盤上の駒だけを使って勝敗を決める頭脳戦、将棋。ただ、実際の勝負にはいわゆる“盤外”の戦いも起きている。メンタルが勝敗を大きく左右するものでもあるだけに、盤を離れた際のことでも、指し手に影響が出ることも珍しくない。三枚堂達也七段(28)も、盤外の恒例イベントである食事でのエピソードの持ち主だ。
【動画】盤外戦術について語る三枚堂達也七段
三枚堂七段は10月22日から行われた竜王戦七番勝負の第2局、豊島将之竜王(31)と藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖、19)の対局を解説。1日目ということもあり、あまり局面が進まないところを見計らって、将棋界によくある盤外での思い出を披露し始めた。
テーマとなったのは「将棋めし」という表現もされる、対局中の食事について。棋士のこだわりが出る部分でもあり、また対局者は同時に注文をすることから、相手と同じものを避けたり、逆に同じにしたりと、いろいろな逸話が生まれるポイントでもある。
三枚堂七段 たとえば相手が鰻重に「松」「竹」「梅」とある中で、「竹」を頼んでいたとするじゃないですか。相手が「竹」なのに、「梅」を頼めないのはちょっとわかりますね。むしろ「松」を頼んで、気合を出したいというのはわかります。自分が「梅」を食べたいと思っていても、相手が「竹」だった時に、「じゃあ竹で!」みたいなものは、負けている説がありますね(笑)。
勝負の世界で生きているからこそ、何かと優劣、上下には敏感になる。相手よりランクが下の食べ物を食べていては、精神的にも下になってしまうのではないか。いかにも棋士らしい考え方だ。別のシーンでは、いかにも日本人らしい“同調”もあった。
三枚堂七段 昔あったんですよ。自分が一番下座で、最後に(食事の)注文が来たんです。同じ部屋の3人が全員「牛肉の照り焼き」を頼んでいて「じゃあ(お前は)どうするんだよ」的なプレッシャーをかけられまして(笑)。結局、照り焼きにしました。将棋も力負けしました(苦笑)。3人同じメニューで来てるんで、ひえーってなりました。さすがにそこで手を変えられなかったですね。全然変えていいんですけど。
普段は東京の三枚堂七段が、大阪遠征の際に生まれたエピソード。あまり大阪の将棋会館の食事事情に詳しくなかったこともあり、周囲に流される形で注文した一品だったが、美味だったという。ただ、ここで流れを断ち切り、まるで違うメニューを注文するような図太さも、勝負師としては必要かもしれない(?)。
(ABEMA/将棋チャンネルより)