衆議院選挙が19日に公示され、12日間の選挙戦がスタートした。投開票は31日で、各党の舌戦が繰り広げられる中、気になるのはその具体的な中身だ。
ABEMA『倍速ニュース』では、9党それぞれの公約を解説。第5回は「日本維新の会」について、テレビ朝日政治部の今野忍記者が伝える。
【新型コロナ対策】
Q.新型コロナ対策について、維新の会はどういう公約を掲げている?
維新の会は「コロナから命と経済を守る四つの緊急提言」という公約を掲げている。今夏の第5波で、全国的に病床が足りなくなったことを念頭に、最初に挙げているのは「大幅な医療体制の強化」。臨時の医療施設を増やすことや、コロナ病床・医療従事者を確保できる法律を新たに制定する、としている。
2番目は、経済・景気についての提言。景気回復に向けて時限的に、だいたい維新の会の方を取材すると2年が目安と言っているが、消費税の5%への引き下げを訴えている。社会保険料の一部(年金保険料)をゼロにし、現役世代の可処分所得を大幅増やすことを提言している。
3番目が、戦略的なワクチンの接種。未接種者に対して迅速な接種をきめ細かく実行していくこと、科学的根拠に基づき3回目接種を推進していくこと、ワクチンパスポートの活用で経済活動と両立すること、を掲げている。
4番目が、デジタル化・オンライン化の徹底。国会・議会からリモート審議を進めていくことを提案している。教育現場や行政手続きのオンライン化も徹底することを掲げている。
【経済対策と社会保障】
Q経済対策についてはどのような公約を掲げている?
維新の会の最大の特徴と言えるのが、「ベーシックインカム」という考え方を公約に盛り込んだことと言えるだろう。ベーシックインカムは「最低所得保障」といって、0歳からすべての国民に対して、一律に現金を給付すること。給付額について維新の会は毎月6万円~10万円を想定している。生活保護は残すが、児童手当や年金の基礎年金部分はこのベーシックインカムにとって代わる。
Q.なぜこのような政策を掲げている?
維新の会は、国民全体の可処分所得を引き上げることこそが、「経済成長」と「格差解消」につながるという考えに立っている。この選挙では「分配」が各党の公約のキーワードになっているが、松井代表は公示日の街頭演説でも「可処分所得を上げることがすなわち分配だ」と訴えている。ベーシックインカムによって、国民全体の手元に残る現金を増やすことで、低所得者や子育て世代の消費が増えて、景気対策としても有効だと説明している。
【外交政策】
Q.外交政策について掲げている公約は?
「現実に立脚した外交・安全保障」を掲げていて、今の与党とあまり大きくは変わらないと思う。具体的には防衛費のGDP1%枠は撤廃し、防衛体制を強化するとしている。また、自衛隊員の待遇を改善して、危険手当を創設するなど、自衛隊や隊員の地位向上を実現することを盛り込んだ。
さらに、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増しているとして、日米同盟を基軸とし、日米英印豪台など共通の価値観(民主主義)を持つ海洋国家ネットワークで防衛力を強化していくこと、経済連携協定(EPA)を軸に域内経済連携に積極的に関与し、自由主義経済圏の拡大をはかるとしている。
【教育政策などについて】
Q.教育や子育て、若者支援はどんなものがある?
経済状況にかかわらず質の高い教育を受けることができるよう、大学までの全過程の無償化を訴えている。そのために国が法律を作ること、恒常的な予算措置を義務付けるために憲法改正の項目に教育無償化を入れようと掲げている。さらに、教育はバウチャー制度を全国に導入すると言っている。
Q.「教育バウチャー」というのはどんな制度?
教育に使うことを目的としたクーポンのようなもの。維新の会は、学費や塾など教育にかかわる費用を支払うのに使うことができるようなバウチャーを想定している。ほかにも出産・子育ては社会全体で徹底支援するとして、出産育児一時金の増額や妊婦健診にかかる費用の全無償化をするとしている。
また、支援策とはちょっと異なるが、多様性の推進として、実現可能な選択的夫婦別姓制度と同性婚の制定をリードするとしている。
【各党が重点を置く政策】
Q.このほかに、維新の会が重点を置いている政策はある?
維新の会が重点を置くのは「身を切る改革」と、中央集権の打破による「地方の自立」の2点。身を切る改革というのは、大阪府議会では定数を減らしたり議員や市長の給与をカットしたりしているが、国会議員においても報酬、議員定数の3割カットを掲げている。
地方の自立では、自治体間の二重行政の解消を主張している。もともと維新の会が生まれた経緯は、2010年、当時大阪府知事だった橋下徹氏が松井代表らと旗揚げした地域政党「大阪維新の会」が母体になっている。大阪府と大阪市の二重行政を解消するとして「大阪都構想」を掲げていて、都構想自体は大阪市内で2度実施された住民投票でいずれも否決されたが、今も重点を置くのは「統治機構改革」。道府県と政令指定都市の自治体間の二重行政の解決を提言している。
(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)