今年6月に行われた、ドローンによる配送実験。コロナ対応に追われる医療従事者のために片道5kmの距離を飛行、アツアツの牛丼を届けた。
【映像】「ドローン配送」の現在地..2年後に「空飛ぶバイク」実現?
すでに絶景撮影、点検作業、農薬散布など、様々な用途で活用されているドローン。ネット通販やフリマアプリの普及で取扱量が増加、コロナ禍による外出自粛に伴い、さらに増加が見込まれる宅配便への活用も期待されている。6日の『ABEMA Prime』では、ドローンの物流分野への応用と課題について関係者に話を聞いた。
前出の“空飛ぶ牛丼”実験を行ったドローン開発会社「エアロネクスト」の田路圭輔代表は「日本では今、年間50億個の荷物が流通しているが、これが数年後には80億個にまで増えると言われている。そうなればトラックとドライバーだけで処理することが難しくなり、過疎地などへ荷物が届きにくくなる事態も想定される」と話す。
交通の便が悪い農村や山間部などの過疎地域で生活必需品を十分に手に入れることが難しい単身の高齢者などを指す“買い物弱者”は700万人以上に上っており(2014年の経産省のデータ)、エアロネクストでは国内で初めてとなるドローン配送の専門会社を人口706人の山梨県小菅村に設立した。
「多くの関係者に実際に見てもらう必要があると考え、東京から2時間以内のエリアを探したところ、小菅村という素晴らしい場所があることを知った。人口も700人ということで、実際に7〜8割の方にお会いして説明をするなど、丁寧な作業が実現できる環境だというのもいいところだ。
ただ、1件300円でサービスを始めたものの、個宅配送はまだ実現できていない。やはりGPSの精度の問題から、庭先に着陸する時に建物にぶつかってしまうリスクがあるからだ。そこで我々は開けた場所に置き配用のスタンドを設置、そこに取りに来てもらうというオペレーションを実行している。また、小菅村の人口規模でビジネスベースに乗せるというのは不可能なので、そこは法改正やバッテリーコストの改善に期待するところだ」。
テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「昔は撮影のためにいちいちヘリコプターを飛ばさなければならなかったが、行けるところが限られていたし、お金も非常にかかる。テレビ局としてもドローンは便利だ」と話す。
この日も北海道上士幌町ナイタイ高原牧場で個宅へのドローン配送を試みていたという田路氏は「ドローンは空撮用途を中心に広がってきたので、“空飛ぶカメラ”というような言われ方もする。しかし物流の領域で使われている機体はプログラミングによって飛んでいるので、離発着や飛行を含めて全自動だ。GPSとLTEの電波が受信できれば飛行できるし、航空機に近い性能を有するような機体も現れている。商業化を目指すにあたっては、コストの大きいバッテリーがカギになるだろう」と話した。
こうした事例は各地で始まっている。香川県の株式会社かもめやでは、今年8月からドローンを用いた物流事業をスタートさせている。瀬戸内海に浮かぶ粟島にいる利用者が四国にある契約店舗に商品を発注。商品は港の発着所から4キロ離れた粟島の発着所へドローンにより輸送され、最後はスタッフが利用者へ届ける仕組みだ。
事業戦略室室長の宮武周平氏によると、配送料は500円で、午前中に注文すれば、午後には届く当日便だ。このように、離島向けにドローンが定期運行される
事業は世界でも初の試みで、現状では採算を取るのが難しいものの、エリア拡大を目指す。
また、今年設立された楽天と日本郵便の合弁会社が長野県白馬村の山岳エリアでドローン配送の実証実験をスタート。航空法に基づき補助者なしで1m以下の高さから荷物を投下する方法での往復配送も、国内初めての試みだ。
一方、日本の住宅地においては騒音や防犯上の課題を指摘する声もある。ドローンなどの最新技術について法的な観点で研究している国際基督教大学の寺田麻佑上級准教授によれば、法規制の整備もこれからだという。
「人口集中地区を飛ばす可能性があるのであれば、許可をもらわなければならないし、事故が起きてしまう可能性もある。また、人の土地の上を飛ばすということは、所有権問題への抵触、さらにカメラが撮影した画像データに関連したプライバシーの問題の懸念もある。バッテリー切れによる落下や、飛行中の障害物への衝突、ものをぶつけられるといったことも考えられる」。
その上で寺田氏は「もともと首相官邸への落下事件が起きてから始まったというのが日本のドローン規制だ。技術の進歩も著しいので、規制もそこに合わせて変えていかなければいけないし、河川法、公園法、自治体の条例などとの兼ね合いもある。様々な実験が成功していけば、おそらく規制も変わっていくと思うが、例えばドローンハイウェイという形で航路を固定したり、安全対策やバッテリーの問題が解決したりすれば、都市部でも運用は可能になってくると思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側