中国・上海で6日、日本など海外の商品をネット販売する配信イベントが開かれた。3時間で10億円以上の売り上げを記録したが、司会を担当したのがリー・ジャーチーさん(29)。
リーさんはSNSのフォロワーが5700万人を超えるインフルエンサーで、自ら口紅を塗るパフォーマンスから「口紅王子」と呼ばれている。中国では知らない人はいない“爆売り”のカリスマだ。
11月11日は中国で「独身の日」と呼ばれ、ネットショッピングで「自分にご褒美を買う」習慣がある。しかし、リーさんからは“意味深な言葉”が出てきたという。独占インタビューしたANN上海支局の高橋大作支局長が伝える。
SNSなどで発信力や影響力を持つ人のことをインフルエンサーと呼ぶが、リーさんは「KOL」と呼ばれているという。KOLとはKey Opinion Leaderの略で、インフルエンサーの中でも特定の分野に強い影響力を持っている人のこと。もともと美容部員だったリーさんは、化粧品や商品紹介・宣伝分野でトップに上り詰めた。
今回の配信イベントは、中国の国営メディアとアジア・アフリカの企業が共同で企画したもの。日本やアフガニスタンなど、中国と関係の深い国の商品32種類が紹介されたが、一番売れたのは「松の実」だったという。
「松の実はアフガニスタンの名産で、ピーナツのような食用の木の実。(イベントは)国営テレビが企画していて、アフガニスタンのパシュトゥー語専門のキャスターも出演していたのは非常に驚いた。これがどれぐらい売れたかというと、12万セット(=26万トン)が2時間で売り切れた。実はアフガニスタン産というのがポイントで、中国とアフガニスタンは今関係を強めている。アフガニスタンの国家権力がイスラム組織のタリバンに移ってから、中国が初めて輸入したのがこの松の実。私の計算では、この松の実だけで(イベントの)1億円以上を売っている。ある種の政治的・経済的な支援の意味もあった」(高橋支局長、以下同)
独占インタビューを行う際、取材時間は「3分だけ」と指定されたという。高橋支局長の質問に対し、リーさんはテンポよく返してくれたというが、意味深な言葉出たのが「独身の日にどんな気持ちで臨むか」について聞いた時だった。
「『全ての男性・女性に理性的に消費して、楽しく買い物することを呼びかけたい』と。いわば爆買いというか、爆売りの象徴であるリーさんが『理性的に消費して』と言う。要は、余計なものは買わないでということで、去年とは大きく違っている。独身の日というのは、中国の消費力を見せつける意味合いもあって、アリババが運営するタオバオだけで1日に7兆円を売り上げるような日。しかし、今年から理性的に消費してほしいということが言われだした」
リーさんの言葉の背景にあるのが、中国が今年8月に国家政策として打ち出した「共同富裕」。これは“ともに豊かになろう”という、格差の是正を呼びかけるメッセージだ。
「これまでは、アリババといった大きなIT会社、とにかく世界最強とも言えるようなものを作っていって、国全体を豊かにしようという発想で伸びてきた。しかし、ここにきて共同富裕。いわゆる、豊かでない農村といったところも一緒に豊かになっていこうと方針転換したが、儲けすぎている企業や個人に対する批判が集まりだしたことが背景にある。毎年11日には“1秒間にいくら売れている”というカウントダウンイベントが行われていたが、今年は中止になった。さらに、消費者には『エコな商品を買いましょう』とか、企業には『自発的に寄付をするように』と呼びかけている。儲けろ儲けろ!という去年の状況から、みんなで儲けないといけない、というように大きく変わっている。はたして、今年は去年以上の売上があがるのか。そんな中でどういう消費行動が行われるのかが注目されている」
(ABEMA NEWSより)