「こちらはオランダ生まれで今ベルギーに住んでいる、マーク・マンダースさんという現代美術家、彫刻家の方の作品なんです」
都内・江東区にあるホームセンター「コーナン江東深川店」。外観はよく見る普通のホームセンターだが、中に入ってみると、入口に並んだ商品の手前には、なんと、横たわっている犬のようなものが。冷静に見てみると、生き物ではなく、作り物のようだが、なぜここにあるのか。謎が深まるばかり。
実はこれは、世界的に有名な現代アーティストであるマーク・マンダース氏が手がけた作品。作品名は「狐/鼠/ベルト」。11月1日の9時~13時にかけて、このホームセンターに設置されたという。
「動物の形をしてまして、狐なんですけど、狐のおなかに鼠が乗っていて、ベルトがとまっている彫刻作品なんですね。彫刻作品をつくるだけでなく、どこにどのように置くか。それにとても感心をもって取り組んでいる作家さんです。作品自体も非常に高く評価されている作品だと言えます」(東京都現代美術館の学芸員、鎮西芳美さん・以下同)
今回のホームセンターからほど近い場所にある東京都現代美術館で今年開催されたマンダース氏による日本初の美術館個展「マーク・マンダース ─ マーク・マンダースの不在」(※現在は終了)でも展示されたこの作品。美術館がホームセンターでこのように作品を展示するのは、めずらしく、ネット上でも「生活との距離感がたまらなく好き」「蹴られたり踏まれたりしなかったのかな?」といった反響が相次いで寄せられている。
「マーク・マンダース氏は美術館のために作っているわけではありません。まずは自分が想像する建物のために作っていますし、重ねて考えることができるという、SFっぽいところもあります。2019年の春、美術館がリニューアルオープンしたのですが、そのときに、展示で来てくれてまして、材料が足りなくなってコーナンさんに買い物に行ったんですよね。そのイメージが残っていて、ああいう感じのお店がいいといったお話がありました」
「狐/鼠/ベルト」も、マンダースがイタリアのヴェネチアで開催された現代美術の国際展に参加した際、実際にスーパーマーケットに設置された経緯があるという。当初、東京都現代美術館もマンダース展開催の際、スーパーでの展示を計画していたが、緊急事態宣言などの影響もあり、実現はされなかった。
「マンダース氏の場合、作品としてそれが要求されているものなので、またちょっとあり方は違いますが、やっぱり美術館の中だけではなく、いろいろな形で美術に接する機会を持っていただけるように務めていきたいなと思います」
コーナン側も「こうした機会やイベントがあればまた参加を検討したい」と話している。(『ABEMAヒルズ』より)