業界でいま大きな注目を集める新進気鋭のイラストレーター・loundraw（ラウンドロー）さん。26歳という若さでアニメーション映画監督デビューを果たした。
初監督作『サマーゴースト』（11月12日より全国の映画館で公開中）では、悩みを抱える3人の若者たちが経験した、ひと夏の不思議な物語が描かれている。3人の若者は、1人の幽霊と出会い、“死”に触れることで、生きる意味を見出していく。
イラストレーターが監督を務めるという異例の挑戦が注目される中、指揮をとったloundrawさんに、ニュース番組『ABEMAヒルズ』は映画への思いについて聞いた。
「一番描きたかったのは“どうして生きているんだろう”とか、それぞれのキャラクターがどうして今、現実に対してネガティブに思っているのとか、そういったものが共感できるようなものになっていなきゃいけないと思いましたし、これを見た人が映画館を出たあとに一歩進めるようなメッセージであればいいなと思いました」
学生時代からイラストレーターとして活動していたloundrawさん。2013年に小説のカバーイラストでデビューを果たし、2015年には人気小説『君の膵臓を食べたい』のイラストを手がけるなど、イラストレーターとしてのキャリアを着実に築いていった。しかし、創作活動を続ける中で、ある葛藤を抱えるようになったという。
「イラストレーターという仕事はどちらかというと、何かを装飾することが多いんですよね。小説の表紙だったり、その絵がいかに素晴らしいかということも僕たちはすごく大事にしているんですけど、同時にこの絵がすごく広まったのは作家さんの作品が素晴らしいからとか、そういう風に思っている側面も正直あって」
クリエイターとして0から1をつくりたい―――。日々、舞い込む仕事をこなしながら、loundrawさんは新しいイラストをSNSへ投稿し続けた。そして2018年、ある1枚の絵が彼の人生の歯車を動かした。
夏の夜空の下、どこかを見つめる4人の男女。それぞれのキャラクターの名前すらなかった、この1枚の絵からloundrawさんのアニメ制作への挑戦は始まったのだ。
「タイトルが『サマーゴースト』というのは、なんとなく頭の中にあって、これから先、また絵を描いて、この絵が面白いから映像にしてみようというのが、もしかしたら成り立つのかもしれないと思える“きっかけ”の絵になったように思います」
しかし、彼が生業とするイラストとそれらが織りなすアニメーションは似て非なるもの。一筋縄では行かなかったという。
「自分が思う完璧なフレームって1フレームしかなくて。キャラクターは動いちゃうんですよね。なので完璧な絵という定義がまずそもそも違いますし、映画はむしろ時間軸というものが入って、音楽とか含めた全ての体験としての雰囲気がよかったかよくないかという見方になるので、そこは同じ絵とはいえ全然違う作り方だなと思います」
全てが初めての経験だったと話すloundrawさん。試行錯誤を重ね、ついに映画は公開を迎えた。
「イラストレーターというある種険しい道を選んで、もっと可能性を広げて行きたいということでアニメーションを選んで。自分の人生の選択として『一つゴールまでたどりついた』『やっと（映画が）できた』というのが個人的な気持ちです」
異例の挑戦によって生み出された、映画『サマーゴースト』。多くの人に見てもらいたいという思いとともに、loundrawさんは“ものづくり”に対する変化を口にした。
「“誰々だから”という境界線がすごく曖昧になってきているなぁと思っていて、一番大事なのはやはりその人の感性なんだなと。肩書きに関わらず自分が表現したいものが出るのは素晴らしいものだと思いますし、だからこそ他の方がイラストを描いたときに、イラストレーターである僕が負けないようにしようという気持ちになりますし、そこはリスペクトを持っていれば全然違うこともむしろやるべきかなと思いますね」（『ABEMAヒルズ』より）
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