10日、岸田総理大臣と公明党の山口那津男代表による“自公トップ会談”が行われ、コロナ禍に対応するために公明党が掲げていた「未来応援給付」のうち、18歳以下の子どもへの給付について年内に現金5万円、来春に5万円分のクーポンを支給、所得制限を自民党が求める“世帯主の年収960万円”とすることで合意した。また、マイナンバーカード保有者へのポイント付与については、最大2万円とすることで合意した。
■同じ960万円でも、住む地域、子どもの人数によって異なる生活
ファイナンシャルプランナーで、FP事務所「アイプランニング」の飯村久美代表は、ネット上でも論争を呼んでいる“世帯主の年収960万円”という線引きについて、現行の「児童手当」の所得制限に準じたのではないかと話す。
「専業主婦1人に子ども2人の、扶養人数3人という家庭の場合、世帯主の年収が960万円を超えると一律で5000円が特例給付されている。ただ、これも来年10月以降は1200万円を超えると無くなることになっている。確かに給与所得者の所得平均は令和2年度で約532万円と、コロナ禍もあって前年に比べ約7万円も下がっている。公明党としては“未来への投資”ということで全ての子どもに10万円ずつ、年収制限なしで給付したかったということだが、やはり960万円というのは高所得者ではあるので、あえて所得制限を設けたのだと思う」と話す。
とはいえ、同じ年収960万円でも、状況によって家計の負担感は様々だ。飯村氏の試算でも、居住地や扶養家族の年齢や人数、さらに個人事業主か給与所得者かといった違いにより、数万円の差が生じる。テレビ朝日の田中萌アナウンサーは「年収200万円台で暮らしをしている若者など、大変な人たちがいっぱいいると感じている。本当に困っている人たちに、お金が行き渡ったらいいなと感じる」と慮る。
飯村氏も「去年の特別定額給付10万円の時には、“貯蓄に回そう”とか、“ちょっと美味しいものを食べちゃおうか”という家庭も多かった。これ1回きりの“バラマキ”では、少子化対策、子育て支援とかいうところには繋がっていかないんじゃないかと思う。また、例えば飲食店でのアルバイトが無くなったり、お父さんの給料が減ったりする中で、大学生たちはとても大変だ。本当にいま大切だというところに血税を使って欲しい」とした。
■「何言ってんだ、バカじゃないのかと思う。」
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「生活支援という意味では、貯蓄に回っても問題ないと思う。それよりも、2回目の5万円は来年春にクーポンにしてというのは、何言ってんだ、バカじゃないのかと思う。もっと言えば、年収960万円以下の世帯の子どもは2000万人だから、10万円ずつ配っても2兆円だ。2兆円ごときで“目玉”とか、何を言っているのかと思う。“戦力の逐次投入”の典型例だし、この現状を見ればドカンと配ってしまった方がいい。経済対策という面でも、GoToとかを復活させてお金をバーンと使うようにした方がいい。話がチマチマしすぎだ」と批判。
「加えて、僕の場合は法人を作ってそこから給料をもらう形にしている個人事業主だが、この給料を減らすことで個人の収入としては960万に満たなくても、法人としての収益は2000万、3000万という人は世の中に山ほどいる。一方で、会社員は960万円を超えていれば子どもを3、4人と育てていてももらえないというアンバランスさもある。こういうことを煩雑な事務をやって判別していくくらいなら、一括で給付した方がかえっていいんじゃないのか。相変わらずしょうもないことやっているなという感想しか生まれない。
そもそも日本は金融資産と給与が紐付けされていないので、収入は少ないけど金融資産は1億円あるっていう人もいる。こういうこともマイナンバーカードを使えばできるわけで、将来的にはかなり必要な仕組みだ。僕は全国民一律10万円給付を、なんなら半年間くらい毎月やって、生活や意識がどう変わったかを綿密に調べて、将来のベーシックインカムの検討材料にするとか、そのくらい実験的な試みをして欲しい」。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授も「本当に困っている人が10万円だけで救われるわけではないし、線引きについても結論は永遠に出ないだろう。しかし、配らないでもいいということでもない。こういうものは、“希望を持ってください”という国からのメッセージだと思う。僕は子どもの人数に応じて単純に加算していけばいい。親の収入がどうであれ、子どもに使う部分の支出は絞れない。少子化問題もあるわけで、たくさん子どもがいるという家庭には“お疲れ様でした、頑張ってますね”という、シンプルな考え方でいいのではないか。子どもを生んだら補助してもらえるというメッセージは、社会に対してもすごく大事だと思う」話していた。(『ABEMA Prime』より)