異例の短期戦となった、31日に投開票が行われる衆議院選挙。各政党のマニュフェストなどが続々と発表される中、気になるのはその具体的な中身だ。
ABEMA『倍速ニュース』では、9党それぞれの公約を解説。初回は「自民党」について、テレビ朝日政治部の大石真依子記者が伝える。
【新型コロナ対策】
Q.新型コロナ対策について、自民党はどういった公約を掲げている?
自民党の公約をまとめた、42ページにわたる政策パンフレットがあるが、その最初の項目が新型コロナ対策になっていて、最重要視していることが見て取れる。まずひとつめの大きな柱はワクチン。今かなり感染が落ち着いてきていて、いろんな要因があるとは思うが、ひとつワクチンの効果がはっきりと表れている。希望する人全員へのワクチン接種を、11月のなるだけ早い段階で終わらせること。また、3回目の接種に向けた準備を進めるとしている。岸田総理は14日の会見で、3回目接種は12月に開始すると話していた。
Q.第5波時は自宅療養中に亡くなる方もいたが、医療提供体制についてはどういった公約を?
第5波の時の反省は政府与党としても強く持っている。「常に最悪の事態を想定した危機管理」を今回掲げて、人流抑制や医療提供体制確保のために、行政がより強い権限を持てるための法改正をするとしている。国内外で開発が続く治療薬については、全国各地で、早期に治療薬を投与できる環境を整備するとしている。経口薬、つまり飲み薬の普及を進めていくとも約束をしていて、総理は14日の会見で「年内の実用化を目指す」と話していた。
【経済対策と社会保障】
Q.経済対策についてはどのような公約を掲げている?
経済政策は、政策パンフレットのうち12ページを割いていて、自民党として、岸田総理として一番力を入れているのがわかる。その中でも一番強調されているワードが、総理が国会や会見で何度も言っている「新しい資本主義」だ。「成長と分配の好循環」によって、「新しい資本主義」を実現することで、個人所得を引き上げて、分厚い中間層を再構築する、としている。
Q.「成長と分配」について、まず具体的にどういった「分配」を公約では約束している?
まずひとつに、賃上げに積極的な企業への税制支援を行う、としている。つまり、一人ひとりの給料を引き上げた企業には税制で優遇をすることで、給料を引き上げるモチベーションを与えるということ。また、給与に関連して、看護師や介護士、幼稚園の先生、保育士といった、「仕事内容に比べて、賃金の水準が長い間低く抑えられてきた人たち」の所得を上げるために、賃金水準を抜本的に見直すとしている。
こういった大きな方向性は打ち出されているが、正直まだ具体性には欠けている。具体的にどうしていくのか、ということを議論していくために、岸田総理をトップとする「新しい資本主義実現会議」が設置されて、今月中にも初会合が開かれる予定だ。
Q.「成長と分配」の「成長」については?
日本に強みのある科学技術への投資などがあげられている。また、「大胆な危機管理投資」を掲げて、国産の薬をつくるための支援や、激甚化している自然災害への対策を着実に実施していくとしている。
Q.社会保障については?
すべての世代が安心できる、持続可能な全世代型社会保障を構築する、としている。総裁選期間中にひとつの大きな争点となった年金については、将来にわたって国民が安心できる水準を確保する、と約束している。
【外交政策】
Q.戦後最長の4年8カ月、外務大臣を務めた岸田氏だが、外交政策についてはどんなカラーが出ている?
今回、大きなテーマになっているのは「国防力」。今の日本をとりまく安全保障環境が色濃く反映されたものになっている印象を受けた。東シナ海や南シナ海、また台湾周辺などで軍事的な圧力を強める中国を名指しして、激変する安全保障環境に対応するために、日本の防衛力を抜本的に強化するとしている。また、北朝鮮を念頭に、相手域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有も含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みを進めるとしている。
Q.安倍元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の理念は引き継がれる?
「自由で開かれたインド太平洋」の一層の推進を約束している。これまでの日米同盟を基軸に、オーストラリアやインド、ASEAN、ヨーロッパ、台湾など、価値観を共有するパートナーとの連携を強化するとしている。
また、これまで安倍政権、菅政権でも取り組んできたものの、解決にいたらなかった拉致問題については、首脳会談の実現など、あらゆる手段を尽くして、被害者の即時一括帰国を求めると改めて決意を示している。
【教育政策などについて】
Q.次世代を担う若者について。教育や子育てなど若者支援策についてはどういった方針を掲げている?
政策パンフレットを見ると、若者に特化した章は設けていない。ただ、少子化問題解消のために、子育てへの不安に応える抜本的な政策を実行すると約束している。具体的には、待機児童の減少や、病児保育の拡充、児童手当の強化などを掲げている。また、支援を必要とする子育て世帯に対しては、妊娠・出産から子育てまで全ての親子を対象に、一体的に支援する拠点を全市区町村につくり、こどもや家庭の支援体制を強化する、といったことをあげている。
Q.菅前総理は「こども庁」の創設を目指していたが、その文言は公約には入らなかった?
公約には入っていないが、こども政策担当大臣に野田聖子氏をおいた。野田大臣は、こども庁設置に向けた関連法案について、年末までに基本方針をとりまとめた上で、来年の通常国会には提出したいと話している。今後、政府与党内で検討が進められていくものと思う。
【各党が重点を置く政策】
Q.4項目について話を聞いてきたが、自民党が重点を置くのはどの政策?
経済安全保障。岸田総理は、この経済安全保障を「成長戦略」のひとつの柱に位置づけていて、公約の中でも「経済安全保障を強化する」として、章を設けている。どんな事態になっても、必要な物資を国内で調達できる環境を整備すること。日本の先端技術などの海外流出を阻止すること。サイバー攻撃への対策を強化することなどを掲げている。
Q.今月頭に発足した岸田政権で、経済安全保障担当大臣が新設されたが。
当選3回の若手・小林鷹之議員が任命された。自民党で甘利さんの下、経済安全保障に関する議論をリードしてきた。公約には、「経済安全保障推進法(仮称)」を策定する、と明記されていて、今後、技術流出の防止に向けて法整備を進めていく。
(ABEMA/『倍速ニュース』より)