新型コロナウイルスの感染者数が比較的低く推移している日本。一方、隣の韓国では過去最多の感染者が出るなど、まさに“感染爆発”の状況となっている。
韓国のワクチン接種率は日本を上回る中、なぜそのような状況になっているのか。ANNソウル支局の井上敦支局長が伝える。
韓国の一日当たり感染者数の推移を見てみると、7月にそれまでの過去最多(去年12月25日の1240人)を更新。その後も高い水準で推移し、8月に2000人、9月に3000人を超え、24日に発表された最新の数字は4116人と、初めて4000人を超えた。重症者数も586人と過去最多を更新している。
韓国のワクチン接種率は全国民の78.9%(22日時点)で、日本の接種率76.4%(23日時点、2回接種完了者)を上回る。厚労省によれば、日本の22日の新規感染者は今年最少の45人だったが、一方で過去最多を更新している韓国。その背景には、ワクチンの接種時期や種類の影響が考えられるという。
「今年の最初、高齢者や持病がある方などにまず接種したが、そういった高リスクの方の抗体価が下がってブレイクスルー感染が増えていることが1つ。そして、日本と明確に違うのは、韓国ではアストラゼネカ製ワクチンの接種が多いこと。最初にワクチンを打った人たちが使っていたのがアストラゼネカ製だった。もちろんアストラゼネカ製も有効性はあるし、重症化を防ぐことはできるとされているが、一部の研究でデルタ株に対する効果が弱いという話がある。今韓国では99%がデルタ株なので、そういった要因も考えられる」
韓国政府はワクチンの3回目接種を急いでいるが、こうした状況の中で“ウィズコロナ”に方針転換したことも大きく影響しているという。
「韓国では今まで、カメラを使って個人の行動を特定したり携帯の位置情報を使って追いかけたり、かなり厳しい防疫体制をとってきた。しかし、それでは経済が回らないということで、今月からウィズコロナに転換している。その結果、飲食店の営業時間が夜21~22時までだったのが24時間に、2~4人だった人数制限はソウルでは10人までOKになり、これまで我慢していた人たちがみんな飲み会を始めてしまった。新規感染者が1000人、2000人という抑えきれていない状態のまま、ウィズコロナに転換してしまった。文在寅大統領は今年の初めから『ワクチンがみんなに行き渡るまでは厳しい規制に付き合ってほしい』とお願いをしてきて、接種率が8割となった今、解除せざるを得なかったということもある」
現在の韓国の状況に、井上支局長は恐怖を覚えているという。
「日本の人口は韓国の2.4倍なので、4000人を置き換えると1万人になり、今の日本の人数と比べるとどれだけ深刻な状況かがわかると思う。“みんなワクチンを打っているから安心だ”というのはある一方で、飲食店は制限がないし、これまで我慢してきた人たちが忘年会を開いている。規制がない中で毎日最多を更新している状態だ。赴任してからずっとコロナの世界にいるわけだが、正直今が一番体感として怖い」
(ABEMA NEWSより)