那須川天心「一方的な試合に」キックカウントダウン開始で鈴木真彦に見せつける「格闘技にかけてきた思いの差」

 ボクシング転向を控えた那須川天心、そのキックボクシングでの残された試合はあと3回となっている。カウントダウンの第1戦となるのは、9月23日のRISE横浜大会(ぴあアリーナMM)。メインイベントで対戦するのはRISEバンタム級王者の鈴木真彦だ。

 鈴木は6年前に敗れて以降、打倒・那須川天心への執念を燃やしてきた。昨年11月までに20連勝を記録。29勝17KOと、軽量級トップクラスの攻撃力の持ち主でもある。両者は大会前日の計量で、規定の55kgをクリア。那須川はマッスルポーズでアピールし、一方の鈴木はRISEの伊藤隆代表が「6年間の思いが体に出ていた」というほどの仕上がり。

 勝敗としては、やはり那須川有利を予想する者が多いだろう。昨年11月、那須川への挑戦者を決めるトーナメントで鈴木は志朗に敗れているが、その志朗に那須川は勝っている。 ただ鈴木と志朗ではタイプが違う。ファイタータイプの鈴木の強打が一発でも当たれば...という期待感もある。下馬評を覆す自信はあるし「下馬評が低いほど燃えるので」と鈴木。

 もちろん、攻めてくる相手に“触らせない”闘いをすることも那須川ならば可能だろう。この一戦、那須川がどんな戦略で試合を進めるかがポイントになる。本人もそう思っているのだろう。計量後の会見では「自分だけの試合をする」と語った那須川。鈴木のリベンジにかける思いをどう受け止めるかと聞かれると、こう答えた。

「受け止めるも何も。自分には受け止めることはできないので。勝手にぶつけてきてもらえれば、しっかりはね返すよと」

 非情な言葉だ。それだけ力の差があると踏んでいるのだろう。

「一方的な試合がしたいですね。相手のいいところを出させるつもりはない。長くなったとしても技術の差が出るでしょうし。格闘技にかけてきた思いの差が出る試合になる」

 試合を“作る”のはおそらく那須川。その鉄壁の自信を鈴木がどう崩すか。計量前日には、那須川が大会テーマソングで“歌手デビュー”することも発表。会見でもそのことに対して質問があったが、那須川は「試合に集中したい」とした。テレビ出演も多い那須川だが、自分はあくまで格闘家であるという思いが強い。

「格闘技のことしかほぼ考えてないので。格闘技の妨げになることはしないです。といっても24時間練習するわけではない。時間をうまく使ってやれているので。だから勝ち続けているんだと思いますし。芸能活動も格闘技があるから成り立ってるんです」

 人気者になって格闘技が疎かになるような選手であれば、ここまで来る前に“自滅”しているだろう。もちろん、雑音を封じる一番の方法は試合だということも分かっている。“アーティスト”になった那須川天心は、むしろ格闘家としてもさらに強くなっている可能性がある。

文/橋本宗洋