壊れた給湯器が交換できない…私たち生活にも忍び寄る半導体不足の余波 背景には米中対立やコロナ禍も

 「風呂場でシャワーを浴びていたら、突然水しか出なくなり…」。自宅の給湯器が故障、管理会社に問い合わせるも「コロナの影響による半導体不足で、国内に給湯器の在庫が一つも存在していない」と回答されてしまったという内容のツイート。3万件近くリツイートされ話題となっているが、いま世界は深刻な“半導体不足”に見舞われており、数多くの電化製品、自動車の製造に影響が生じているのだ。

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 そもそも「半導体」とは何だろうか。元経産官僚の宇佐美典也は「半導体と聞くと黒色のチップを連想すると思うが、もともとは物質の電気的特性のことで、電気を通す金属などを“導体”、逆に通さないゴムや油を“絶縁体と呼んでいる。その間にあるのが半導体で、0と1で表すデジタルと相性が良いため、電子機器に使われるようになった。そのため、“21世紀の産業のコメ”とも呼ばれている」と説明する。

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 経産省の「半導体・デジタル産業戦略検討会議」のメンバーでもある東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は「日本だけではなく、世界中の自動車メーカーや電機メーカーが物を作れず、まさに半導体メーカーに土下座して売ってもらっている状況だ」と話す。

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 電器店「イチバ電気」(群馬県)の店主・一場喜則さんによると、異変は年初からあったという。「それまで潤沢に入ってきていた商品でも、納品までに2〜3倍の時間がかかるようになった。あるメーカーの場合、今年の夏はリーズナブルなタイプのエアコンは生産しないことを決め、半導体を高級タイプの製造に振り向けているようだ。ただ、季節的にエアコンは一段落し、AV関係の需要もオリンピックが終わったので落ち着いてきてはいる。うちの店の場合、年末までには供給が安定していくのではないかと見ている」と話す。

壊れた給湯器が交換できない…私たち生活にも忍び寄る半導体不足の余波 背景には米中対立やコロナ禍も

 背景について鈴木教授は「半導体は技術の進展も早く、値段が需供バランスで変動するので、必要な分だけ作り、在庫は持たないというジャストインタイム方式の経営が一般的だ。そんな中でコロナ禍になったため、リモートワークに必要なコンピュータやWi-Fi機器などに用いられる高性能な半導体の需要が高まっていた。また、巣ごもり需要によって高価な半導体を使うゲーム機も売れるようになったこともあり、メーカーがこぞって高級な製品を作るようになった結果、家電製品などに使われる分が不足しだしたということだ。

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 それから、米中対立もある。半導体は最先端の軍事機器にも使用されるので、AIや顔認証の技術開発が進む中国国内への輸出を止めたので、中国は半導体が足りなくなった。また、日本やアメリカがファーウェイを追い出すということをやったものだから、ありったけの半導体を買い占めてしまった。これでまた不足が生じた。

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 加えて、日本のルネサスという会社の、家電製品などで使われるような半導体を作っていた工場が火災にあってしまった。工場を作るにしても、半導体の製造には非常に高価な設備を導入しなければならないので、供給が一気に増えるということもない。こうしたことから、一気に需要と供給のバランスが崩れてしまったということだが、コロナが流行ったせいで世界で働く船員や港湾労働者が減り、ロサンゼルス沖で貨物船が停泊したままということも起きている。そのため、数少ない船を奪い合い、コンテナ料金が爆上がりしている。こうした状況が解消するまでにはしばらく時間はかかると思うし、回復基調に入るのは来年に入ってからではないか」。

壊れた給湯器が交換できない…私たち生活にも忍び寄る半導体不足の余波 背景には米中対立やコロナ禍も

 各国にとって、まさに経済安全保障の問題でもある半導体不足。

 鈴木教授は「半導体に関していえば、完成品の90%近くが台湾で作られているので、中国としても容易に台湾を攻撃できない。だからこそ、台湾は半導体を一手に握ることが自分たちの安全保障だと考えている。その台湾に供給を依存している日本としては、関係が悪化しないようにしようと考える。それが経済安全保障の考え方だ。

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 今、日本は多くの製品を中国からの輸入に頼っているということもあり、米中関係、日中関係の悪化は私たちの生活に大きな影響を与えることになる。その意味では、中国からの供給を止めないようにすること、あるいは供給が止められても大丈夫なように供給源を増やすための試みが必要で、そこには国内で作るということも出てくる。こうしたことが、新しく就任した小林鷹之経済安全保障担当大臣の仕事ということになる」と指摘した。(『ABEMA Prime』より)

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