俳優の三浦翔平も33歳。今や家庭を持ち、一児のパパになった。閉塞し停滞したコロナ禍で最もSNSをバズらせた連続ドラマ『M 愛すべき人がいて』(2020)での振り切った熱演も話題に。その脚本家・鈴木おさむが手掛けたABEMAオリジナル連続ドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』の3年ぶりの続編『会社は学校じゃねぇんだよ 新世代逆襲編』に出演している。前作では若き起業家としてのパッションを見せたが、今作では成功した実業家としての重厚感を見せている。
『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』で知られる藤井道人監督が、野村周平とタッグを組んで放つ“下克上”ドラマ。三浦も、かつての熱狂する若者で、今では上場企業の社長となった藤村鉄平を続投中。起業のために奔走する祐介(野村周平)の前に巨大な壁として立ちはだかる。三浦は「まっすぐにブレない意思を持つ本質は前作と変わらないけれど、情熱を前面に出すのではなく内に秘めているような人物造形に変化している。真っ赤な炎が青い炎に変わったようなイメージ」とキャラクターの変化と成長を分析する。
3年という月日は、演じる三浦本人の心境や環境にも変化を与えたようだ。「結婚し、家族ができて、子供も生まれた。嬉しい事もあれば、人生で1番悲しい出来事もあった。たった3年なのに色々な事がありすぎて『ドラゴンボール』でいうところの“精神と時の部屋”に入ったような感覚」と修行のような時間であったと振り返る。
30代に突入し「老けた」と自嘲するが、俳優としての本質である演技力よりもまずルックスで評価され、“イケメン”というカテゴリーに一括りにされた20代。「当時は凄く嫌でしたね。『一括りにするな!』と承認欲求が大きかったのでしょう」。しかし現在は「我々の仕事は観てもらわないと始まらない。話題になって作品を観てもらえるのであれば、肩書きなんて何でもいい。キャッチーな肩書や見出しがあり、それをきっかけに興味を持って観ていただけるのであれば『なんでもどうぞ!』という気分。
その三浦の懐の広さが如実に表れたのは『M 愛すべき人がいて』であろう。往年の大映ドラマ調と評された確信犯的ドラマツルギーと俳優陣のフルスロットル芝居はSNSで大きな話題に。しかし当の本人は放送されるまで半信半疑だったという。「鈴木おさむさんの脚本はかなり攻めているし、演出も令和なのに大映ドラマ風。夜空にCGで虹がかかるし、崖の上から豪雨のなか叫ぶし。色々とリアルではありえなくないですか、、、と。しかし、監督やプロデューサーから『大丈夫です、振り切ってください!』と言われたので、僕も120%で返しました。結果的に製作陣の意図通り、話題性になり、こういうことか…と」といまだ驚愕している。
脚本家・鈴木おさむとは数え切れないほどのタッグを組んでいる。それだけフィーリングが合うということか。「ルートやプロセスは違うけれど、一緒なのは『みんなを楽しませたい』という結果。目指しているゴールは同じです。脚本にもいくつかのポイントがあって、最近ではおさむさんの絶対に言わせたいセリフがわかるようになってきました。現場で製作陣に聞くと『その通りです、よく分かりましたね』と言われます。」もはや阿吽の呼吸だ。
妻とは、出演作を一緒に観たりするという。「毎回ではないですが、今回の会社は学校じゃねぇんだよ~も観れる時は観たいなと。コロナ禍という事もあり『M 愛すべき人がいて』は一緒に観てましたね。僕はその横にいてどういう気持ちで観ていいのかわかりませんでしたが、『やはり面白いのか… ?』とちょっと悔しかったな(笑)」と思い出し笑い。3年前と大きく変わったのは充実の質感。30代の三浦は公私ともに順風満帆だ。
取材・文:石井隼人
写真:You Ishii