議場でのマスク着用義務化は“やりすぎ”か? 臼杵市議の提訴が日本社会の“同調圧力”に投げかけるもの
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 「やりすぎというか、表現の自由を侵しているのではないかと思う」「マスクにどれだけの発言を禁止するだけの力があるのかということについても、この訴訟の中で明らかになっていけばありがたいなというふうに思っている」。22日、自ら所属する市議会などを提訴した大分県臼杵市の若林純一市議会議員は、会見でそう述べた。

【映像】鼻マスク市議が市など提訴 議会あり方めぐりスタジオ火花

 市議会の運営委員会は今年9月、議場内での議員のマスク着用を申し合わせていたが、若林市議は本会議や委員会に“鼻マスク”で出席。議長や委員長の注意にも応じなかったことで発言が認められず退席することもあった。さらに議会最終日にもマスクをして質問後、“鼻マスク”にし、議長に退場を命じられている。市議会は若林市議の辞職勧告を決議したが、本人はこれを拒否。今月、市と市議会に対してマスクを着けずに発言する権利と慰謝料100万円を求める訴訟を起こした。

 22日の『ABEMA Prime』では、若林市議に出演を依頼、しかし“マスクを着けないこと自体が悪いという雰囲気になるのではないか”との懸念から、直前にキャンセルとなってしまった。

■「他にもっと論じなければならないことがあるんじゃないか」

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 今回の問題についてカンニング竹山は「世の中でマスク着用が“義務化”してしまっている部分は確かにあって、駅から帰る夜道で1人になった時にまで着けている必要はない。必要なところと、そうではないところは切り分けていくべきだと思う。ただ、市議本人もマスクそのものは着けていたわけで、議会運営委員会の申し合わせの通り、議会の中では従った上で反対の意見を主張すれば良かったのではないか。議会には市民のために、他にもっと論じなければならないことがあるんじゃないか」と問題提起。

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 テレビ朝日の平石アナウンサーも「議会運営委員会での申し合わせが権限を越えているというのが若林市議の主張だが、誰か一人でもマスクをしない状態であれば、その時点で感染対策としては綻びが出ているということだ。辞職勧告決議にも書かれているように、社会的な規範を順守する意識に欠けているということになっているわけだから、主張があるなら、マスクを着けた状態で“マスクを着けない議論”をすればいい」と賛同。

 「もちろん、マスクを着けることが感染防止にどのくらいの効果があるのか、ずっと着けていなきゃいけないのか、という疑問はあると思う。しかし、そもそも若林市議はマスクを着けない状態で子どもたちにチラシを配っているのが怖いという市民の声が議会に寄せられたこともあった。そういう積み重ねの上での辞職勧告決議でもあるわけで、“不要な場面では外しましょう”という主張をするにしても、こういうアプローチで良かったのかだろうかと感じる」と指摘した。

■「“とにかくやりなさい”と言うのは、弱者を押し込めることになってしまう」

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 一方、リディラバ代表の安部敏樹氏は「臼杵市では条例でマスク着用を推進しているが、その決定プロセスにおいてはどのような議論があったのだろうか。条例では“啓発など必要な施策を推進しなければならない”“努めるものとする”といった“努力義務”、なんとなくモヤっとした表現になっていて、具体的にどこまでを求める、といったことは入っていない。条例に関わる立場にあった若林市議は、そこでも問題提起をしたり、“こういう場合はどうするのか”といった質問をしたりしていたのだろうか。そうした議論が議会の中で尽くされていないから裁判所に訴えたいという話であれば理解できるところもある」と反論。

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 「例えば今、僕たちはマスクを着けずに議論をしているが、これだってゼロリスクではないが、一定の感染防止対策を取っているのでリスクが十分に低いということを皆が合意しているからだ。その観点で見れば、そもそも議会をリモートでやった方がいいんじゃないかと思う。ただ、実はこういう議論を求めている人は多いのではないかと思う。専門家の間でも、当初はマスク着用の“感染防止効果にはエビデンスがない”という話が出ていたが、少しずつ変わっていった。つまり、今後も変わる可能性もあるということだ。つまり同調圧力だけでマスクを着けるという前提になっているのを市議会に持ち込んで、立法の経緯もない中で“みんな着けているんだから着けなさいよ”と発揮するというのは法治国家としてはかなりまずい。

 それで僕が思い出したのは、国会議事堂のバリアフリーが進んでいないために障害のある人が入れないという話だ。竹山さんや平石さんの話は、そこに対して“とりあえず国会議員になってから障害の法律について議論しなさい”と言っているように聞こえた。それでは対策は進まなくなってしまうし、今の法律が想定していない問題について“嫌だ”と思っているマイノリティに対して、“とにかくやりなさい”と言うのは、論理的には弱者を押し込めることになってしまう。市議会というのは、その地域の人たちを代表しているわけで、権利に関わる部分においてそういうことをしてしまえば、世の中全体でもOKということになってしまう」。

■「裁判所で判断をされていくこと自体は悪いことではないという考え方もある」

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 前衆議院議員の菅野志桜里弁護士は「表現の自由を害しているのかどうかという問題について、法律的には大体2つのポイントに分けて考えることが多い。一つは、その人が話す内容に注目し、“その内容はダメだから発言してはダメよ”という“内容の規制“と、内容とは関係なく、“こういう状況、場所で話すのはダメよ”という“手段の規制“だ。今回の場合、発言の内容というよりは、議場の中ではマスクを着けて発言してくださいという、発言の方法について制限を加えているので、そこには一定の合理性があるかもしれないと見ることができる。加えて、市議会や裁判所は誰もが利用できなければならず、“別のところで傍聴する”というわけにはいかない場所だ。そこにおいて公の役割を担っている人に対する規制やルールには、やはり一定の合理性はあるというふうに考えた方がいいのではないか」との見方を示す。

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 その上で、「“それは手段の規制としてやり過ぎだ”と主張が箸にも棒にもかからないとは私は思わないし、むしろこういう問題が裁判所で法律的に判断をされていくということ自体は日本の社会としては悪いことではないという考え方もある。実際、フランスではマスクのことも含め、憲法問題の裁判が去年だけで800件以上に上っている。“一律に着用を求めるのはやり過ぎだよね”とか、“夜に1人で歩いているところにまで網掛けするのはいきすぎじゃないの”といった、グラデーションの議論を国会でもすべきだし、足りないところは裁判所で判断をしていってほしい。

 また、議会運営委員会で決めた申し合わせだから皆で守ろうということになっていると思うが、若林市議としては自分が議運に入っていない状態で勝手に決められてしまったという主張もありうるかもしれない。議員である以上、決め方そのものを変えるよう努力すれば良かったという話になってしまうと思うが、“このルールは憲法違反だ”という主張も、理屈上はありうる。ただ、やはり市民の人がどうかということとはちょっと違って、市議会の中での議員の振る舞いの話なので、全く無効だから守りませんというのは、なかなか理解されにくいと思う」との見方を示した。

■「議場にいなくても運営ができるような仕組みを作るのが、本来の意味での感染対策」

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 ジャーナリストの堀潤氏は「竹山さんの、“他に議論するべき問題がある”というのは、僕もそう思う。ただ、仮に多くの市民から“マスクに縛られない暮らしのあり方を議会で検討してください”というリクエストがあるとか、議会運営委員会で“もうこれでいいよな”と、有権者不在のような形で物事が進んでいるのだとすれば成り立つ議論だと思う。

 また、健康上の理由も含め、“私はマスクを着けるのは嫌だ”という主張をしている人に対して、“それは一度脇に置いておいてください”と強要するのはよくないのではないか、という安部さんの主張はよく分かる。その意味では、マスクを着けていなくても議論が続けられるような議会を作っておくべきだという提案ができると思う。あんな密な状況でずっと議論するのではなく、リモート化を進めるなどして、議場にいなくても運営ができるような仕組みを作るのが、本来の意味での感染対策だと思う。

 その一方で、ウイルスの感染を拡大させてしまうということは、誰かの権利を侵害する可能性のあることだ。公共の福祉の観点から考えれば、傍若無人な振る舞いによって誰かの健康や生命が害する可能性があるのであれば、しっかり話し合って折り合いをつけ、ルール作りをしなければならない。そこは議会で解決できれば良かったのではないかと思うので、司法の場に移ってしまったのは残念だ。その点も含め、若林さんご本人に聞いてみたかった。この議論をご覧になっていて、“そうじゃないんだ”ということであれば、もしよかったら」と議論への参加を呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)
 

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