続業者に開示請求しなければならない。そこを簡素化するための議論を総務省で詰めているが、1回目で開示ができたんだったら、それを元に日本のプロバイダーもすぐに情報は出せばいいじゃないですか、ということ。

それから、民事訴訟法の問題もある。アメリカのサービスだとしても、TwitterやFacebookは日本法人があるので、そちらに請求すればできるように法改正すれば楽になる。また、プロバイダーのログが3~6か月で消えてしまうので、裁判の間に情報が消えてしまって追いきれなくなる問題もある。ここも1年程度の保存義務を課すようにすればいいと思う。

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橋下:開示請求の申立書を英訳のために費用がかかってしまうからね。それと、根本的な問題として、名誉毀損や侮辱にあたる表現をした場合の賠償金が少なすぎる。

津田:ようやく勝ったとしても赤字、もしくはトントンで、“費用倒れ”を起こしてしまう。数十万円の金銭的負担、数ヶ月の時間、そして精神的負担を被害者が負わないといけない。簡素化の程度にもよるが、裁判費用が半額程度になれば多少は「黒字」が出るようになるので、抑止力にもなると思う。

橋下:僕は事前に「こういう表現はダメですよ」と事細かなルールを決めるのは良くないと思う。名誉毀損や侮辱はわかるが、それ以外の、批判めいたものについてのラインは引けないので、そこは裁判で事後的に解決するしかない。そして、例えば名誉毀損と認定されたら3000万払わないといけないよ、となれば、書き込む側も、「ここまでは踏み込んでもいいかな、ここまでは書いてもいいかな」と慎重になると思う。

■「リツイート」の責任をどう考える?

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 ジャーナリストの伊藤詩織さんは今月、「精神的な苦痛を受けた」として、Twitterの投稿者らに損害賠償と削除を求め、東京地裁に提訴した。伊藤さん側は、誹謗中傷をリツイートした男性2人にもそれぞれ110万円の支払いを求めている。

 実は橋下氏自身も、リツイートによって名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストに慰謝料を求めて提訴。大阪地裁は33万円の支払いを命じ、大阪高裁も被告側の控訴を棄却している。

橋下:僕のケースは、みんなが参考にしている裁判例だ。単純リツイートは誰かが書いた記事やツイートをポチっと拡散しただけであって、責任を問えるのか、無理だ、とみんなが言っていた。しかし、そこらへんに落ちていた誹謗中傷のビラをあちこちに貼ったら責任を追及されるじゃないか、ということだ。中傷ビラを10枚くらい貼ると名誉毀損になる。Twitterの場合、大抵の人はフォロワーが10人くらいはいるだろうし、多い人になれば1万人、10万人といる10万枚のビラを貼るのは明らかにアウトだと思う。

津田:ネット関係の判例も増えてきた。リツイートに近いものでは、まとめサイトの問題がある。「匿名掲示板に書かれていたものを転載しただけ、書いた人に責任があるんだ」という主張に対し、まとめた側も編集しているし、著作物でしょ、ということで賠償を命じる判決も出てきている。タイムラインを見て、どういう文脈でリツイートされているのかを判断し、悪質であれば名誉毀損が認められる流れになっていくと思う。

橋下:当然、相手方にも色々な言い分があって、まとめサイトの場合には“まとめる”という表現行為があるけれども、リツイートは別に独自の表現でもないという主張だ。僕は人のツイートを引用するのは自由だと思うし、「こういう風なビラがあったけど、これについて僕はこう考えるんです」と引用するのも仕方がない。だからコメント付きのリツイートに関しても「論評」であって、責任はないと思う。しかし、僕はTwitterでのデマ拡散の主な原因はリツイートだと思っているから、リツイートをする人はしっかり責任を持って下さいね、ということだ。

津田:デマをそのまま掲示するという責任はある。ちなみに、伊藤さんの件は全てのリツイートに対して、ということではなくて、大量の投稿を精査し、どういう状況で発信されたかということを分析した上で、悪質性が高いものを特定して訴えたのであって、リツイート自体が全て危ない、というわけではない。文脈や悪質さが考慮されるということだ。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)

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