BACKSTAGE TALK #32 KOWICHI
ABEMAMIX出演の合間に、HIPHOPライター 渡辺志保 氏がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
ー先日、リリースされた『Higher (Deluxe)』も豪華なメンツ揃いでびっくりしました。
KOWICHI:もともと出す予定はあって、ずっと作っていたんだよね。いつも、ゲストを決めるのはノリなんだけど、意識したのは(自分のレーベルの)SELF MADEのメンバーが全員入るということ。『HIGHER』のオリジナル版にはCandeeやERASERが入っていたけど、デラックス版にはSATORUとMerry Deloとも曲を作って。
【映像】KOWICHI ABEMAMIXライブパフォーマンス
ー実際にSELF MADEの若手ラッパーらと一緒に曲を作った感想は?
KOWICHI:CandeeもSATORUも、初めて一緒に曲を作ったんだけど、いい感じだったし、刺激になった。それぞれ良さがあるけど、Candeeは「Alien」って曲の通り本当に宇宙人みたいで、結構驚いた。「こんなヤツ、いるんだ」みたいな。SATORUは、もうあのまんまっていうか、サクっと録って完成、みたいな。
ーSELF MADEのメンバーが集結したサイファー動画も、かなり話題になったんじゃないですか?
KOWICHI:評判いいっぽいよね。あれは、単純に「こういうメンバーを集めてレーベルを始めました」というニュースを写真やテキストだけで出すより、分かりやすいかなと思って作ったもので。音源化して欲しいっていう声も聞くんだけど、あくまでお知らせって意味で公開したから、リリース予定はないです。
ーあの動画、それぞれのMCの個性が分かりやすく伝わってきて何度も観てしまいました。改めて、SELF MADEのメンバーはどういった経緯を経て集まったのでしょう?
KOWICHI:まず、EREASERとZOT on the WAVEは何年も前から周りにいたから自然な流れだった。CandeeはZOTがすごく気に入っていて、俺のところに連れて来てくれたんだよね。SATORUは実際に「マジでムリ」のレコーディングとかを通じて仲良くなったんだけど、ある日、「一緒にやりたい」と言ってくれて。彼のことは好きだったから断る理由もなく、一緒にやってるって感じかな。みんな自然と集まってるね。
Merry Deloも、もともとFly Boy Recordsの時から彼のアルバムを作ろうというプロジェクトをやり始めていたので、それを引き続き俺がやっているという感じ。あと、最近はプロデューサーのdubby bunnyも加わって。
ーレーベルを立ち上げて、新たにスタジオも完成したみたいですけど、調子はどうですか?
KOWICHI:もう若手もみんな、作って録って…という感じ。ひたすらZOTとdubbyがビートを作ってるね。実は『Higher』のデラックス版はJIGGくんのところで録っていて、その制作を終えたタイミングでスタジオが完成した。
だから、俺は今のところ、あそこで録ったことがなくて、マイクに声を通したことがないんだよ。SELF MADEの中で俺だけ。みんな録りやすいって言ってたから実際にレコーディングするのが本当に楽しみで。次の制作が始まったら、ずっとスタジオにいると思う。
ー今後のSELF MADEはどうなりそう?
KOWICHI:年末にレーベルコンピを出そうかなと思っていて。ラッパーの人数もいるし、割とゴツい内容を作れるんじゃないかと思って。それを企んでいますね。
ーデラックス版の内容に話を戻しますが、一枚のアルバムに、T-PablowとYZERR、JP The WavyにElle Teresaら、レーベルのメンバー以外にもかなりアツい若手のMCたちが参加してますよね。
KOWICHI:オリジナルも含めたら、(客演のメンツに関しては)だいぶ欲張ったなって思ったけど、意識しないうちにみんなが集まってくれて。
ーこれだけのラッパーたちが参加していて、KOWICHIくんの慕われ具合がヤバいな、と改めて感じたんです。ご自身は、下の世代からどう見られていると思う?
KOWICHI:マジで分からないんだよ。でも別に、俺しかできないことをやってると思わないけどね。
ーレーベルにも次世代ラッパーたちが集結しているわけですが、今は若手に自分のパワーを注ぐことを大切にしている?
KOWICHI:その通りだけど、最近はその逆もあるかも。若い人からも刺激をもらうことが正直増えてる。前までは、そういうことはほとんどなかった。
ー例えばどういう時?
KOWICHI:例えば、何年か前までは、若い子とレコーディングしても「まあ大体こんな感じで来るんでしょ?」みたいな感じがあって。
ー向こうの様子が予想できちゃうというか。
KOWICHI:そうそう。むしろ「俺はこういうことやっちゃんだぜ」みたいな、若手を驚かせる側の立場にいたわけ。
ー年下のラッパーからしてみれば「KOWICHIさん、すげえ」みたいな
KOWICHI:でも、最近はそういうこともないんだよね。俺が驚くことが結構増えた。
ーでも、そんな感じで次世代の台頭を素直に受け止めているKOWICHIくんもすごいなと思います。今回、デラックス版にはMINAMIさんと作った「マッチ」も収録されている。お二人で作った楽曲もどんどん増えていますが、MINAMIさんと一緒に曲を作るということは、KOWICHIくんにとってどんな意味を持ちますか?
KOWICHI:別に、自然なことしかしていないつもりだから、その辺は意識していないかな。
ープライベートな時間を一緒に過ごしていて、自然な流れで制作に関するビジネス的な話もする?
KOWICHI:付き合いたての時にそういう話もしていて、例えば、明日仕事が忙しいとか、いちいち説明したくないタイミングってあるじゃん。そういう時はいちいち聞かないでくれって伝えてるし、逆に向こうからもはっきり言われるかも。逆に、普段一緒に過ごしている中で「次のアルバムに入ってくれない?」って一言で終わる時もある。「CREAMのMVにカメオで出て欲しい」とか。俺、カメオとかまず出ないからね(笑)。それを「ちょっと明後日来てくれない?」って感じですぐに決まることもある。
ーアーティスト同士、バランスよく上手く付き合っているのがすごいなと思っていて。秘訣はありますか?
KOWICHI:俺は、お願いするタイミングについてはいつも見計らってるけどね(笑)。でも、どういう形になるか分からないけど、来年もMINAMIとは一緒に曲を作っていきたい。最近思ってるんだけど、次に出すアルバムは自分の最後のアルバムになるかもって。気持ち的に。
ーやだ、やめてよ。
KOWICHI:もちろん最後にはしたくないけど、「これで最後になってもいい」っていう意気込みでやっていこうかなって。
ーぶっちゃけ、引退について考えることもありますか?
KOWICHI:最近、あるね。去年一昨年くらいからざっくり考え始め。今はこうやって次のことが形になり始めてきたから、誰か1人でもスーパースターがうちのレーベルから産まれたら、一回俺は(退こうかな)、って思うかもしれない。もしくは逆に、そいつにフックアップしてもらうかも。
ー理想的な引退の仕方ってありますか?
KOWICHI:ジェイ・Zかな。引退っていうか、たまに出てきてラップする感じというか。それって、成功した姿だと思ってるんだよね。
ーラップに追われている感じがしないですもんね。
KOWICHI:そうそう。楽しんでやっている感じというか。俺は今、少しでも(ビジネスを)潤すためという目的もあってラップしてるけど、そういう気持ちが無くても大丈夫っていう状態に憧れる。セールスを全く気にしないで制作したい、というのが夢。
ー今は制作する時に売れるバランスなども気にしている?
KOWICHI:気にしているけど、やっぱり、それを100%出来なくなっちゃうんだよね。自分で自分を見ていても、「こうした方がもっと売れるだろ」って思うことがあるし。好きなことをやりたいという気持ちに勝てない時もある。でも、そういうことも一切気にしないで制作してみたい。
ーなるほど。次作から違うフェーズに入ったKOWICHIくんのラップが聴けそうですね。
KOWICHI:そうかも。『Higher』に収録されている曲の中では、「ROCKSTAR」をレコーディングした日に、「マッチ」も録り直して、それで完成しているんだよね。そういう心境で制作を終えているから、次に出すアルバムはもうちょっとノリじゃない部分を表すことができたらなって思ってるよ。