自民党総裁選でも議論される“対中政策”、元外務審議官・田中均氏は「中国を変えていくという努力をしなければならない」
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 菅総理にとって最後の外遊となった訪米。“卒業旅行”と揶揄する人もいたが、その主な目的が日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国による「QUAD(クアッド)」の首脳会合への出席だ(対面形式での会合は初)。

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 4カ国は“自由で開かれたインド太平洋”の実現に向け、経済や技術、新型コロナウイルス対策などで協力していくことに合意。今後も年に一度、会合を開催していく方針だ。さらにアメリカとオーストラリアは今月、イギリスを加えた3カ国による「AUKUS(オーカス)」を発足させている。AIや量子技術における情報共有を進める一方、オーストラリアの新たな原子力潜水艦導入への支援が行われることも決定した。

自民党総裁選でも議論される“対中政策”、元外務審議官・田中均氏は「中国を変えていくという努力をしなければならない」

 アメリカを中心としたこれらの多国間協力の枠組みの念頭にあるのは、中国による東アジア地域での覇権主義的行動だ。対中包囲網とも呼べるオーカスに対し、さっそく中国外務省の趙立堅副報道局長は「アジア太平洋地域の人々が必要とするのは経済の成長と雇用であり、潜水艦や火薬ではない」と反発する姿勢を見せている。

 27日の『ABEMA Prime』に生出演した元外務審議官の田中均氏はアメリカの意図について「“中国に抜かれるかもしれない”ということに気がついたアメリカは、絶対にそれを実現させてはならない、特に南シナ海や尖閣で攻勢を強めているのをいかにして止めるか、ということをこの2年くらい、本気で考え始めた」と説明する。

自民党総裁選でも議論される“対中政策”、元外務審議官・田中均氏は「中国を変えていくという努力をしなければならない」

 「トランプ前大統領の場合、“アメリカが”中国に交渉し圧力をかけ、制裁をかけるというアプローチだったが、バイデン大統領になってからは、“国際協力として”というアプローチになり、最初に焦点が当てられたのが海洋国家によるクアッドだ。これ自身は防衛構想でも安全保障構想でもなく、気候変動やコロナ対策で協力しようということで、インフラをシルクロードに作るという中国の“一帯一路”構想に対抗するものになることは間違いない。オーカスについては、“戦争するときは3人一緒にやるんですよ”というものだ。私は以前、“一緒に戦争ができるとすれば、どことやるか”とアメリカに聞いたことがあるが、“間違いなくイギリスとオーストラリアだ”と言っていた。彼らは武器の整合性もあるし、共同作戦が可能だ。だからいざというときには軍事的な協力をしましょうということが背景にある」。

自民党総裁選でも議論される“対中政策”、元外務審議官・田中均氏は「中国を変えていくという努力をしなければならない」

 また日本と中国、そして台湾との関係について田中氏は「ぜひ正確なところを説明させてほしい」とした上で、次のように話す。

 「日本とアメリカはそれぞれ1972年に中国と国交を結んだ。そのときも、“一つの中国”は問題になった。自分たちの領土を分割されてきた歴史がある中国としては、台湾も自分たちの領土なんだ、それを認めるかと迫ったわけだ。それに対し、アメリカは“アクノリッジ(acknowledge)”、もし中国が攻撃的な行動を台湾にとったら、場合によっては軍事的に関与するかもしれないよという曖昧戦略。日本は“理解し、尊重する”“だけど日本は平和的な解決に関心がある”と、つまり武力で統一するようなことには合意できないよと、というバランスだ。つまりアメリカにとっても日本にとっても、台湾で戦争を起こさないということが大切だった。そのために何をやってきたかと言えば、台湾に対して独立しないよう、自制を強いてきた。一方、中国に対しては“よしなに”ということだ」。

自民党総裁選でも議論される“対中政策”、元外務審議官・田中均氏は「中国を変えていくという努力をしなければならない」

 こうした経緯を踏まえ、田中氏は「だから今でも“いやいや、もうそれは関係ないんだ”という議論はできないし、我々には台湾がいろんな意味で攻撃にさらされないようにする役割、義務もある。一方で、貿易も中国以外の国とやればいいんだから、付き合うのはやめよう、人も来る必要ないよという極論は取れない」と訴える。

 「経済制裁をかけることで、相手が“分かりました、もう人権抑圧はしません”となればいい。ところが経済制裁をかけて成功したことは一度もない。香港にいる日本の企業や諸外国の企業も、やっぱり香港に留まりたい。もちろん政府は香港の民衆を排除するような動きに対して指摘はする。しかし結果は作れない。それをどう評価するかだが、トータルに関係を断つということはできない。例えばクアッドも“中国包囲網”と言われるが、インドは同時に中国やロシア、イランなどが入っている上海協力機構にも参加している。これも“やっぱり中国やアメリカなどの間で、上手く外交をやっていかないとやっていけないよ”ということだ。

 日本も中国と貿易をして生きていくことになるが、まさにクアッドや日米安保体制で中国を抑止しているわけだし、色々な顔を持っている。ひとつの顔でダメだと言っていては、国益は達成されない。確かに“人権問題を正せ”といってもしない。それでも変わらないと決めつけるのは間違いじゃないかと思う。例えば1970年代の中国の人権抑圧などはひどいものだった。人々も、みんな人民服を着ていた。しかし、徐々に変わっていった。だとすれば、徐々に変わっていくよう努力するしかない」。

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 自民党総裁選の立候補者による議論の中では、対中政策や敵基地攻撃能力、さらには原子力潜水艦の保有の問題も俎上に上がっている。

 田中氏は「オーカスに参加したオーストラリアの場合、イラク戦争でもテロとの戦いでも、その前の湾岸戦争でも、全てアメリカ、イギリスと一緒に戦争をしている。アメリカとしては国民感情も含め、ある意味で軍事的にオーストラリアをコントロールできると思っているわけだ。しかし日本はそうじゃない。すぐに敵基地攻撃能力の話をするが、外交で平和を作るのが日本の役割だ。台湾有事に備えて計画を持っておくのは大事だけれど、それ以上に台湾有事を起こさないことが大事じゃないか。ミサイルを発射しようとしている基地が分かれば正当防衛だということが言えるかもしれないが、今は分からない。また、原子力潜水艦の話も、以前、アメリカが反対したことがあった。やはり核兵器の管理についてのノウハウがないといけないし、日本が直ちに持つという段階ではないと思う」とコメント。

 「小泉さんが北朝鮮に行くとき、アメリカのチェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官はメチャクチャ反対した。彼らにしてみれば“悪の枢軸”に同盟国の首相が行くなんて考えられない。しかし僕らは“我々にはアジェンダがある。あなたたちが拉致問題をやってくれるわけじゃないでしょ”と跳ね返した。イラク戦争のとき、アメリカが一番苦労したのは“国連の安保理決議がないのになぜやるんだ”と激しく詰め寄ったイギリスへの対応だった。そんなことは世の中に出ないが、同盟国、同盟関係というのはそういうものだ。だから日本が一方的に圧力をかけられて何かするというようなイメージをみなさん持っておられるが、絶対にそんなことない。

 もちろん防衛力を強化することには賛成だし、日本が安全保障上の役割を拡大することにも賛成だ。また、アメリカと一緒になって中国を抑止するのは大事だが、同時に中国を巻き込んで変えていくという努力もしなければならないし、アメリカが攻撃力を持ち、日本は防衛力を持つという日米安保体制の“盾と矛”の役割分担を変える必要もない。例えば10年前、日本の貿易相手国はアメリカが1位で、3割以上はアメリカだった。しかし今は5割以上がアジアになっている。そして訪日外国人の80%はアジア人だ。成長率の高い国も中国やインドなど、ASEANの国々だ。つまり日本の経済の反映を考えれば、これらの国々と安定的な関係を作っておかなければならない」と重ねて訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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