「世界に必要とされるには“普通”でいなければいけない」
そんな一人の人間が抱く生きづらさを描いた漫画が話題を集めている。
漫画のタイトルは「初恋、ざらり」。今年3月、Twitterに投稿されたこの漫画は、軽度の知的障がいを抱え、男性と体を重ねることでしか自分の存在に価値を見出すことが出来なかった女性、有紗が職場で年上の男性と出会い、惹かれ、少しずつ彼女の心に変化が訪れるという物語が描かれている。
そして、作品の中で描かれているのが“普通”という言葉に対する強いメッセージ。「面接で落とされてしまう」「障がい者枠の給料は安い」という理由から障がいを持っていることを隠し働いている有紗は、仕事中に些細なことから悩んでしまうことも……。
「午前と午後を表すAM・PMが分からない」
「上司からの指示に対し、要領よく対応することが出来ない」
事あるごとに有紗は「普通」という言葉を投げかけられる。
周囲が求める”普通”になんとか応えたい。障がいを抱え、生きづらさを感じながらもひたむきに生きる有紗。そしてそんな有紗の恋愛模様が描かれたこの漫画にネットでは「『普通』の基準って何でしょうね」「目が離せない。仕事で知的障がいがある人と接することがあるので、言葉にならない感じで驚いています……!!!」など多くの共感の声が集まっている。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』ではこの作者で、自身も発達障がいを抱えながら、日々漫画の執筆を続けている、ざくざくろさんを取材。
――どうしてこの漫画を描こうと思ったのでしょうか?
「友達にも発達障がいとか、軽度の知的障がいを持った子が多くいたのですが、他の子は全然障がいがあるって分からないくらいなのですけど、悩んでいることが似ていてこういう曖昧な、見た目には分からない障がいのことを描きたいなと思って描きました」
そして、この漫画には自身が感じたことも描かれているという。漫画家になる前、職を転々としていたというざくざくろさんも、有紗と同じように”普通”という言葉に葛藤を抱えていた。
「私も結婚するまでは男の人に価値を作ってもらうような感じだったのですけど、今の夫と出会って変わったので。出来事は違うのですが、感情の面では自分のことを入れてる時もあります」
――漫画を描いている中で、大変だったことなどは?
「主人公が悲しかったときは『私の悲しい記憶を探って落とし込もう』と思っているので、嫌な記憶をみなくてはいけないときとかは嫌でしたね。(前の仕事の時には)事務作業のミスが本当に多くて、小さい所を間違えたり、電話が全然聞き取れなくて、何回も聞き直して怒られたりしてました。みんなができるようなことができなくて、よく落ち込んでました」
漫画は現在もTwitterに投稿され、書籍化もされている。ざくざくろさんはこの漫画を通して見た目では分からない障がいについても知ってもらえればと話す。
――漫画の中で特に意識して描いたシーンは?
「(漫画では)他の人が有紗を見てどう思うか、それは意識して描こうと思いました。仕事のミスが多かったりしたら、他人がイライラする気持ちもわかりますよね。できるだけ多くの人に読んでもらいたいです」
(『ABEMAヒルズ』より)
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