齋藤飛鳥「“アメイジング”で“ポジピース”な1日にしましょうね!」
影ナレを務めたのは、2018年に上演された乃木坂46版ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』の“Team MOON”として高山と共演した伊藤理々杏、樋口日奈、山下美月。ライブ恒例の「Overture」が流れた後、ステージに登場したメンバーは、4期生の遠藤さくらをセンターに据え、「ごめんねFingers crossed」から力強くライブをスタートさせた。その後も「ジコチューで行こう!」「太陽ノック」「おいでシャンプー」といったライブの定番曲を畳み掛け、東京ドームという広い空間のボルテージを高めていくメンバーたち。「ジコチューで行こう!」の曲中では齋藤飛鳥が「今日は“アメイジング”で“ポジピース”な1日にしましょうね!」と高山の持ちネタに絡めた煽りを披露する場面もあった。
続けて「シンクロニシティ」を情感たっぷりに届けると、この日初めてのMCコーナーに突入。今回の「真夏の全国ツアー2021」は事前に募ったリクエストをもとにシングル表題曲、カップリング曲、アンダー曲、ユニットおよびソロ曲といった各カテゴリーのトップ10を選出する結成10周年特別企画「夏ツアーで聴きたい曲TOP10」が行われていた。与田祐希は表題曲3位に自身がWセンターを務めた「逃げ水」がランクインしたことを受け「このツアーで桃ちゃん(大園桃子)が卒業だったので、『逃げ水』をWセンターで披露するのが最後で“どういう気持ちになるんだろう”と想像がつかなかったんですけど、いざステージに立って曲が流れてくると、今まで感じたことのない感覚になって、この5年分が走馬灯のように頭に浮かんで、これがいわゆるエモいってやつかと思いました。でもその時に感じたことはずっと忘れたくないと思います」と明かした。
ここからライブは事前に募ったリクエストの人気楽曲を披露するコーナーに突入した。まずは、飛鳥、梅澤美波、山下の“映像研トリオ”による「ファンタスティック3色パン」が披露されると、キャプテンの秋元真夏、生田絵梨花、遠藤、賀喜遥香、新内眞衣、高山、樋口という編成で「せっかちなかたつむり」をキュートにパフォーマンスした。それから山崎怜奈をセンターに据えアンダー楽曲「錆びたコンパス」が熱く届けられると、「ひと夏の長さより…」の曲中ではメンバーから高山に宛てた愛のあるメッセージが映し出され、視聴者からは「泣いた」「これは泣く…」などのコメントが届いていた。
「ありがちな恋愛」をクールに届けると、アンダーメンバーが迫力満点なダンストラックを繰り広げ、その勢いのまま「日常」をパフォーマンス。センターを務めた北野日奈子の力強い表情にファンからは「めちゃくちゃかっこいい」「鳥肌が立った…」など称賛の声が続々と寄せられていた。続く「裸足でSummer」ではバルーンに乗って、広い東京ドームの上段のファンの近くで笑顔を届けるメンバーの姿も。最後は与田がセンターを務める「全部 夢のまま」を軽やかにパフォーマンスして、会場と視聴者を幸福感で満たした。
「きっかけ」をスペシャルバージョンで披露
MCコーナーを経て、ここからライブは期別コーナーへと突入した。まずは4期生が「I see…」をフレッシュに届けると、3期生が「トキトキメキメキ」をキュートにパフォーマンスしてオーディエンスの心を鷲掴みに。続けて2期生が「アナスターシャ」を歌詞を噛み締めるように丁寧に歌いあげると、最後は1期生が「失いたくないから」を披露した。曲の終盤には1期生の全員が高山の近くに駆け寄り笑顔をこぼす場面もあった。
いよいよライブは終盤戦へと突入。選抜メンバーで「Route 246」「僕は僕を好きになる」「インフルエンサー」を立て続けに披露してファンのボルテージを高めると、“乃木坂46のこれから”を担っていくと期待される3期生の梅澤、与田、山下、4期生の遠藤、賀喜が今後の決意を力強く語る場面もあった。そしてキャプテンの秋元が「新しい時代を作るのはここにいる後輩たちです。これからも後輩たちと一緒に乃木坂46を育て、成長させていきたいと思います。乃木坂46をこれからもよろしくお願いします」とスピーチすると、メンバー全員で「きっかけ」を披露。それぞれのメンバーがソロ歌唱して、歌を紡いでいくというスペシャルなバージョンが届けられると、コメント欄には「鳥肌…」「最高かよ」といった感想が寄せられていた。
そして最後は「Sing Out!」「夏のFree&Easy」「ガールズルール」「君に叱られた」を連続で披露。「君に叱られた」ではセンターを務めた賀喜が感極まって涙を流す場面もあった。それから秋元が「名残惜しいですが、次がラストの曲になります。続けてお送りする曲は私たち乃木坂46が結成10周年ということで、その記念に秋元(康)先生からいただいた曲です」と紹介し、「他人のそら似」をパフォーマンスしてライブ本編は締め括られた。
鳴り止まぬスティックバルーンの音とコメント欄に並ぶ盛大なアンコールを受け、高山のこれまでの功績を振り返るVTRが流れると、ドレス姿に着替えた高山は初めてのソロ曲「私の色」を歌い上げた。パフォーマンス中、東京ドームの客席は高山のサイリウムカラーである水色とピンク色の2色に染まっていた。
高山一実「みなさんにいただいた幸せ、ありがとうを胸にこれからの人生も頑張っていきたい」
そして歌唱後に高山は最後のスピーチとして以下の内容を述べた。全文を掲載する。
「『私の色』歌わせていただきました。上手には歌えませんでしたが、お聞きいただきありがとうございました。今日、2021年11月21日をもちまして、乃木坂46を卒業します。10年間のアイドル生活も今日で最後です。
実は10年間ずっと悩んでいたことがあります。それは、最後の日に何を語るかです。私はある時から、語りに思いが乗り切らないような気がして、小説を書こうと決めました。“小説みたいなもの”かな(笑)。小説と呼べるかわからないですけど、良かったら暇な時に読んでください(※高山は卒業に際しての思いを乗せた自著の短編小説『キボウの名』をこの日訪れた観客に配った。なお、ライブの特設サイト<https://www.nogizaka46.com/tour2021_final/>でも公開されている)。
ここでは感謝の気持ちだけお伝えさせていただきたいと思います。まずは、メンバーのみんな。私はメンバーのことが大好きで、今のメンバーも昔のメンバーも、10年間乃木坂のメンバーのことが大好きでした。今のメンバーは努力家で、すごくおしとやかな子が多くて、心がすごく優しくて、すごくあたたかい空気…暖色な空気がいつも流れています。そんな乃木坂も大好きだし、昔のメンバーといろんなこと、くだらないことをして、笑った日々も大好きです。本当に、本当に、アイドルになりたかったけれど、乃木坂を知ってしまったら、来世でも乃木坂になりたいと思います。それくらい好きでした。初期の(桜井)玲香キャプテンも、今の真夏キャプテンも、46人ぴったりいた時代も、そうじゃなかった時代も、本当に楽しかったです。ありがと。
そしてマネージャーさん、衣装さん、メイクさん。家みたいな楽屋をいつも作ってくださり、ありがとうございました。本当にみんな優しくて、お姉ちゃん、お兄ちゃん、親みたいなみなさんにたくさんお世話してもらって、10年間支えられました。ありがとうございました。そして現場でお会いしたスタッフさん、共演者のみなさん、アイドルなのに全然顔がかわいくなくて、おもしろいことも言えないし、すみませんでした(笑)。でもお会いできて、うれしかったです。いろいろお仕事してくださり、ありがとうございました。
そして私を乃木坂46に選んでくださった立ち上げ当初のスタッフさん、秋元先生、私の人生を変えてくださり、ありがとうございました。
そして、友達のみんな! 声が素に戻っちゃった(笑)。ごめんなさい。私は友達のみんなが大好き! 乃木坂に入る前の人生も大好きです! 乃木坂に入る前も、入ってからも、仲良くしてくれてありがとう。東京を一緒に楽しんでくれてありがとう。
そして、家族。私は人に『大好き』とか、伝えるのが好きなんですけど、家族にだけは愛情表現が下手で、なかなか今まで言えなかったけれど、この時代に生まれて良かったって思うし、私を今まで育ててくれてありがとう。助けてくれてありがとう。
最後にファンのみなさま。(ここから涙ぐみながら)最後にこんな素敵な景色を見せてくださってありがとうございます。いっぱい夢を叶えてもらったのに、叶え過ぎて“今後の人生不幸になるからやめて〜”ってくらい、幸せだったのに、私の大好きなピンクと水色の景色が半々で分かれていて…すごい…! ガラガラの握手レーンのときも、こんなにたくさんの人に囲まれている今も、ずっと幸せでした。このみなさんにいただいた幸せ、ありがとうを胸にこれからの人生も頑張っていきたいと思います。
ここにいるみなさん、そして今、配信を見てくださっているみなさんは幸せを作る天才です! 天才と過ごせて私は幸せでした。どうか、“サヨナラ”ではなく、“これからもよろしくお願いします”と言わせてください。そして、今までお世話になった乃木坂46には最後にきちんとお別れを告げたいと思います。今までありがとう」。
それからグループは「サヨナラの意味」を披露した。10年間の思い出の写真が映し出されるスクリーンをバックに、卒業ソングを響かせると、視聴者からは「涙が止まらない」「本当に良いグループだな」といった声が続出した。「偶然を言い訳にして」「君の名は希望」の曲中には、高山がバルーンに乗り込み、場内を回ってファンの近くで笑顔を振りまいた。
アンコールのMCでは高山と強い絆で結ばれている和田まあやが「ずー(※高山の愛称)とはたくさん笑ったし、ふざけたことばっかりしていたけど、掛け替えのない時間だったんだなって…。ずーの卒業が近づくにつれて一瞬一瞬が大切だったけど、ついにこの日が来ちゃったなって思う」と涙ながらに思いを伝える。それから「ずーがいたから私は乃木坂46の活動がより楽しかった」「今までもたくさんお世話になったし、これからもたくさんお世話になろうと思います。本当に10年間お疲れ様でした」と言いながら笑顔を見せると、高山も「ありがとう」「これからももっと会おうね」と優しく笑った。
最後に高山が「みなさんに今までの人生を助けていただきました。これから先、年齢を重ねていっても、辛いこと、悲しいことあると思います。でも一緒に乗り越えていきましょうね。頑張りましょうね。最後にこの曲を聞いてください」と伝えてから、乃木坂46は「泣いたっていいじゃないか」を披露した。曲が終わると会場に集まっていたファンは「卒業オメイジング」と書かれた紙をサプライズで一斉に掲げ、これに高山は「こんなすごい景色はこの先見られないと思う。目に焼き付けておく!」とうれしそうにしていた。
高山は最後までメンバーやファンを笑顔にし続けた。加入から10年間、ムードメーカーとしてグループを支え、デビューからシングル全28作の連続選抜入りというグループ史に残る金字塔を打ち立てた彼女がラストライブを最高の形で締めくくった。
心優しい人柄で愛されるグループの功労者は、最後まで乃木坂46をあたたかく照らした。「ポジピース」で「アメイジング」な10年間のアイドル人生。卒業後も高山は持ち前の笑顔を武器に、周囲を、そして見ている者をハッピーにし続けることだろう。
■乃木坂46『乃木坂46 真夏の全国ツアー2021 FINAL!』11月21日東京・東京ドーム公演セットリスト
M00. Overture
M01. ごめんねFingers crossed
M02. ジコチューで行こう!
M03. 太陽ノック
M04. おいでシャンプー
M05. シンクロニシティ
M06. ファンタスティック3色パン
M07. せっかちなかたつむり
M08. 錆びたコンパス
M09. ひと夏の長さより…
M10. ありがちな恋愛
M11. 日常
M12. 裸足でSummer
M13. 全部 夢のまま
M14. I see…
M15. トキトキメキメキ
M16. アナスターシャ
M17. 失いたくないから
M18. Route 246
M19. 僕は僕を好きになる
M20. インフルエンサー
M21. きっかけ
M22. Sing Out!
M23. 夏のFree & Easy
M24. ガールズルール
M25. 君に叱られた
M26. 他人のそら似
EN1. 私の色
EN2. サヨナラの意味
EN3. 偶然を言い訳にして
EN4. 君の名は希望
EN5. 泣いたっていいじゃないか