「前にならえ」「空気を読め」を当然とするニッポン社会に物申す『プリテンダーズ』(10月16日公開)は、SNSを武器に世界を変革しようとする引きこもりのひねくれJK・花梨(小野花梨)が主人公。その生き様に痺れる友人・風子に扮するのが、NHK連続ドラマ『きれいのくに』(2021)、ABEMAオリジナルドラマ『箱庭のレミング』(2021)で類まれなる演技力を見せつけた見上愛だ。デビュー間もない約2年前に撮影された本作でも、キャラクターの喜怒哀楽を見事に表出。初主演映画の公開も控える2021年の飛躍を予言するかのような逸材感すら漂う。まさに新たなる才能の出現。ブレイク直前の本人を直撃した。

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【動画】見上愛出演ドラマ『箱庭のレミング』

 演じた風子は、SNS上でやらせ動画を配信するひねくれ者の花梨に共鳴。SNSの「いいね!」の数字に一喜一憂する。まさにデジタル時代に生きる現代人の承認欲求を具現化したようなキャラクターだ。対する見上は「エゴサーチをすることもないし、SNSでマイナスなコメントがあっても気にしません。私は自己肯定感が高いのか、匿名の『いいね!』よりも自分の『いいね!』を大切にするタイプ。好意的なコメントは嬉しいですが、風子の様にSNSの反応で気分が上がったり下がったりするようなことはありません」と極端にSNSに執着することはないという。

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 自己肯定感が高いのは、自惚れがあるからではない。進むべき道とその先にある目標が明確だからだ。中学時代に演劇と出会い、寺山修司や別役実の世界に心震えた。そのトキメキは色あせることなく現在進行形。ATG映画を彷彿とさせる『プリテンダーズ』でのゲリラ撮影で映し出される見上の絶叫は、ナチュラルボーン女優にしか出せない、演じざるを得ない人ならではの迫力がある。PFF(ぴあフィルムフェスティバル)で一般に初お披露目された際にも、最も注目を集めたシーンだ。

 「渋谷駅前を行き交う人たちに向けてお芝居をしたときは、恥ずかしいよりも戦ってやるという気持ちが上回って興奮していました。しかも思った以上に声が出て、前にも出てしまい。自分の感情の赴くまま、頭空っぽで。気づいたら声が出ていました。今振り返ると凄いことをしたなと…」とその迫力に自分自身も驚いている。

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 飛躍の年になるであろう2021年を見上は「自分の可能性を狭めず、得意・不得意という意識を失くし、色々なことに挑戦していきたいです」と総括する。今最も挑戦してみたいジャンルはコメディで「真剣にお笑いと向き合ってみたい」と意欲的。見上のような本格派が胸キュン学園モノに挑んだらどのような表情を見せるのかも気になるところ。「壁ドンをされたら相手が引くくらいキュンキュンしちゃうかもしれません!」とあどけなさ残る笑顔を浮かべてケラケラ笑う。

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 21歳の誕生日を目前に控えた現在は、仕事と学業を両立中。中学時代からの趣味が高じて、大学では演劇演出の勉強に励んでいる最中だ。「仕事と学業の両立ができているのは周囲の協力のお陰。私的に“土下座タイム”と呼んでいますが、友達にノートを見せてもらったり、先生に理解をしていただいたりと皆さんの支えに感謝しています」と恐縮しきり。

 大学では名前に偽りなく、多くの人たちから愛されている。「大学に入ってから今の仕事を始めたので、大学のみんなは私のことを何者でもない見上愛として受け入れてくれています。クラス全員のスマホの待ち受け画面が私の宣材写真に設定されているというドッキリを仕掛けられたことも…。友達は“なんか女優やってる、ウケる~!”というノリです」と女優いじりに照れ笑い。

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 では家族は現在の活動をどのように見ているのか?「女優業も普通の事として捉えているようです。応援はしてくれているけれど特別視はしていない。両親は舞台観劇が好きで、兄は映画好き。それぞれが批評家としての目で作品を見てくれる。父は作品を見るときは娘としてではなく一人の表現者として私のことを見ているので結構厳しいです。兄は私の人生初舞台挨拶ということで、PFFのチケットを買ってわざわざ観に来てくれました」と家族からも愛されている。新たなる才能の出現として、見上が多くのクリエイターから愛される日もそう遠くはなさそうだ。

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取材・文:石井隼人
写真:You Ishii

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