自ら「弱点がない」と豪語する男と「負けるはずがない」最強王者の激突は、戦慄のハイキック一撃によるよもやの硬直失神KOという劇的決着に。キャリア104勝2敗と驚異的な勝利数を重ねてきた最強王者の眠るようなダウンを受け「大事件だ」など視聴者が騒然。ネット上では驚きと落胆の声が広がっている。
10月15日にシンガポールで開催されたONE Championship「ONE: FIRST STRIKE」で、ONEフェザー級キックボクシング王者のジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)が、スーパーボン(タイ)に2ラウンド20秒、右ハイキックで失神KO負け。“最も倒すのが難しい王者”が蹴り一撃でダウン。そして体を硬直させて失神KOを喫するという信じられないシーンを目の当たりにした視聴者からは「大事件だ」「まじかぁ」など、驚きと落胆の声が数多く寄せられた。
ともに日本のK-1に少なからず縁のある選手だ。ペトロシアンは2009年、2010年とK-1 WORLD MAXミドル級トーナメントを連覇し、欧州ではGLORYのトーナメントを制覇、現在の主戦場ONEキックでも連勝を重ね、10数年間にわたって“最強”の地位を維持してきたツワモノだ。対戦するスーパーボンは中国のクンルンファイトのトーナメント優勝経験者で、現在ランキング2位。本人の実績よりも日本では魔裟斗らと死闘を繰り広げた「ブアカーオの弟子」という触れ込みで紹介されてきた。
下馬評はペトロシアン有利というより「彼を倒せる相手がはたしているのか?」という論調。ただしこの日のABEMAでゲスト解説を務めた志朗は「ペトロシアンにとってやり難い相手、スーパーボンは蹴りでくると思う」と挑戦者にも可能性があると予想していた。
1ラウンド、スーパーボンのハイキックにローで返すペトロシアン。王者がゆったりとした構えから右アッパー、左ストレート。ペトロシアンが得意とするパンチの射程距離に、スーパーボンもローとハイキックで応戦し、自身の距離を探っていく。強いプレッシャーを受けながらも、しっかりとしたディフェンスと蹴りで最強王者に主導権を握らせない。
2ラウンド、前に出ながら右2発、左1発と軽快にワンツーを叩き込むペトロシアンに対して、スーパーボンが胸元に右ミドル2発、これに反応してブロックから左パンチを放ったペトロシアンのガードが下がった瞬間を見逃さず、スーパーボンが右ハイをペトロシアンのアゴからテンプルにかけてたたき込んだ。
蹴りの衝撃でペトロシアンは脳が揺れフリーズ、そこからゆっくりと後ろに崩れ落ちると、手足がピーンと伸びたまま硬直してダウン。危険を察知したレフェリーのオリヴィエ・コストが両手で大きく「試合終了」のジェスチャー。メディカルスタッフが慌てて駆け寄るなか、目をつぶったまま眠るようにピクリともしない最強の男。
衝撃の光景に視聴者からは「まじか」「信じられない」など、絶叫にも似たコメントが殺到。さらには「こんな日が来るとは…」「神話崩壊」「グッバイ、ペトロシアン幻想」「大事件だ」「やばい倒れ方だった」と言った反応も続々と寄せられた。
衝撃の敗戦を受け、海外の反応もさまざま。「ムエタイが今夜最強を証明した」とスーパーボンの勝利を称える声。一方ではペトロシアンの敗戦に「ちょっと何が起きたか信じられない。GOAT(最強の男)がKOされて、今ショックで震えてる…」「計り知れない失望感。今日一日が台無しだよ…」、「それよりもジョルジオの状態が知りたい。大丈夫なの?」といった落胆や心配の声も数多く聞かれた。
志朗は「誰も予想していなかったことが起きましたね…」と試合直後こそやや冷静な反応。スローリプレイが再生されると「スーパーボンが蹴りがいいとは言いましたけど、まさか2ラウンドでKOするとは…」と驚いた様子で振り返り「総合のUFCのようにONEが立ち技の世界最強を決める場所になりつつあるのでは…」とまさかの番狂わせが起きる強豪ひしめくリーグについて熱く語っていた。