やっぱり2大政党制はムリ?衆院選に向け岸田新総裁や議員たちには危機感ナシ? 自民党総裁選から今後の日本政治を占う
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 「国民の声が政治に届かない、あるいは、政治の説明が国民の心に響かない。こうした厳しい切実な声があふれていた。私、岸田文雄の特技は、人の話をよく聞くことだ。丁寧で寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたいと考えている」。きのう、自民党新総裁に選出された直後の会見でそう述べた岸田文雄前政調会長。

 各種世論調査では河野行革担当相の後塵を拝することも多かった岸田前政調会長だったが、なぜ議員票で圧倒的な差をつけ、勝利をものにすることができたのか。

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 日本テレビと共同で実施した事前の情勢調査をもとに、党員票を高い精度で予測したJX通信社の米重克洋代表は「党員票については事前の予想通り河野さん支持が多かったものの、逆に最終盤になっても伸びなかった。それにより“勝ち馬”は岸田さんだよね、ということが明らかになり、態度を明らかにしていなかった議員だけでなく、河野さんに入れる素振りを見せていた議員も、“河野さんに入れるメリットがない”と判断した可能性がある」との見方を示す。

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 また、1回目の議員投票で河野氏の各得票数が2桁にとどまったことについて、テレビ朝日政治部の吉野真太郎デスクは「私も当然3桁は行くだろうと思っていたので、予想外だった。数日前に潮目が変わり、石破さん・小泉さんを加えた“人気者連合”で押し切りたかった河野営のゲームプランに狂いが生じていた。発信力・突破力で攻めようとすることは“諸刃の剣”になるのではないかという見方が党内に広がっていったことは誤算だろう。さらに当日の朝になり各都道府県連の開票状況が漏れ伝わり、“どうも河野さんは党員投票で4割ちょっとくらいになりそうだぞ”ということが議員たちの間に広がっていったことも大きい」とした。

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 慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「コロナが落ち着いてきたタイミングからスタートできる岸田さんはすごくラッキーな方だなと思う。ワクチンの接種率が上がっていったのも菅さんのおかげだし、総裁選に立候補していた河野さんのおかげでもある。しかも論戦を見ていると、新自由主義?何それ?みたいな感じで、岸田さんは具体的なことは何も言っていなかった。危機が去ったから、抽象的なことを言う優しそうな人でいいんじゃない?ということなのかもしれないが、むしろ河野さんは具体策を言っちゃったからこそ集中砲火を浴びたのだと思う。ただ、官僚の多くは“次は岸田さん”ということを前提に動いていた。面白いのは、“岸田さんで大丈夫なの?”と尋ねると、“大丈夫です。僕らがやりますから”と(笑)」と指摘。

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 また、総裁選告示を前に岸田氏が番組出演した際に記した「人の絆の暖かさを感じられる社会」とのフリップに言及、「日本の政治は具体論を言わない人が勝つのだろうか。成長している時代はそれでいいのだけど、日本はこれから人口も経済も縮小していく。今までの成功パターンは効かない」とも話した。

■「このままでは2大政党制は難しいのでは」

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 一方、野党である立憲民主党の枝野幸男代表は「経済を低迷させてきたアベノミクスを否定するのか、それともこれを肯定するのか、そのことについて明確にお示しいただく」、共産党の志位和夫委員長は「安倍=菅“直系政治”。これを選んだというのが今回の結果だと思う」コメントしている。

 夏野氏は「野党は自民党総裁選で失敗したと思う。“自民党総裁選ばかり取り上げないでくれ”と言う割には、メディアに出た代表も全く自民党への対抗策にもなっていない抽象論ばかりで、衆院選にも繋がらないような感じになってしまった。例えば立憲民主党が出した政策を見てみても、昔の話を掘り起こしたみたいなものだった」と批判。

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 吉野デスクは「新総裁選出へのコメント見ていても、野党の側はいまだに安倍さん・菅さんと戦っている。引きずっている感じに見える。また、安倍官邸を取材していた頃、野党側は“私たちは宏池会だったら組めるのに”と言っていたし、今も“河野じゃなくて岸田で良かった”とか言っているが、それは“やせ我慢”だと思う。なぜなら“キャラ被り”してしまうからだ。その“キャラ被り”感を岸田さんが有効に使えれば、やはり自民党が有利になってしまう。早く安倍さんや菅さんと戦うのをやめて、岸田さんと真っ向から戦った方がいいと思う」とした。

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 米重氏は「自民党は総裁選で注目を集め、テレビでの論戦を通じて野田さんや河野さんが野党側にもウイングを広げていること見せた。権力闘争と一緒に、ある意味でのショーをやってしまうことが自民党のすごさだと思うし、それにより支持率も上げてきているので、ある意味で高いジャンプ台から衆院選をスタートできる。そこに野党がどう対抗するかは非常に難しい。

 特に1人しか選ばれない小選挙区では、与野党が支持層を固めた上で中間にいる無党派をいかに多く取り込むか、という争いになる。立憲民主党の場合、枝野さんが代表をずっとやられているので、どんな人なのか、みんながふんわり知っている。その上で支持していない人がたくさんいる状況だ。一方、岸田さんは多くの国民にとってはポッと出てきたこれからの人なので、期待が持てるかもしれない人、ということになり、やはり有利に働くと思う。ここを解決しなければ、いわゆる2大政党制は難しいのではないか」と話した。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「本来は衆議院選挙で国民が審判をするのがメインなわけだし、マスメディアが自民党総裁選をフィーチャーしすぎることが、結果的に自民党を利することになる側面は注意しておいたほうがいいと思う。一方で、本来あるべき姿や信念ではなく、勝ち馬に乗ることで自分の政治生命を延ばそうとした議員たちが集まっているということが見えたという側面もある。また、菅総理は選挙で負けて辞めるわけではないし、菅政権の総括も次の衆院選の意味だ」と指摘。

 「僕は自民党が嫌いだというわけではないし、一緒に仕事することもある。素敵な議員さんもたくさんいる。しかし長い目で見た時に、これだけウイングを広くして、いろんな主張を抱え込める党である以上、相手が弱ければ自民党は負けないわけだ。野党が自民党と互角に戦えるようになるのか、それが10年、20年スパンの大きな宿題だと思っている。野党には自民党の新陳代謝の力を見習ってほしい。はっきり言って、枝野さんはほとんどそれをやっていない。ほぼ独裁だ。普通にやりなよと。あるいは野党連合が政権を取った場合、誰が首相になるのかを投票で決めてみようとなれば、みんなも関心を持てるし、テレビ番組でも扱いやすいと思う」。

■岸田新総裁の“本気度”は人事を見ればわかる?

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 衆院選に向けて注目されるのが、週内にも判明するとみられる自民党役員人事、さらに週明けに控える首班指名(内閣総理大臣指名選挙)後の閣僚人事だ。

 夏野氏は「岸田さんや自民党が本当に衆院選に危機感を抱いているかどうかは、河野さんを入閣させるかどうかでわかるのではないか。派閥の長たちは嫌がるだろうし、そこで見えてくると思う」と、吉野デスクも「人事だ」と応じ、次のような見方を披露した。

 「新総裁会見で、岸田さんはさっそく驚くべき発言をしている。人事について、“叩き台”を作ると言った。“叩き台”だ。つまり、先輩方に“これでよろしいでしょうか”と見せるということだ。本来は岸田さんの専権事項のはずなのに、そういう発言が出ちゃった。帰宅した岸田さんのところに安倍さん、麻生さんと近い甘利さんが入ったという情報から永田町では“始まった”という感じになっているが、岸田さんは総裁選に出た残りの3候補については“ちゃんと処遇をする”とも言っていたので、やはり何らかの形にしなければ自民党はヤバいと考えていると思う。小石河戦略(連合)の石(石破茂氏)、小(小泉進次郎氏)は使われないかもしれないが、安倍さんだってあの石破さんを使った。ここはオールスターを組んで行くと思う」。(『ABEMA Prime』より)
 

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