9日のABEMA『NewsBAR橋下』にフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏が生出演、「ぜひこれを聞きたいと思って来た」と、岸田政権と官僚の関係について橋下徹氏と議論した。
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古舘氏は「民主党政権の時、私は期待していた。小沢一郎さんの考えも色濃く反映されていたのだろうが、官僚に牛耳られる世界を打破しなければいけない、“政治主導だ”と言っていた。でも、うまくいかなかった。官邸が弱ければ、官僚は言うことを聞いている振りをする“面従腹背”になる。安倍政権からガーッと官邸が強くなると、今度は忖度をし始める」と指摘。
「さて、今度の政権ではどうするか、というときに、河野太郎さんは“政高党低”、つまり“政治が強くなければいけない。霞が関と自民党の部会でうまくやっているようでは、新しい政治はできない”と主張するのを聞いて、一瞬、清々しく感じた。でも、どうかな?と踏みとどまる部分もあった。一方、岸田さんは“政高党高”、つまり党の力も強いが、官僚ともうまく折り合っていくと言った。それはそれでちょっと“いい子”すぎる感じがした。もちろん、コロナ対策でも官僚とうまくやらないと事は進まない。でも、既得権を守られてしまう部分もある。どうするべきだろうか」。
これに橋下氏は「コメンテーターというのは、スピード感をもって政治を動かせば“拙速だ”と批判する。逆に丁寧にやっていくと、今度は“遅すぎる”と批判する。“政高党低”の話にしても、どちらが強くなっても必ず批判するだろう。いちばん重要なのは、どうやって動かすのか、ということだ。政治と官僚の役割分担の話だ」と説明。自身の大阪市政を次のように振り返った。
「僕が大阪市長だったときに言ったのは、政治家は決定権を持っている。官僚はアイデアをどんどん出してくれと。もちろん反対意見でもいいから、とにかくアイデアを出して、僕の前でガンガン議論してくれと。その代わり、僕が最後に決めたら従ってほしいということ。決めるのは政治。でも決めるまでは、知恵を持っている官僚が、とにかく意見を戦わせるべきだということ。
もともと僕は“市役所をぶっ壊す”と言って大阪市長になった。演説では職員のことを“シロアリだ!みんな首を洗って待っとけー!”みたいなことを言い放って、敵対した状況で乗り込んで行った。実際、職員たちは戦々恐々としていた。でも、僕一人で大阪市役所を動かすことはできない。そこで“維新の大阪都構想には絶対反対”と言い続けてきた幹部を腹心である副市長にした。
“あなたが僕の考えていることに反対しているのは分かっている。だけど僕がみんなの意見を聞かず、ごり押しするだけでは役所は絶対にまとまらない。だから反対意見はどんどん言ってほしい。その代わり、最後に決めるのは僕だから、決めたらそこは公務員として従ってくれますか。約束してくれるなら副市長に任命したい”と。その幹部は、“私は公務員だから、政治が決めたことには最後は従う。だけど、とことん反対意見を言わせてもらう”と。実際、反対の意見は会議でもガンガン出た」。
すると古舘氏は「ただ議院内閣制の国政となると、政治主導、決定権はこちらにあると言いながらも、結果としては自民党と霞が関がよろしくやって、官邸の決定権はあまりない、ということになっていた気がする」と尋ねると、橋下氏は「それがしっかりできていたのが安倍政権ということだと思う。賛否両論あるかもしれないが、議院内閣制の下で国家を7年9カ月にわたって動かし続けたのはすごいと思う。それは、安倍さんがきちんと役割分担を決めていたからだ。政治の事柄については麻生さんや二階さんといった実力者に調整をしてもらいながらも、政府のこと、最後まとめは官邸が決めると」と説明。
さらに古舘氏が「そのスキームは認めるが、“権力は腐敗する“という鉄則がある。その意味では長すぎて、一強になりすぎて、今度は霞が関が忖度するという副作用・弊害が出てきた」と反論すると、「安部さんについては、古舘さんが言われたとおりで、一部の人事の問題で不透明さがあったのは間違いない。」「やはり、決めるまでは岸田さんには色々な声を聞いていただきたい。また、菅政権が失敗した理由も、そこにあると思う。やってきた仕事には良い事もたくさんあったと思う。しかしそれが国民にうまく伝わらなかった。コロナ対策では菅さんが決めたことについて分科会の尾身会長たち専門家が反対意見を言って崩れていくように見えたが、決めるまでのプロセスで尾身さんたちと激しい議論をすることを省略してしまったことがあったと思う。尾身さんたちとフルオープンでガチャガチャ議論をしながら、でも最後は”決定権を持っている私がこう決めさせてもらう”とやればよかった。」と話していた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)