スポーツの「マーケティング価値」とは

 新しい未来のテレビ「ABEMA」は、開局以来、24時間編成のニュース専門チャンネルをはじめ、『今日、好きになりました。』『オオカミには騙されない』シリーズなどのオリジナル恋愛番組やアニメ、スポーツ、バラエティなど、幅広いジャンルのコンテンツを24時間365日放送している。

 また、スポーツジャンルでは「FIFA ワールドカップ カタール 2022」の全64試合無料生中継を成功させ、サッカーだけでなくメジャーリーグベースボール(以下、MLB)や大相撲、格闘技など多岐にわたって生中継を行なっている。

 「ABEMA」では多くのコンテンツを無料で視聴することができるが、その際に重要となるのが広告収益だ。では、スポーツの広告・マーケティング価値とはどういったところにあるのか。

 「ABEMA」で広告プロダクトの開発部門を統括する大久保晶平氏は「スポーツは人の心を動かし、瞬間的なパフォーマンスに注目が集まる。それとセットで広告や企業名を深く記憶してもらいやすい」と分析する。

 加えて、「ABEMA」の調査によれば、スポーツを通じて想起される企業は認知だけでなくブランドに対するエンゲージメントも高いという。ユーザーと広告情報をつなぐ機会として、スポーツは有効な手段の1つというわけだ。

「ABEMA」が提案する新しい広告フォーマット

 そんな「ABEMA」のスポーツコンテンツ特化の広告プロダクトが好調だという。

 そもそも、これまでの日本におけるスポーツを視聴する際の広告フォーマットは、プレーが中断した際に挿入されるコマーシャル(CM)がメインだったが、OTTメディアであれば、インターネット技術の進化を活かして、より柔軟な広告の見せ方ができる。

 そこで「ABEMA」が提案したのが、ライブ中継の中でL字で広告を見せるスプリットスクリーン型と呼ばれるフォーマットの「ABEMA Live Screen Ad」だ。

「今までのコマーシャルブレイクという形式では、どうしてもコンテンツが一度切れてCMが出てくるので、視聴者が一定量離脱することは防げなかった。それが、ライブスクリーンであれば離脱せず、広告にもしっかり注目してくれるという効果がありました」(大久保氏)

 一見、シンプルな仕組みではあるが、離脱しないだけでなく、ライブ中継の視聴を遮らないことで、ユーザーの印象調査でもポジティブあるいはニュートラルな意見が94%を占めているという。加えて、静止画フォーマットでありながらブランドリフト効果が高いという結果が同社の調査で明らかになっており、今後のスポーツ広告における新しいフォーマットとして期待が高まる。

広告の“価値”をAIで検証する取り組みも

 また、「ABEMA」ではこれらの広告効果の検証のため、他社と協業しながら脳科学やAIテクノロジーを導入している。代表例が、脳科学とAIを組み合わせた独自の「NeuroAI」をマーケティングに実装するNTTデータとの取り組みだ。

「ABEMAでは、NTTデータさんの脳活動の予測をAIで行う『D-Planner』というツールを活用して、表示された映像を一秒単位で各シーンのアテンションをヒートマップで可視化し、どこに焦点が向いているのかを分析しました。その結果、中継している左上のエリアから右下にかけたL字の広告部分が、注視度でいうと約2.4倍のアテンションを獲得していることがわかりました」(大久保氏)

 さらに「ABEMA」は、この広告フォーマットのレイアウトについてもパターン別で検証を実施。その結果、左上から右下にかけたL字パターンがもっともユーザーが注視しやすいとわかったという。これらの分析をもとに品質を改善し、この広告についてもすでに提供が開始されている。

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 テクノロジーを用いて価値ある広告リーチを模索し、ユーザー・クライアント・自社の「三方よし」を目指す「ABEMA」。『MLB』が開幕し、本格的なスポーツシーズンが開幕を控える中で、大久保氏は以下のように締め括った。

「コンテンツを無料で届けていくためには、やはり広告収益も大事。ただ広告を配信するだけではなく、広告主の皆様にも成果を返さなきゃいけないと常に考えている。新しい未来のテレビとして、コンテンツの価値はもちろん、AIやデジタルプレイスメントなどテクノロジーの力を駆使して、既存のものにないパフォーマンスを発揮できる広告プロダクトを開発することで、スポーツ産業の発展にも寄与していきたい」(大久保氏)

(写真提供:Brand Summit事務局)